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第七章 死闘

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 ハイオークが倒れたのを見て、後方のロードラント軍の陣営から大きな歓声が上がった。

「西へ! 全軍突撃」 

 続いてアリスの声が轟く。
 当初の作戦通り、進撃を開始したのだ。

 一方、ハイオークという絶対的なボスを失ったコボルト兵は大混乱に陥っていた。
 統制と戦意を一気に喪失し、もはやまともに戦うことができない。
 ロードラント軍は、そんな数千のコボルト兵を一方的に蹴散らしていく。
 この様子なら、アリスたちとはすぐに合流できそうだ。 

 ――だが、ホッとしている時間はなかった。
 エリックの状態はおそらく一刻を争うからだ。

 僕は急いでエリックに駆け寄り、ケガの程度をざっと確かめた。
 口からかなりの量の血を吐き続けている。肺か気管が傷ついているのかもしれない。
 ハイオークにぶん投げられた時に折った右足の状態も、かなりひどい。

 しかし、少なくとも死んではいない。
 よかった、これなら僕の魔法で――

 僕はまず、エリックの右足を手でまっすぐに伸ばしてあげた。
 それから、できる限りの魔力を込め『リカバー』を唱えた。

 効果はてきめん。
 吐血は治まり、みるみる顔に赤みが戻ってきた。
 折れた足の骨も、すぐに元通りという訳にはいかないが、着実に修復されていく。
 とにかく危険な状態は脱したようだ。

「ユウトさん!」
 リナの弾んだ声だ。馬を降り、こちらに走って来た。
「やりましたね!」

「いえ、あの時リナ様が弓を射ってくれたおかげです」

「私はユウトさん指示に従っただけです。でも、まさか魔法で矢を操れるなんてことができるとは思いませんでした。――あ、エリックさん!!」

「おい、ユウト……」

 エリックが目を覚ました。
 口をわずかに動かし、なんとか声を出す。

「……ユウト、俺はもう大丈夫だ。それよりマティアスの治療を頼む」




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