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第七章 死闘
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ハイオークの鬼のような顔に「?」と、戸惑いの表情が浮んだ。
まさか人間相手に、力で負けるなんて思ってもみなかったのだろう。
が、いま戦斧を放さなければ、ハイオークはこのままマティアスの方へ引きずられていくだけだ。
「お前たち、行け!」
マティアスが鎖を引いたまま、必死に叫ぶ。
それは見事な連携プレイだった。
残った竜騎士たちが一斉に馬を走らせハイオークに近づき、あらかじめ用意してあった投げ縄を投げつけのだ。
これは不利――と見たのか、ハイオークは戦斧を捨て後ろに身を引き縄を避けようとした。
だが竜騎士の動きの方が若干速く、7、8本の縄が、ハイオークの体にうまく絡みついた。
続けて竜騎士が力の限りその縄を引っ張ると、ハイオークは体をぐらつかせ、ドスンと片ひざをついた。
「やった!」
僕は思わず叫んだ。
これではさすがのハイオークも身動きがとれない。
接近して、エリックを『リープ』で飛ばすことなどワケないだろう。
リナも同じように思ったのか、
「エリックさん、今がチャンスです!」
と言って、手綱つかみ馬を走らせようとした。
が、エリックは、それを大声で止めた。
「まだだ! まだ早い!」
「え、どうして――?」
と、その時、竜騎士の一人が長槍を持って、ハイオークに単騎で突っ込んでいった。
僕たちと同じように、今こそハイオークを倒すチャンスと思ったのだ。
「バカなっ。やめろ!!」
エリックが叫ぶ。
その声が聞こえたのか聞こえなかったのか――
竜騎士はハイオークの正面に飛び込むと、その顔面目がけ、あらんかぎりの力で長槍を突き通した。
狙いは正確、槍の穂先はハイオークの顔のど真ん中を直撃した。
ところが――
スピアはいきなりぐにゃり、と大きく折れ曲がってしまった。
ハイオークは瞬時に顎を引いて、固い額で槍を受け止めたらしい。
無敵か、この化け物は!
曲がったスピアを持った竜騎士はぼう然として、もうどうすることもできない。
そしてハイオークが一歩、ズドンと足を踏み出した。
まさか人間相手に、力で負けるなんて思ってもみなかったのだろう。
が、いま戦斧を放さなければ、ハイオークはこのままマティアスの方へ引きずられていくだけだ。
「お前たち、行け!」
マティアスが鎖を引いたまま、必死に叫ぶ。
それは見事な連携プレイだった。
残った竜騎士たちが一斉に馬を走らせハイオークに近づき、あらかじめ用意してあった投げ縄を投げつけのだ。
これは不利――と見たのか、ハイオークは戦斧を捨て後ろに身を引き縄を避けようとした。
だが竜騎士の動きの方が若干速く、7、8本の縄が、ハイオークの体にうまく絡みついた。
続けて竜騎士が力の限りその縄を引っ張ると、ハイオークは体をぐらつかせ、ドスンと片ひざをついた。
「やった!」
僕は思わず叫んだ。
これではさすがのハイオークも身動きがとれない。
接近して、エリックを『リープ』で飛ばすことなどワケないだろう。
リナも同じように思ったのか、
「エリックさん、今がチャンスです!」
と言って、手綱つかみ馬を走らせようとした。
が、エリックは、それを大声で止めた。
「まだだ! まだ早い!」
「え、どうして――?」
と、その時、竜騎士の一人が長槍を持って、ハイオークに単騎で突っ込んでいった。
僕たちと同じように、今こそハイオークを倒すチャンスと思ったのだ。
「バカなっ。やめろ!!」
エリックが叫ぶ。
その声が聞こえたのか聞こえなかったのか――
竜騎士はハイオークの正面に飛び込むと、その顔面目がけ、あらんかぎりの力で長槍を突き通した。
狙いは正確、槍の穂先はハイオークの顔のど真ん中を直撃した。
ところが――
スピアはいきなりぐにゃり、と大きく折れ曲がってしまった。
ハイオークは瞬時に顎を引いて、固い額で槍を受け止めたらしい。
無敵か、この化け物は!
曲がったスピアを持った竜騎士はぼう然として、もうどうすることもできない。
そしてハイオークが一歩、ズドンと足を踏み出した。
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