94 / 505
第七章 死闘
(13)
しおりを挟む
ハイオークの鬼のような顔に「?」と、戸惑いの表情が浮んだ。
まさか人間相手に、力で負けるなんて思ってもみなかったのだろう。
が、いま戦斧を放さなければ、ハイオークはこのままマティアスの方へ引きずられていくだけだ。
「お前たち、行け!」
マティアスが鎖を引いたまま、必死に叫ぶ。
それは見事な連携プレイだった。
残った竜騎士たちが一斉に馬を走らせハイオークに近づき、あらかじめ用意してあった投げ縄を投げつけのだ。
これは不利――と見たのか、ハイオークは戦斧を捨て後ろに身を引き縄を避けようとした。
だが竜騎士の動きの方が若干速く、7、8本の縄が、ハイオークの体にうまく絡みついた。
続けて竜騎士が力の限りその縄を引っ張ると、ハイオークは体をぐらつかせ、ドスンと片ひざをついた。
「やった!」
僕は思わず叫んだ。
これではさすがのハイオークも身動きがとれない。
接近して、エリックを『リープ』で飛ばすことなどワケないだろう。
リナも同じように思ったのか、
「エリックさん、今がチャンスです!」
と言って、手綱つかみ馬を走らせようとした。
が、エリックは、それを大声で止めた。
「まだだ! まだ早い!」
「え、どうして――?」
と、その時、竜騎士の一人が長槍を持って、ハイオークに単騎で突っ込んでいった。
僕たちと同じように、今こそハイオークを倒すチャンスと思ったのだ。
「バカなっ。やめろ!!」
エリックが叫ぶ。
その声が聞こえたのか聞こえなかったのか――
竜騎士はハイオークの正面に飛び込むと、その顔面目がけ、あらんかぎりの力で長槍を突き通した。
狙いは正確、槍の穂先はハイオークの顔のど真ん中を直撃した。
ところが――
スピアはいきなりぐにゃり、と大きく折れ曲がってしまった。
ハイオークは瞬時に顎を引いて、固い額で槍を受け止めたらしい。
無敵か、この化け物は!
曲がったスピアを持った竜騎士はぼう然として、もうどうすることもできない。
そしてハイオークが一歩、ズドンと足を踏み出した。
まさか人間相手に、力で負けるなんて思ってもみなかったのだろう。
が、いま戦斧を放さなければ、ハイオークはこのままマティアスの方へ引きずられていくだけだ。
「お前たち、行け!」
マティアスが鎖を引いたまま、必死に叫ぶ。
それは見事な連携プレイだった。
残った竜騎士たちが一斉に馬を走らせハイオークに近づき、あらかじめ用意してあった投げ縄を投げつけのだ。
これは不利――と見たのか、ハイオークは戦斧を捨て後ろに身を引き縄を避けようとした。
だが竜騎士の動きの方が若干速く、7、8本の縄が、ハイオークの体にうまく絡みついた。
続けて竜騎士が力の限りその縄を引っ張ると、ハイオークは体をぐらつかせ、ドスンと片ひざをついた。
「やった!」
僕は思わず叫んだ。
これではさすがのハイオークも身動きがとれない。
接近して、エリックを『リープ』で飛ばすことなどワケないだろう。
リナも同じように思ったのか、
「エリックさん、今がチャンスです!」
と言って、手綱つかみ馬を走らせようとした。
が、エリックは、それを大声で止めた。
「まだだ! まだ早い!」
「え、どうして――?」
と、その時、竜騎士の一人が長槍を持って、ハイオークに単騎で突っ込んでいった。
僕たちと同じように、今こそハイオークを倒すチャンスと思ったのだ。
「バカなっ。やめろ!!」
エリックが叫ぶ。
その声が聞こえたのか聞こえなかったのか――
竜騎士はハイオークの正面に飛び込むと、その顔面目がけ、あらんかぎりの力で長槍を突き通した。
狙いは正確、槍の穂先はハイオークの顔のど真ん中を直撃した。
ところが――
スピアはいきなりぐにゃり、と大きく折れ曲がってしまった。
ハイオークは瞬時に顎を引いて、固い額で槍を受け止めたらしい。
無敵か、この化け物は!
曲がったスピアを持った竜騎士はぼう然として、もうどうすることもできない。
そしてハイオークが一歩、ズドンと足を踏み出した。
0
お気に入りに追加
219
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!
京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。
戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。
で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺と最強白狐娘の異世界“ながら”侵攻記~スマホの『魔法大全』アプリを持って、保護した姉妹を育成しながら異世界魔王にカウンター食らわせる!~
柳生潤兵衛
ファンタジー
若返った“元おっさん”が仲間と異世界に攻め込む物語。【3章120話(121エピソード)完結】
【第1章 第1話~第49話】
馬場勇人(ばば ゆうと)、独身・無職の40代。
ある日、ユウトは思い立ったようにスマホを買った。
手こずりながらも、登録を済ませてスマホを見ると、見た事も聞いた事もないアプリが入っていた。
『魔法大全』? 戸惑いながらもタップしたユウトの運命は大きく動き出す……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる