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第七章 死闘

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 と、その時――

「おい、ユウト! 聞いているのか?」
 エリックが僕を呼んだ。

「う、うん」

「おいおい、しっかりしてくれよ。いいか? 今はとにかく慎重に動け。たとえ竜騎士がやられそうになっても余計な手出しはするな」

「だけど……」

「戦ってる間は魔法の支援はいらないと連中が言ってるんだ。何かあってもこっちが気に病む必要はねえよ」

 それはマティアスからの申し出だった。
 戦闘中勝手な行動を取られると、騎士同士の連携が乱れて逆効果と言うのだ。
 だがエリック曰く、それは彼らの建前で本音は違うらしい。

「要するに連中、俺たち下っ端の手を借りるのはプライドが許さないんだ。戦闘中助けてもらうのは耐えがたい屈辱らしいぜ」

「でも後で傷の回復はしてくれって……」

「それは戦闘行為に入らないっていう理屈なんだろう。まったく身勝手な話だぜ。まあ、お前は俺が合図したらその『リープ』の魔法を唱えてくれたらそれでいい。その時までは後ろで控えてろ」
 
『リープ』を唱えエリックをハイオークの頭上に飛ばすには、奴にかなり接近しなければならない。
 その時が、僕とリナにとって一番危険な瞬間だ。 

 もちろんエリックは、それよりもっとずっと危ないのだが――


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ハイオークと竜騎士団との戦いが今、始まろうとしている。

 ハイオークは、ゆうに100キロはありそうな鉄球付きの戦斧を左手で軽々と持ち上げ、それに右手を添えた。
 わずかに前傾ぜんけい姿勢を取り、ゆっくりと戦斧を構える。

 来るか――!?
 そう思った瞬間。

 ハイオークは「ウオォ」と低く唸り地面を蹴りあげ、こちらに向かって三メートルほど一気に跳んだ。
 巨体に似合わない、驚くべき速さだ。

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