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第六章 戦いの始まり
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「おお、これは素晴らしいものだな。それにただの剣ではない」
と、アリスはしきりに感心している。
「さすがアリス王女様、お目が肥えてらっしゃる。これはその名の通り『オーク殺し』と呼ばれる魔力を持つ短剣です。オークに特効があって、急所に突き刺せばたとえハイオークといえども一撃で殺せるはずですよ」
「エリック、お前、どこでこれを手に入れたのだ?」
「それはまあいろいろと。私は武器を集めるのが趣味でして」
「なにか曰くありげだな。――まあそんなことはどうでもよい。それよりいったい誰がハイオークを殺しにゆく? むろん、できるものなら私がやってもよいが。王が先頭に立って戦うのは我が王国の伝統だからな」
「いやいや、アリス様御自らに戦うのは、ロードラント軍最後の時ですよ」
エリックは苦笑して言った。
「それに失礼を承知で申し上げますが、アリス様の剣の腕では少々心もとない。なにせチャンスは一度きりですからね
」
「……それはそうかもしれんが」
「だからどうぞ私におまかせ下さい。この短剣は扱いが難しくて、慣れていないと使いこなせませんしね」
「お前が殺れると?」
「はい。しかし二つ条件がありまして……」
「なんだ?」
「まず、私に馬を一頭お貸しください。一気にハイオークに近づきたいんで」
「うむ、当然だな」
「もう一つ、これはレーモン様にお願いしたいのですが、竜騎士を――そうですね三十騎ほど私に同行させてほしいのです。竜騎士様の力があれば、コボルト兵を蹴散らしハイオークの所までたどり着くことはたぶん可能でしょう」
それを聞いて、レーモンが眉を吊り上げた。
「たぶん、だと? 竜騎士を見くびるな。そんなことたやすくできる。――だが、それだとまるで貴様の指示に従って我々が動くようではないか!」
「なにせ緊急事態ですからね、どうかご了解下さい」
「わかった。いいだろう」
アリスがうなずく。
「――し、しかしアリス様!」
レーモンが叫んだ。
「異議は許さん。レーモン、この軍を指揮するのは私だと言っただろう」
と、アリスはまたまた有無を言わせない。
と、アリスはしきりに感心している。
「さすがアリス王女様、お目が肥えてらっしゃる。これはその名の通り『オーク殺し』と呼ばれる魔力を持つ短剣です。オークに特効があって、急所に突き刺せばたとえハイオークといえども一撃で殺せるはずですよ」
「エリック、お前、どこでこれを手に入れたのだ?」
「それはまあいろいろと。私は武器を集めるのが趣味でして」
「なにか曰くありげだな。――まあそんなことはどうでもよい。それよりいったい誰がハイオークを殺しにゆく? むろん、できるものなら私がやってもよいが。王が先頭に立って戦うのは我が王国の伝統だからな」
「いやいや、アリス様御自らに戦うのは、ロードラント軍最後の時ですよ」
エリックは苦笑して言った。
「それに失礼を承知で申し上げますが、アリス様の剣の腕では少々心もとない。なにせチャンスは一度きりですからね
」
「……それはそうかもしれんが」
「だからどうぞ私におまかせ下さい。この短剣は扱いが難しくて、慣れていないと使いこなせませんしね」
「お前が殺れると?」
「はい。しかし二つ条件がありまして……」
「なんだ?」
「まず、私に馬を一頭お貸しください。一気にハイオークに近づきたいんで」
「うむ、当然だな」
「もう一つ、これはレーモン様にお願いしたいのですが、竜騎士を――そうですね三十騎ほど私に同行させてほしいのです。竜騎士様の力があれば、コボルト兵を蹴散らしハイオークの所までたどり着くことはたぶん可能でしょう」
それを聞いて、レーモンが眉を吊り上げた。
「たぶん、だと? 竜騎士を見くびるな。そんなことたやすくできる。――だが、それだとまるで貴様の指示に従って我々が動くようではないか!」
「なにせ緊急事態ですからね、どうかご了解下さい」
「わかった。いいだろう」
アリスがうなずく。
「――し、しかしアリス様!」
レーモンが叫んだ。
「異議は許さん。レーモン、この軍を指揮するのは私だと言っただろう」
と、アリスはまたまた有無を言わせない。
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