異世界最弱だけど最強の回復職《ヒーラー》

波崎コウ

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第六章 戦いの始まり

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「まあ、待て」
 アリスが怒り心頭のレーモンを制して言った。
「エリック、そこまで言うからには何か他に考えがあってのことだろう? 聞かせてくれ、お前の作戦を」

「ええ、もちろんです、アリス様」
 エリックは自信ありげにうなずいた。
「実は今、敵と戦って一つわかったことがあるんです。――あそこを見てください」

 エリックが西の方を指差した。

「見えますか? かなり遠いですが、コボルトどものうしろにばかデカい怪物がいるでしょう?」

 エリックの言う通り、西の遠方、コボルト兵の大群の中に一個の巨大な生物が、ずっしり立っているのが見えた。
 おそらく身長は普通の人間の三倍以上――七メートル近くありそうだ。
 その謎の巨人は、大きな戦斧と黒い鎧を装備しており、遠目で見てもとてつもなく強そうな雰囲気を漂わせている。

「あのデカブツか。私も馬上から見て気付いていた」

「アリスさま、あいつはオークですよ。それもオークの中でも上位種のハイオーク。凶悪で、力も知能もコボルトとはケタ違い、おまけに全身は鋼鉄のような皮膚に覆われていて、普通の剣や槍じゃ殺せないときています」

「そんな化け物が我々の相手なのか」

「ええ。おそらく、あの化け物がコボルト兵を指揮――というか支配してるんです。普段は烏合の衆のコボルト兵どもがまとまってるのも、ハイオークという大ボスが背後に控えているからでしょう」

「そうか、つまり!」

「そうです。あのハイオークを倒せれば、コボルト兵はおそらくバラバラになりますよ。そこを狙えば、俺たちはここから逃げ延びることができるかもしれません。少なくとも無闇に突撃するよりよほどいい」

「なるほど、ではどうやってハイオークを倒す? 雑魚が多すぎて近づくだけでも大変だぞ」

「それはもちろん考えています、こいつを見てください」

 エリックは懐から隠し持っていた短剣を出した。
 鞘から剣を抜いてアリスに見せる。
 刀身はおおよそ30センチぐらい、銀色に光る短剣だ。

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