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第六章 戦いの始まり

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「なんだか、声が明るいね」
 僕は思わず嫌味を返した。

「え、そんなことないよ」
 セリカはしれっと答える。

「あのさ、一つ言わせてもらうけど――」
 腹に据えかね、僕は声を荒げた。
「さっき矢で攻撃された時、なんでもっと早く『ガード』の魔法を使えって教えてくれなかったんだよ。危うく死にかけたじゃないか!」

「は? 有川君、なに言ってんの? それぐらい自分で気づかなきゃダメだよ。その前に魔法を使い方は教えてあげてたんだから」

「あの状況で気づけっていう方が無理だよ!」

「うーん、それはちょっと甘いかな。――いい? 基本的に自分の身は自分で守らなきゃ。そうしてそれは今現在だって同じこと。人の非難をする前に、目の前のピンチをどう切り抜けるか考えなよ」

「そんなこと言われなくてもわかってる。でも僕は敵を攻撃するような黒魔法は使えない。人のケガを治すぐらいしか力ないんだ。戦いには役立たないよ」

「それは違うわ。白魔法は人を治癒するだけじゃない、使いようによっては強力な武器にもなるの。いいからよーく考えなさい」

「え?」

「だいたいね有川君、あなたはそっちの世界に存在するほぼすべての白魔法が使えるのに、ちょっと贅沢すぎるのよ」

「贅沢って――いや、そういう問題じゃないだろ!」

「いいからいいから。とにかく自慢の白魔法を駆使して危機を乗り越えてみることね。それができなきゃあとは“死”あるのみだよ」

 確かにあんな化け物、まともに話し合いが通じる相手には思えない。
 つまり負けたらそこまで、命乞いなんかしても無駄だろう。

「あれ、黙っちゃった? もしかして怖気づいたの? なんならこっちの世界に帰ってくる?」

「それは、断る」

 今の自分にその選択肢はありえない。
 現実世界に戻ったところで、絶望の日々が待っているだけなのだから。


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