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第五章 迫りくる危機
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そこにいた誰もが「まさか――!」
と、思ったに違いない。
最悪の事態を想定していたレーモンだって、驚きはあったはずだ。
しかしさすがというべきか、みんなが浮き足立つ中、もっとも早く反応したのもそのレーモンだった。
表情一つ変えずに、大声で竜騎士たちに呼びかける。
「副官は――マティアスはどこか!!」
不幸中の幸い、追い払われた兵士たちは少し離れた場所に集結していて、ティルファの話を聞いた者はいなかった。
もしロードラント軍全滅の報が知れたらたいへんだった。
経験の浅い兵士たちは慌てふためき、大混乱に陥ったに違いない。
レーモンの呼びかけに応じ、すぐに一人の騎士――副官のマティアスがこちらにやって来た。
マティアスは切れ長の目をした冷たい感じの男で、他の竜騎士とは違う赤銅色の甲冑を身に付けていた。
副官だから、この護衛軍の中ではレーモンの次に偉い人ということになるのだろう。
「レーモン様、お呼びでしょうか」
と、マティアスが頭を下げる。
「全軍コノート城まで退却。即座にだ」
レーモンが端的に命を下した。
もはやアリスの意見など聞きもしない。
「はッ」
マティアスは短く返事をすると、馬に乗り、合図を送って竜騎士たちを一堂に集めた。
命令に従い、全軍撤退の準備に取り掛かったのだ。
なにしろ兵士は2000人近くいる。
素早く、かつ、無事に撤退させるのはかなり難しい仕事だろう――
と思ったが、そこはエリート揃いの竜騎士団。
指示を受け素早く散らばると、バラバラだった兵士たちを瞬く間にまとめ上げてしまった。
まったく見事な手際だ。
もし僕が竜騎士としてこの世界に転移したとしても、とてもこんなマネできない。
結局、単なる普通の一兵士という身分が、自分にはお似合いだったのだ。
と、思ったに違いない。
最悪の事態を想定していたレーモンだって、驚きはあったはずだ。
しかしさすがというべきか、みんなが浮き足立つ中、もっとも早く反応したのもそのレーモンだった。
表情一つ変えずに、大声で竜騎士たちに呼びかける。
「副官は――マティアスはどこか!!」
不幸中の幸い、追い払われた兵士たちは少し離れた場所に集結していて、ティルファの話を聞いた者はいなかった。
もしロードラント軍全滅の報が知れたらたいへんだった。
経験の浅い兵士たちは慌てふためき、大混乱に陥ったに違いない。
レーモンの呼びかけに応じ、すぐに一人の騎士――副官のマティアスがこちらにやって来た。
マティアスは切れ長の目をした冷たい感じの男で、他の竜騎士とは違う赤銅色の甲冑を身に付けていた。
副官だから、この護衛軍の中ではレーモンの次に偉い人ということになるのだろう。
「レーモン様、お呼びでしょうか」
と、マティアスが頭を下げる。
「全軍コノート城まで退却。即座にだ」
レーモンが端的に命を下した。
もはやアリスの意見など聞きもしない。
「はッ」
マティアスは短く返事をすると、馬に乗り、合図を送って竜騎士たちを一堂に集めた。
命令に従い、全軍撤退の準備に取り掛かったのだ。
なにしろ兵士は2000人近くいる。
素早く、かつ、無事に撤退させるのはかなり難しい仕事だろう――
と思ったが、そこはエリート揃いの竜騎士団。
指示を受け素早く散らばると、バラバラだった兵士たちを瞬く間にまとめ上げてしまった。
まったく見事な手際だ。
もし僕が竜騎士としてこの世界に転移したとしても、とてもこんなマネできない。
結局、単なる普通の一兵士という身分が、自分にはお似合いだったのだ。
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