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第四章 初めての魔法

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 さっきは誰にも知られず、また注目もされず『スキャン』の呪文を唱えることができた。
 しかし今はアリスやリナ、そしてレーモンなど衆人環視の中、魔法を使おうとしている。

 ――そこだ!

 思えば現実世界の自分も、人前で何かをする時、緊張しすぎて失敗することが多々あった。 
 つまり今、誰の目を気にせず落ち着いて魔法を唱えれば……。 
 
 僕は一度深く深呼吸し、目をつぶった。
 アリス、リナ、レーモン――魔法クリアの対象者であるティルファ以外の、周囲にいる人の存在を消す。

 自分はこの人を救う。
 回復役ヒーラーとして、絶対に助ける。

 そう意識しながら、僕は右手をティルファの上にかざす。

『クリア!』

 途端に、美しい緑の光が手の平から溢れだし、ティルファの体を包み込む。

「おお……」

 周囲から自然と声が上がる。

 やった! 上手くいった。
 土気色をしていたティルファの肌に、みるみる血の気が戻ってきた。

 よし、ここは一気に――

『リカバー!』

 今度は白い光が、ティルファを包み込む。
 さっきマリアが発した『リカバー』の光よりずっと強い。

「アリスさま。ティルファの傷口がどんどんふさがっていきます!!」
 リナがうれしそうに叫んだ。

「ユウト、すごいぞ。すごい魔法だ」
 アリスはまるで子供のようにはしゃぐ。

 シスターマリアは信じられない、といった風に目を丸くしている。
 そしてレーモンでさえも、一瞬驚きの表情を浮かべた。

 ……もっとも彼だけは、すぐに元の偏屈そうな老将の顔に戻ってしまったが。

 
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