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第二章 運命のゲーム
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「なるほど、そんなネットゲームの世界に行ってみたいと……」
セリカは何度もうなずく。
「あの世界では、確かに僕は回復役として必要とされていた。それにゲームに夢中になっている間は嫌なことは全部忘れられた。実を言うと、いっそゲームの世界が現実になればいいと思ったこともあるんだ」
「いいわ! それこそ有川君の力を生かせる最高の場所よ」
セリカは目を輝かせながら言った。
「さて、いよいよ私の力を見せる時が来たというわけね」
「……ほんとに本気なの?」
「もちろん」
と言って、セリカは椅子に座りなおした。
「でも有川君、あなたまだ迷ってるようね」
「そりゃまあ、ね」
迷ってる、というより信じてない、と言った方が正しいのだが……。
「じゃあ、もうちょっと詳しく説明してあげる。今から私が有川君を異世界に飛ばしてあげるとして、そこは残念ながらまったく『アナザーデスティニー』と同じ世界、というわけにはいかないの」
「へえ、そうなの」
「……気のない返事ね。まあいいけど。ただし一つはっきりしているのは、その異世界であなたは、ネットゲームで得た通りの力を備えている――つまり回復職として極めて高い能力をあらかじめ持ってるってこと。どう、なかなか魅力的な環境でしょ?」
「うーん。それって……回復職としてネトゲの仮想空間に入り、そこで冒険するような感じ?」
「違う違う」
セリカは首を大きく振って否定した。
「あくまでそこは実在の世界なの。つまりこちら側から見ればそこは異世界でも、向こうでは現実世界。そしてこちらの世界のあなたも、あちらの世界のあなたも本当の有川君なの」
……どうも頭が混乱してきた。
でも、もしも本当に異世界に行ってやり直せるのだったら、それは願ったりかなったりではないか?
これ以上、この世界で生きていても何の希望は持てないのだから。
「そう心配しないで」
と、セリカは考え込む僕にやさしく言った。
「私に連絡してくれれば、いつでもこちらの世界に戻れるから」
なんだ、戻ってこれるのか。
僕は少し拍子抜けした。
そういったSF的な異世界って、一度行ったら二度と戻れないってのが相場だと思っていた。
「でもさ、異世界から連絡って……どうすればいいんだよ」
「それは簡単。向こうの世界に行く際、いっしょにスマートホンも転送するから、それで連絡してくれればいいの」
なんだそりゃ。
そんなことができるのか?
「あ、でもね、あっちの世界が気に入ったら、一切こっちに帰ってこなくてもいいんだよ。まあ実際行って向こうで暮らしてみて、その上でどっちの世界に住むか決めたら?」
「……うん、それならいいよ」
ずいぶんうまい話だとは思ったが、僕はついうなずいてしまった。
セリカは何度もうなずく。
「あの世界では、確かに僕は回復役として必要とされていた。それにゲームに夢中になっている間は嫌なことは全部忘れられた。実を言うと、いっそゲームの世界が現実になればいいと思ったこともあるんだ」
「いいわ! それこそ有川君の力を生かせる最高の場所よ」
セリカは目を輝かせながら言った。
「さて、いよいよ私の力を見せる時が来たというわけね」
「……ほんとに本気なの?」
「もちろん」
と言って、セリカは椅子に座りなおした。
「でも有川君、あなたまだ迷ってるようね」
「そりゃまあ、ね」
迷ってる、というより信じてない、と言った方が正しいのだが……。
「じゃあ、もうちょっと詳しく説明してあげる。今から私が有川君を異世界に飛ばしてあげるとして、そこは残念ながらまったく『アナザーデスティニー』と同じ世界、というわけにはいかないの」
「へえ、そうなの」
「……気のない返事ね。まあいいけど。ただし一つはっきりしているのは、その異世界であなたは、ネットゲームで得た通りの力を備えている――つまり回復職として極めて高い能力をあらかじめ持ってるってこと。どう、なかなか魅力的な環境でしょ?」
「うーん。それって……回復職としてネトゲの仮想空間に入り、そこで冒険するような感じ?」
「違う違う」
セリカは首を大きく振って否定した。
「あくまでそこは実在の世界なの。つまりこちら側から見ればそこは異世界でも、向こうでは現実世界。そしてこちらの世界のあなたも、あちらの世界のあなたも本当の有川君なの」
……どうも頭が混乱してきた。
でも、もしも本当に異世界に行ってやり直せるのだったら、それは願ったりかなったりではないか?
これ以上、この世界で生きていても何の希望は持てないのだから。
「そう心配しないで」
と、セリカは考え込む僕にやさしく言った。
「私に連絡してくれれば、いつでもこちらの世界に戻れるから」
なんだ、戻ってこれるのか。
僕は少し拍子抜けした。
そういったSF的な異世界って、一度行ったら二度と戻れないってのが相場だと思っていた。
「でもさ、異世界から連絡って……どうすればいいんだよ」
「それは簡単。向こうの世界に行く際、いっしょにスマートホンも転送するから、それで連絡してくれればいいの」
なんだそりゃ。
そんなことができるのか?
「あ、でもね、あっちの世界が気に入ったら、一切こっちに帰ってこなくてもいいんだよ。まあ実際行って向こうで暮らしてみて、その上でどっちの世界に住むか決めたら?」
「……うん、それならいいよ」
ずいぶんうまい話だとは思ったが、僕はついうなずいてしまった。
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