12 / 503
第二章 運命のゲーム
(1)
しおりを挟む
それから僕は、時間をかけて今まで起きたことを全部話した。
その間、セリカはずっと黙って話を聞いてくれた。
僕がすべて吐き出したところで、セリカはおもむろに口を開いた。
「そういうことだったの。なかなか厳しい状況ね。――今、わたしが有川君に優しい言葉をかけてあげることは簡単。でも、たぶんそれじゃあなたを救うことはできない」
それはその通りだ。
少しの間なぐさめられても、家に帰ればあっという間につらい現実に引き戻される。
そしてまた自分に絶望するだろう。
「はっきり言うわ。今のままで有川君が七瀬さんを取り戻すことは、ほとんど不可能でしょうね」
「………………」
「佐々木龍吾先輩――確かに彼はあらゆる面であなたより秀でている。私が見ても格好いいと思うもの。二人はお似合のカップルよ」
ひどい。
事実とはいえ、いくらなんでも直球すぎる。
ただでさえ弱っている心臓を、針金でぐるぐるに巻かれ強く締め付けられたような感じだ。
「でもね――」
と、セリカは続けた。
「七瀬さんが有川君から離れて行った本当の原因は、佐々木先輩ではないと思う」
「え?」
「あなたは何も行動しなかった。あなたはあまりにも臆病だった。それが根本の原因よ。ねえ、そんなにも七瀬さんのことを想っていたのに、今までどうして告白しなかったの? 機会はいくらでもあったでしょう?」
セリカの言葉を聞いて、目頭が熱くなってきた。
どうしても涙が抑えきれないのだ。
「ほんの少しの勇気で、道は開けたかもしれないのに、ね」
「その通りだよ」
消えりそうな声で、僕は言った。
「こうなったのは当然の結果なんだ……」
理奈に対し何もできなかった自分。
幼ななじみと言う地位に甘えていた自分。
悔しかった。
情けなくて本気で死にたかった。
膝の上でぎゅっと握ったこぶしに、涙がぽとりと落ちる。
「さてと――」
セリカは立ち上がって手を後ろで組み、ゆっくりと部屋の中を歩き出した。
「あなたを救うにはどうしたらいいか……」
「もういいよ」
すべて告白してみたところで気持ちは楽にはならない。
むしろ現実を突きつけられ、余計につらくなってしまった。
「いいえ、ここまで事情を知ってしまって引き下がれないわ」
「いいから、もう止めてくれ!」
「静かに……」
セリカは突然くるりと振り向き、突拍子もないことを言った。
「有川君――いっそ死んだ気になって、異世界に行ってみない?」
その間、セリカはずっと黙って話を聞いてくれた。
僕がすべて吐き出したところで、セリカはおもむろに口を開いた。
「そういうことだったの。なかなか厳しい状況ね。――今、わたしが有川君に優しい言葉をかけてあげることは簡単。でも、たぶんそれじゃあなたを救うことはできない」
それはその通りだ。
少しの間なぐさめられても、家に帰ればあっという間につらい現実に引き戻される。
そしてまた自分に絶望するだろう。
「はっきり言うわ。今のままで有川君が七瀬さんを取り戻すことは、ほとんど不可能でしょうね」
「………………」
「佐々木龍吾先輩――確かに彼はあらゆる面であなたより秀でている。私が見ても格好いいと思うもの。二人はお似合のカップルよ」
ひどい。
事実とはいえ、いくらなんでも直球すぎる。
ただでさえ弱っている心臓を、針金でぐるぐるに巻かれ強く締め付けられたような感じだ。
「でもね――」
と、セリカは続けた。
「七瀬さんが有川君から離れて行った本当の原因は、佐々木先輩ではないと思う」
「え?」
「あなたは何も行動しなかった。あなたはあまりにも臆病だった。それが根本の原因よ。ねえ、そんなにも七瀬さんのことを想っていたのに、今までどうして告白しなかったの? 機会はいくらでもあったでしょう?」
セリカの言葉を聞いて、目頭が熱くなってきた。
どうしても涙が抑えきれないのだ。
「ほんの少しの勇気で、道は開けたかもしれないのに、ね」
「その通りだよ」
消えりそうな声で、僕は言った。
「こうなったのは当然の結果なんだ……」
理奈に対し何もできなかった自分。
幼ななじみと言う地位に甘えていた自分。
悔しかった。
情けなくて本気で死にたかった。
膝の上でぎゅっと握ったこぶしに、涙がぽとりと落ちる。
「さてと――」
セリカは立ち上がって手を後ろで組み、ゆっくりと部屋の中を歩き出した。
「あなたを救うにはどうしたらいいか……」
「もういいよ」
すべて告白してみたところで気持ちは楽にはならない。
むしろ現実を突きつけられ、余計につらくなってしまった。
「いいえ、ここまで事情を知ってしまって引き下がれないわ」
「いいから、もう止めてくれ!」
「静かに……」
セリカは突然くるりと振り向き、突拍子もないことを言った。
「有川君――いっそ死んだ気になって、異世界に行ってみない?」
0
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます
ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。
何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。
何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。
それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。
そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。
見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。
「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」
にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。
「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。
「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。
勇者としての役割、与えられた力。
クラスメイトに協力的なお姫様。
しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。
突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。
そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。
なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ!
──王城ごと。
王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された!
そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。
何故元の世界に帰ってきてしまったのか?
そして何故か使えない魔法。
どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。
それを他所に内心あわてている生徒が一人。
それこそが磯貝章だった。
「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」
目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。
幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。
もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。
そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。
当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。
日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。
「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」
──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。
序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
95部で第一部完とさせて貰ってます。
※9/24日まで毎日投稿されます。
※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。
おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。
勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。
ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる