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第一章 絶望の現実世界
(3)
しおりを挟む理奈は育ちも性格も良く、顔も飛び切りかわいい。
成績も常に上位でスポーツも得意。かといってそれを特に鼻にかけるわけでもない。
誰からも好かれる、非の打ちどころのない女の子だ。
そんな理奈と僕は、生まれた時から家が近所の間柄だった。
同じ幼稚園、同じ小学校にそろって通い、放課後はいつも一緒に仲良く遊んだ。
成長するにつれ少しずつ距離は離れていったけれど、それでも僕は、お互いに一番身近な異性だと信じて疑わなかった。
そして僕たちは当然のように同じ中学に進学し――
その頃すでに、理奈は学校で1、2を争う人気の女子になっていた。
特に男子には憧れの的で、告白されることも度々あったらしい。
でも、理奈はそれをすべて断り、誰とも付き合うことはなかった。
だから“理奈と幼なじみ”という立場にいた僕は、みんなにうらやましがられた。
中学校でもまだ、理奈と毎日一緒に登校し、校内でもしょっちゅう話していたから。
ついには嫉妬にかられた上級生に因縁を付けられ、いじめられたこともある。
が、その時も理奈は僕を庇ってくれた。
学校での理奈の発言力は絶対だったから、いじめはすぐに止んだ。
そんなこんなでも僕はいつしか信じ込んでいた。
リナとは、熱い“両想い”の関係、だと。
今はまだ友達でも、高校生になったら正式に恋人になって、ゆくゆくは結婚する――
中学生にありがちな妄想を、頭の中でどんどん膨らませていったのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
でも、だからといって僕が何もしなかったわけではない。
理奈にふさわしい人間になるために、彼女の志望する難関高校へ共に通うために、大嫌いだった勉強を必死になって続けたのだ。
そして努力は実った。
僕は無事、理奈と同じ高校に合格できたのだ。
――ところが、よろこびも長くは続かなかった。
理奈と僕は、一年からクラスが別々になってしまったのだ。
入学当初の忙しさから、二人の縁は自然に遠くなり、話したり遊んだりする機会もほぼなくなった。
僕が高校生活になじめず、学校を休みがちになってからもそれは変わらなかった。
実際に会うどころか、電話やネット経由での連絡も一切ない。
それでも僕は、いつか理奈が救いの手を差し伸べてくれる――そう信じていた。
しかし、そのわずかな希望も、その日完全に打ち砕かれることになるのだった。
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