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第一章 絶望の現実世界

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 理奈は育ちも性格も良く、顔も飛び切りかわいい。
 成績も常に上位でスポーツも得意。かといってそれを特に鼻にかけるわけでもない。
 誰からも好かれる、非の打ちどころのない女の子だ。

 そんな理奈と僕は、生まれた時から家が近所の間柄だった。
 同じ幼稚園、同じ小学校にそろって通い、放課後はいつも一緒に仲良く遊んだ。
 成長するにつれ少しずつ距離は離れていったけれど、それでも僕は、お互いに一番身近な異性だと信じて疑わなかった。

 そして僕たちは当然のように同じ中学に進学し――

 その頃すでに、理奈は学校で1、2を争う人気の女子になっていた。
 特に男子には憧れの的で、告白されることも度々あったらしい。

 でも、理奈はそれをすべて断り、誰とも付き合うことはなかった。
 だから“理奈と幼なじみ”という立場にいた僕は、みんなにうらやましがられた。
 中学校でもまだ、理奈と毎日一緒に登校し、校内でもしょっちゅう話していたから。
 
 ついには嫉妬にかられた上級生に因縁を付けられ、いじめられたこともある。
 が、その時も理奈は僕を庇ってくれた。
 学校での理奈の発言力は絶対だったから、いじめはすぐに止んだ。

 そんなこんなでも僕はいつしか信じ込んでいた。
 リナとは、熱い“両想い”の関係、だと。

 今はまだ友達でも、高校生になったら正式に恋人になって、ゆくゆくは結婚する――

 中学生にありがちな妄想を、頭の中でどんどん膨らませていったのだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 でも、だからといって僕が何もしなかったわけではない。
 理奈にふさわしい人間になるために、彼女の志望する難関高校へ共に通うために、大嫌いだった勉強を必死になって続けたのだ。

 そして努力は実った。
 僕は無事、理奈と同じ高校に合格できたのだ。

 ――ところが、よろこびも長くは続かなかった。

 理奈と僕は、一年からクラスが別々になってしまったのだ。
 入学当初の忙しさから、二人の縁は自然に遠くなり、話したり遊んだりする機会もほぼなくなった。 

 僕が高校生活になじめず、学校を休みがちになってからもそれは変わらなかった。
 実際に会うどころか、電話やネット経由での連絡も一切ない。

 それでも僕は、いつか理奈が救いの手を差し伸べてくれる――そう信じていた。

 しかし、そのわずかな希望も、その日完全に打ち砕かれることになるのだった。


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