上 下
38 / 47

第37話 初愛

しおりを挟む
「んっ……ふ、ぁ」

 焦るように何度も角度を変えて唇を啄まれ、発情期の熱はどんどん上がってく。
 舌が深く差し込まれ、上顎の奥を舐められて、その切なさに喘ぎが漏れた。
 でも僅かに残った理性が、苦い味を拒絶する。昨日排卵した、Ωの本能かも知れなかった。

「や、綾、人。苦い……っ。煙草、やめろ」

「やめたぞ?」

「苦い」

「唇に何か、塗っていないか?」

「あ……」

 そう言えば、ポニーに薬を塗られたっけ。あれが苦かった。

「綾人、煙草、やめたのか?」

「ああ。四季との子供が出来たら、どっちみちやめるからな」

 子供。綾人との未来。家族。
 綾人は、本気で考えてくれてんだ。そう思うと、目頭がツンと熱くなった。
 昨日自分で不器用につけたボタンが、今度は弾け飛ぶ事なく、器用に次々と外されてく。
 前がはだけられると、淡い色付きを舌で転がされた。

「アッ」

 ビクン、と身体が跳ねた。
 たったそれだけの刺激で、身体中がドクンドクンと、分身を中心に脈打ち出す。
 綾人がスーツのジャケットを手早く脱いで、俺の下半身の下に敷いた。

「四季、ちょっと腰上げろ」

「……ん」

 俺の素肌がコンクリートに触れないようにしてから、綾人はスラックスを下着ごと取り去った。
 秋晴れとはいえ、風はヒンヤリしてる。
 初めてそこに触れる外気の冷たさに、俺はブルッと肩を震わせた。

「四季も、カチカチだな」

「やっ……見んな」

 言葉通り、俺の分身はとうに勃ち上がって、透明な雫をトロトロと零してる。
 恥ずかしくて、手の甲で顔を隠すと、手首を掴まれ、チュッと触れるだけのキスをされた。

「隠すな。全部、見せてくれ。俺の四季」

 呼ばれると、子宮がヒクつくのが分かる。

「孔も、もうびしょびしょだな。口を開けて待ってる」

 耳元で囁かれ、そんな恥ずかしいこと否定したいのに、ますます後ろの孔が疼くのが分かる。

「恥ずかし……っ」

「大丈夫だ。綺麗だ、四季」

 孔の周りを掠めるようになぞったあと、性急に指が何本か入ってくる。すぐに子宮口を見つけ出し、大きく緩急をつけて突かれ、拡げられた。

「あっ・それ・駄目・イくっ」

「イけ。苦しいだろう」

 片手では子宮口を、片手では分身を責められる。
 悔しいくらいの巧みさで、若い俺の雄は、あっという間に弾けた。

「は・やぁっ・んン――ッ!!」

 へそのくぼみに、白い精液が溜まる。昨日出したばかりだから、水っぽく量もそんなに多くなかった。

「んんっ」

 ヒクつく孔に、待ち侘びた綾人の灼熱が宛がわれる。ジリジリと、焦らすように時間をかけて挿入された。
 かなりの太さに、一番太い所が通る時は、じわりと痛みが走った。
 でもその後は、スムーズに挿入(はい)る。

「動いて、大丈夫か?」

 訊かれて、薄ら瞑っていた瞼を上げると、酷く余裕のないカオが目に入った。
 ワイルドな頬はセクシーに歪み、その男臭さに子宮がまた反応する。

「綾人……良いぞ、来い」

 途端、激しい突き上げがきた。
 俺は嵐に揉まれる小舟のように、揺すり上げられてガクガクと顎を上下させる。

「あ・あ・ぁんっ、綾・人っ」

「四季……四季、優しく出来なくて、すまない。限界なんだ」

「良いぞ、綾人っ、優しくなくても良い、滅茶苦茶にして……っ!」

 俺も、発情期の熱に浮かされて叫ぶ。
 愛液と腸液で潤ったナカは、ぬるぬるで熱くてキツくて、本能のまま腰を動かす度に、互いに快感の呻きを上げる。
 イったばかりの分身を扱かれると、未知の感覚が身体の芯を痺れさせた。
 
「あ・あっ・何か、クる……っ」

 戸惑って口走ると、扱く動きが速くなった。
 後ろが綾人の形に沿うようにキツく締まり上がるのと同時、前から透明な液体がプシャアと撒き散らされる。
 あれ……いつもと違う。これ、何? すっごくイイ……!
 だけどそんな思考は、ガンガンと突き上げられる過ぎる快楽に、散り散りになってしまう。

「あっあ・ひゃ・あんっ」

「四季……っ!」

 最後に綾人は、俺の尻に腰を思いっきり叩き付けた。肉と肉のぶつかり合う音が、パァンと響く。
 そしてイく瞬間抜いて、俺の薄い腹筋の上に、愛欲の証を吐き出した。

「はぁ……」

「……四季」

 耳元で呼ばれると、子宮が蠢く。
 綾人、分かっててわざと、やってんじゃないだろうな……。
 息を弾ませながら視線を合わせたら、快感に掠れた声で囁かれた。

「愛している」

「俺も……っ」

「俺も……何だ?」

 俺は今まで激しく求め合ってたのが嘘みたいに、ポンと赤くなる。

「ドS」

「またツンデレか、四季」

 残念そうに笑って、綾人は俺の涙ぼくろに口付ける。そこは、快感の涙に濡れていた。

「初めてで潮を噴くとは、感度が良いな。だが……すまなかった。発情に当てられて、酷く抱いてしまった」

「んなの……綾人と初めて出来ただけで、嬉しい」

 照れ臭かったけど、素直に口にした。
 すると、俺の分身に触れていた綾人の雄が質量を増す。

「んっ。駄目、綾人。二回もヤったら、立てなくなる」

「お前が可愛いことを言うからだ」

 昨日とは別人のように、綾人は甘やかに笑って口付けてくる。
 幸せだった。何も刺激はされてないのに、子宮がきゅんきゅんする。
 Ωとしての、最上級の悦(よろこ)びだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

病んでる愛はゲームの世界で充分です!

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。 幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。 席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。 田山の明日はどっちだ!! ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。 BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。 11/21 本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

これがおれの運命なら

やなぎ怜
BL
才能と美貌を兼ね備えたあからさまなαであるクラスメイトの高宮祐一(たかみや・ゆういち)は、実は立花透(たちばな・とおる)の遠い親戚に当たる。ただし、透の父親は本家とは絶縁されている。巻き返しを図る透の父親はわざわざ息子を祐一と同じ高校へと進学させた。その真意はΩの息子に本家の後継ぎたる祐一の子を孕ませるため。透は父親の希望通りに進学しながらも、「急いては怪しまれる」と誤魔化しながら、その実、祐一には最低限の接触しかせず高校生活を送っていた。けれども祐一に興味を持たれてしまい……。 ※オメガバース。Ωに厳しめの世界。 ※性的表現あり。

つがいの薔薇 オメガは傲慢伯爵の溺愛に濡れる

沖田弥子
BL
大須賀伯爵家の庭師である澪は、秘かに御曹司の晃久に憧れを抱いている。幼なじみの晃久に子どもの頃、花嫁になれと告げられたことが胸の奥に刻まれているからだ。しかし愛人の子である澪は日陰の身で、晃久は正妻の嫡男。異母兄弟で男同士なので叶わぬ夢と諦めていた。ある日、突然の体の疼きを感じた澪は、ふとしたことから晃久に抱かれてしまう。医師の長沢から、澪はオメガであり妊娠可能な体だと知らされて衝撃を受ける。オメガの運命と晃久への想いに揺れるが、パーティーで晃久に婚約者がいると知らされて――◆BL合戦夏の陣・ダリア文庫賞最終候補作品。◆スピンオフ「椿小路公爵家の秘めごと」椿小路公爵家の唯一の嫡男である安珠は、自身がオメガと知り苦悩していた。ある夜、自慰を行っている最中に下男の鴇に発見されて――

【R18】騎士団寮のシングルファザー

古森きり
BL
妻と離婚し、彼女を見送り駅から帰路の途中、突然突っ込んできた車に死を覚悟した悠来。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、悠来の奮闘が今、始まる! 小説家になろう様【ムーンライトノベルズ(BL)】にも掲載しています。 ※『騎士団寮のシングルマザー』と大筋の流れは同じですが元旦那が一緒に召喚されていたら、のIFの世界。 これだけでも読めます。 ※R指定は後半の予定。『*』マークが付きます。

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

処理中です...