上 下
33 / 47

第32話 ……いしてる

しおりを挟む
「四季……!」

 綾人のゴツゴツした男らしい指が、ワイシャツのボタンを、半分は千切って外してく。
 その間、唇も角度を変えて愛おしまれていた。下唇、上唇と優しく吸われ、唇がすり合わされ、舐められる。

「四季……血が出てる」

「ああ。シィに噛まれたんだ」

 快感の吐息混じりにそう言うと、丁寧に唇を舐められた。
 華那としてた肉欲のキスとは違う、相手を慈しむような優しいキス。こっちの方が好きだった。

 気付いたら、上半身の前ははだけられ、下は下着ごとスラックスを下ろされていた。
 デスクに横たわっている俺の分身を、綾人が口に含む。Ωの平均より小さなサイズのそれは、綾人の口内にスッポリと収まった。
 これも器用な舌が、先っぽを刺激する。

「アッ」

 かと思ったら、薄い茂みの奥にも指が入ってきた。そこはもう愛液でびしょびしょで、つるりと綾人の指を受け入れる。一本じゃ物足りなくて、思わず口走った。

「もっと……っ」

 それに応えて、指が増やされる。今度は、ちょっと苦しい。内部で指がバラバラに動いて、俺はあられもなく喘いだ。

「ぁん・んんっ・はぁんっ」

 顔を上げて、先っぽに唇をつけながら綾人が話す。

「四季のここは、具合が良いな。もう、三本も銜え込んでる……」

 言葉は余裕を装ってたけど、口調は切羽詰まってる。綾人も、発情してるんだ。でも、目は虚ろじゃない。
 ビクビクと腰を跳ねさせながら、俺は無意識に訊いていた。

「綾人っ・俺のこと、愛してる・か……?」

「ああ、愛している。俺のものにして、誰の目にも触れさせたくない」

「あ・あっ、イっちゃ……っ」

 綾人の長い指が、子宮口の入り口を揺らすように細かく突く。男のΩに処女膜はなかったけど、その初めての感覚に息を詰めた。

「息を止めるな、四季。深呼吸しろ」

「んなこと……っ出来ねっ」

 途端、前で反り返ってる分身を握られた。緩急をつけて、器用に扱かれる。

「これでは辛いだろう。一回、イっておけ」

 前と後ろへの巧みな刺激に、次第に子宮に熱が集まってきた。
 子宮口を突かれると、ビックリするぐらい声が裏返る。

「ァンッ!」

「四季……四季」

 うわごとのように綾人が俺を呼んで、前に熱い人肌の感触が触れて驚いた。
 そこを見下ろすと、綾人もスラックスの前を寛げて、赤黒く怒張した大きくて太い雄を、俺のと纏めて扱いてた。 
 何もかも初めての経験だったけど、俺も発情期の激しい欲望に、取り憑かれてた。
 自然と腰が揺れてくる。
 
「あ・あっ・イく・やぁ……っ」

 ナベにイかされた時とは違う、子宮がジンジンと痺れるような快感。
 後ろがきゅうと締まり上がると同時に、分身から白い粘つく愛液が飛び出した。薄い腹筋の上に溜まる。
 だけど止まない前への刺激に、俺はデスクの上で弓なりに背を反らせて、しゃくり上げた。

「アッ・やぁっ、イったのにぃっ」

「少し、我慢しろ」

「ひゃんっ・あ・あっ」

 イったばかりの敏感な分身をキツく扱かれて、飲み込みきれない唾液が顎を伝う。

「ふぁっ……」

「イくっ……!」

 最後に一声吠えて、綾人も俺の腹の上に熱い熱を吐き出した。
 際限のないように思われた責め苦から、ようやく解放される。

「はぁ……っ」

「……四季」

 俺たちは固く抱き合ってた。瞑っていた瞳を薄ら開けると、真剣な雄の光と視線が合う。

「愛している」

 そう言って、後ろの孔に、イってもなお萎えない綾人が押し当てられた。

「ぁん……っ」

 それだけで、無意識に後ろがハクハクとヒクついて、綾人が挿入(はい)ってくるのを待ってる。

「俺も。綾人、早くっ」

 グッと力が込められて、綾人の先っぽが俺の孔を押し拡げる。
 あと少しで、願いが叶う。その思いに、俺は再び目を閉じた。
 その時。

 ――キーンコーンカーンコーン。

 四時限目の終わるチャイムが響いた。
 愛欲に染まっていた綾人の瞳が、ハッと理性を取り戻す。取り戻してしまう。
 俺は瞼を上げてそれを見て、発情期の不安定さと叶わぬ願いに、涙をじわりと滲ませた。
 綾人はすぐにスラックスのジッパーを上げて、棚からタオルを取り出してきた。

「使え。すまない、四季。俺も発情してるから、一緒に居たら我慢出来ない。夜に戻るから、好きなだけ居るといい。来客には、出るな」

「うん……綾人」

「ん?」

「……いしてる」

 消え入りそうな声で囁くと、綾人は複雑な感情に頬を歪ませて、出て行った。
 もし。もしも笑ってくれたら、こんなに寂しくならなかったのに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖域で狩られた教師 和彦の場合

BL
純朴な新任体育教師、和彦。 鍛えられた逞しく美しい肉体。 狩人はその身体を獲物に定める。 若く凛々しい教師の精神、肉体を襲う受難の数々。 精神的に、肉体的に、追い詰められていく体育教師。 まずは精神を、そして、筋肉に覆われた身体を、、、 若く爽やかな新米体育教師、杉山和彦が生徒に狩の獲物とされ、堕ちていくまで。 以前書いた作品のリライトになります。 男性向けに設定しましたが、個人的には、性別関係なしに読んでいただける方に読んでいただきたいです。

【R-18】17歳の寄り道

六楓(Clarice)
恋愛
はじめての恋とセックス。禁断の関係。 多感な時期の恋愛模様と、大人の事情、17歳たちの軌跡と、その後を描きます。 移り気で一途な、少女たちの足あと。 ◇◇◇◇◇ *R-18要素があるのでご注意ください。 *他サイト様にて、Clarice名義で掲載しています。

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

きょうもオメガはワンオぺです

トノサキミツル
BL
ツガイになっても、子育てはべつ。 アルファである夫こと、東雲 雅也(しののめ まさや)が交通事故で急死し、ワンオペ育児に奮闘しながらオメガ、こと東雲 裕(しののめ ゆう)が運命の番い(年収そこそこ)と出会います。

白熊皇帝と伝説の妃

沖田弥子
BL
調理師の結羽は失職してしまい、途方に暮れて家へ帰宅する途中、車に轢かれそうになった子犬を救う。意識が戻るとそこは見知らぬ豪奢な寝台。現れた美貌の皇帝、レオニートにここはアスカロノヴァ皇国で、結羽は伝説の妃だと告げられる。けれど、伝説の妃が携えているはずの氷の花を結羽は持っていなかった。怪我の治療のためアスカロノヴァ皇国に滞在することになった結羽は、神獣の血を受け継ぐ白熊一族であるレオニートと心を通わせていくが……。◆第19回角川ルビー小説大賞・最終選考作品。本文は投稿時のまま掲載しています。

溺愛オメガバース

暁 紅蓮
BL
Ωである呉羽皐月(クレハサツキ)と‪α‬である新垣翔(アラガキショウ)の運命の番の出会い物語。 高校1年入学式の時に運命の番である翔と目が合い、発情してしまう。それから番となり、‪α‬である翔はΩの皐月を溺愛していく。

【R18】騎士団寮のシングルファザー

古森きり
BL
妻と離婚し、彼女を見送り駅から帰路の途中、突然突っ込んできた車に死を覚悟した悠来。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、悠来の奮闘が今、始まる! 小説家になろう様【ムーンライトノベルズ(BL)】にも掲載しています。 ※『騎士団寮のシングルマザー』と大筋の流れは同じですが元旦那が一緒に召喚されていたら、のIFの世界。 これだけでも読めます。 ※R指定は後半の予定。『*』マークが付きます。

この恋は運命

大波小波
BL
 飛鳥 響也(あすか きょうや)は、大富豪の御曹司だ。  申し分のない家柄と財力に加え、頭脳明晰、華やかなルックスと、非の打ち所がない。  第二性はアルファということも手伝って、彼は30歳になるまで恋人に不自由したことがなかった。  しかし、あまたの令嬢と関係を持っても、世継ぎには恵まれない。  合理的な響也は、一年たっても相手が懐妊しなければ、婚約は破棄するのだ。  そんな非情な彼は、社交界で『青髭公』とささやかれていた。  海外の昔話にある、娶る妻を次々に殺害する『青髭公』になぞらえているのだ。  ある日、新しいパートナーを探そうと、響也はマッチング・パーティーを開く。  そこへ天使が舞い降りるように現れたのは、早乙女 麻衣(さおとめ まい)と名乗る18歳の少年だ。  麻衣は父に連れられて、経営難の早乙女家を救うべく、資産家とお近づきになろうとパーティーに参加していた。  響也は麻衣に、一目で惹かれてしまう。  明るく素直な性格も気に入り、プライベートルームに彼を誘ってみた。  第二性がオメガならば、男性でも出産が可能だ。  しかし麻衣は、恋愛経験のないウブな少年だった。  そして、その初めてを捧げる代わりに、響也と正式に婚約したいと望む。  彼は、早乙女家のもとで働く人々を救いたい一心なのだ。  そんな麻衣の熱意に打たれ、響也は自分の屋敷へ彼を婚約者として迎えることに決めた。  喜び勇んで響也の屋敷へと入った麻衣だったが、厳しい現実が待っていた。  一つ屋根の下に住んでいながら、響也に会うことすらままならないのだ。  ワーカホリックの響也は、これまで婚約した令嬢たちとは、妊娠しやすいタイミングでしか会わないような男だった。  子どもを授からなかったら、別れる運命にある響也と麻衣に、波乱万丈な一年間の幕が上がる。  二人の間に果たして、赤ちゃんはやって来るのか……。

処理中です...