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第11話 ナベ
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「……四季」
俯いて個室のドアを開けたら、視界に誰かのローファーが入り、名を呼ばれて仰天する。
弾かれたように顔を上げたら……ナベだった。
「お、おう。ナベ。ちょっと腹壊しててよ」
俺は平静を装って、男臭く言い募る。
だけどナベは、何処か目の焦点が合ってなかった。
「四季、お前……Ωなのか?」
ギョッとしたけど、やっぱり顔には出さずに冗談めかす。
「は? 何だそれ。ギャグ?」
「俺……分かるんだ。Ωの発情期の匂い。ヤリたくて、堪んないんだろう? 学校の個室で抜くなんて、硬派な見かけによらず、好き者だな」
ナベは、唾液をすすった。
「相手、してやるよ。今までいっぱい発情期のΩとヤったから、痛い思いはさせないぜ。俺も、女より男のΩの方が、具合が良くて好きなんだ」
焦点の合わない目で、『好き』と言われる。俺の人生は、いつもそうだった。
「俺は、Ωじゃねぇ。βだ。疑うなら、学校のデータを見せても良い」
「へぇ……隠してるんだな。だけど、お前がヤってる声が聞こえたし、俺、分かるんだよ。Ωの匂いが」
ヤバい。綾人みたいに鼻の良い奴が、よりにもよって、こんなガタイの奴で居たなんて。逃げないと。
横をすり抜けてトイレの出口にダッシュしようとした俺の二の腕を、ナベが痛いほどの力で掴み上げる。
「イッ……」
「逃がさないよ。逃げたら、お前がΩだって、警察に突き出すぜ?」
絶望が、目の前を赤く染めるようだった。
今出たばかりの個室の中に押し込められ、鍵がかけられる。
蓋の上に尻餅をついた俺をそのままに、ナベは目を血走らせてスラックスの前を寛げた。
「しゃぶれよ。一回イってから、たっぷり雌孔(めすあな)にぶち込んでやるから」
「う……」
反射的に顔を背けると、期待に緩く勃ち上がった雄の器官が頬に押し付けられた。
生臭さに、吐き気がする。
「何だよ、ひょっとして銜えた事ないのか? 処女かよ?」
ナベは、朗らかだった出会いが嘘みたいに、上唇をめくり上げて嗤(わら)った。
俺は、つくづく『Ωである俺』が嫌になる。
綾人も、ナベも、フェロモンに当てられてるんだ。
この世の何処かにカミサマって奴が居るんなら、何でΩなんて作ったんだろう。
また、涙が溢れてきた。
「おいおい……泣くなよ。レイプしてるみたいじゃんか。同意の上で、お互いキモチヨクなろうぜ? じゃあ、しゃぶらなくて良いから、ズボン下ろせよ」
俺は、今上げたばかりのスラックスを、泣きながら膝まで下ろした。
「パンツも」
言う通りにするほか、俺には選択肢がなかった。すっかり縮こまった分身が、ナベの目に晒される。
「何だよ、今までサカってたくせに、俺じゃ不服かよ? まあ、処女なら、仕方ないか。すぐにヒイヒイ言わせてやるよ」
「ヒッ」
ナベのゴツゴツした拳が、俺の分身を握る。テクニックも何もなく、若さに任せて強く扱かれた。
「あっ・う・う」
俺は両手で口元を覆って、声を耐える。心では拒むのに、発情期の熱は発散したくて、すぐに芯を持ち始める。
イきたくない。こんな奴の手で。
そう思うのに、分身はどんどん硬度を持って反り返る。
「や・やだ・イくっ」
「イけよ。一回イったら、止まんなくなるぜ」
相変わらず、ナベの目の焦点は合ってない。
「あ・アッ・んぁあっ……!!」
初めて他人の手でもたらされる快楽に、目の奥がチカチカする。瞬間的には気持ち良かったけど、後味は最悪だった。
嫌悪感に、額にじっとりと脂汗が浮く。
ナベは俺の放った精液を大きな手の中に握り込んで、カラカラとトイレットペーパーを巻き取って拭っていた。
「はは。凄いな。自分でヤってたから、もう雌孔がびしょびしょだぜ。今、突っ込んでやるからな」
太ももに手がかかったと思ったら、トイレの天井が見えた。後ろに、硬くて熱い楔が宛がわれる。
「や……嫌だ!」
瞬間、我を忘れて、俺は抗った。初めてを、こんな奴に奪われるなんて。
「綾人!!」
「馬鹿、大声出すな。Ωだってバレて困るのは、お前だろ」
焦ったように、ナベの片手が俺の口を塞ぐ。だけど鼻も口もいっぺんに塞ぐものだから、俺は苦しくて余計に暴れる。
やがて、トイレの入り口が開く音がした。
助けて!!
塞がれてて声は殆ど出なかったけど、俺は力一杯個室のドアを蹴った。
「何をやっている?」
綾人!
「な、何でもないです。プロレスごっこ……」
思い切り、ナベの親指の付け根を噛んだ。
「イテッ!」
「綾人! 助けて!!」
「四季!? 開けろ! 開けないとぶち破るぞ!!」
凄い剣幕の声がして、言葉通り、ドアが蹴り破られる音がした。
――ミシッ。バキッ。
そんな音がしたと思ったら、個室のドアが、蝶番の方から力任せに引き千切られた。
綾人の怒気をはらんだ顔が覗く。
その瞬間、安心というより戦慄した。
綾人、怒ってる。そうだよな……幾ら同意の元じゃないとはいえ、たった今『好き』って思った奴が、他の男に股開いてんだから。
ナベの胸倉を掴み上げて、綾人が殴ってる。
駄目だ、綾人。あんたの右ストレート、重過ぎだ。ナベが死んだら、あんたが罪に問われるよ。俺の為に、あんたが損する事はない。
そんな事を思いながら、気が抜けて、俺は失神するように意識を失った。
俯いて個室のドアを開けたら、視界に誰かのローファーが入り、名を呼ばれて仰天する。
弾かれたように顔を上げたら……ナベだった。
「お、おう。ナベ。ちょっと腹壊しててよ」
俺は平静を装って、男臭く言い募る。
だけどナベは、何処か目の焦点が合ってなかった。
「四季、お前……Ωなのか?」
ギョッとしたけど、やっぱり顔には出さずに冗談めかす。
「は? 何だそれ。ギャグ?」
「俺……分かるんだ。Ωの発情期の匂い。ヤリたくて、堪んないんだろう? 学校の個室で抜くなんて、硬派な見かけによらず、好き者だな」
ナベは、唾液をすすった。
「相手、してやるよ。今までいっぱい発情期のΩとヤったから、痛い思いはさせないぜ。俺も、女より男のΩの方が、具合が良くて好きなんだ」
焦点の合わない目で、『好き』と言われる。俺の人生は、いつもそうだった。
「俺は、Ωじゃねぇ。βだ。疑うなら、学校のデータを見せても良い」
「へぇ……隠してるんだな。だけど、お前がヤってる声が聞こえたし、俺、分かるんだよ。Ωの匂いが」
ヤバい。綾人みたいに鼻の良い奴が、よりにもよって、こんなガタイの奴で居たなんて。逃げないと。
横をすり抜けてトイレの出口にダッシュしようとした俺の二の腕を、ナベが痛いほどの力で掴み上げる。
「イッ……」
「逃がさないよ。逃げたら、お前がΩだって、警察に突き出すぜ?」
絶望が、目の前を赤く染めるようだった。
今出たばかりの個室の中に押し込められ、鍵がかけられる。
蓋の上に尻餅をついた俺をそのままに、ナベは目を血走らせてスラックスの前を寛げた。
「しゃぶれよ。一回イってから、たっぷり雌孔(めすあな)にぶち込んでやるから」
「う……」
反射的に顔を背けると、期待に緩く勃ち上がった雄の器官が頬に押し付けられた。
生臭さに、吐き気がする。
「何だよ、ひょっとして銜えた事ないのか? 処女かよ?」
ナベは、朗らかだった出会いが嘘みたいに、上唇をめくり上げて嗤(わら)った。
俺は、つくづく『Ωである俺』が嫌になる。
綾人も、ナベも、フェロモンに当てられてるんだ。
この世の何処かにカミサマって奴が居るんなら、何でΩなんて作ったんだろう。
また、涙が溢れてきた。
「おいおい……泣くなよ。レイプしてるみたいじゃんか。同意の上で、お互いキモチヨクなろうぜ? じゃあ、しゃぶらなくて良いから、ズボン下ろせよ」
俺は、今上げたばかりのスラックスを、泣きながら膝まで下ろした。
「パンツも」
言う通りにするほか、俺には選択肢がなかった。すっかり縮こまった分身が、ナベの目に晒される。
「何だよ、今までサカってたくせに、俺じゃ不服かよ? まあ、処女なら、仕方ないか。すぐにヒイヒイ言わせてやるよ」
「ヒッ」
ナベのゴツゴツした拳が、俺の分身を握る。テクニックも何もなく、若さに任せて強く扱かれた。
「あっ・う・う」
俺は両手で口元を覆って、声を耐える。心では拒むのに、発情期の熱は発散したくて、すぐに芯を持ち始める。
イきたくない。こんな奴の手で。
そう思うのに、分身はどんどん硬度を持って反り返る。
「や・やだ・イくっ」
「イけよ。一回イったら、止まんなくなるぜ」
相変わらず、ナベの目の焦点は合ってない。
「あ・アッ・んぁあっ……!!」
初めて他人の手でもたらされる快楽に、目の奥がチカチカする。瞬間的には気持ち良かったけど、後味は最悪だった。
嫌悪感に、額にじっとりと脂汗が浮く。
ナベは俺の放った精液を大きな手の中に握り込んで、カラカラとトイレットペーパーを巻き取って拭っていた。
「はは。凄いな。自分でヤってたから、もう雌孔がびしょびしょだぜ。今、突っ込んでやるからな」
太ももに手がかかったと思ったら、トイレの天井が見えた。後ろに、硬くて熱い楔が宛がわれる。
「や……嫌だ!」
瞬間、我を忘れて、俺は抗った。初めてを、こんな奴に奪われるなんて。
「綾人!!」
「馬鹿、大声出すな。Ωだってバレて困るのは、お前だろ」
焦ったように、ナベの片手が俺の口を塞ぐ。だけど鼻も口もいっぺんに塞ぐものだから、俺は苦しくて余計に暴れる。
やがて、トイレの入り口が開く音がした。
助けて!!
塞がれてて声は殆ど出なかったけど、俺は力一杯個室のドアを蹴った。
「何をやっている?」
綾人!
「な、何でもないです。プロレスごっこ……」
思い切り、ナベの親指の付け根を噛んだ。
「イテッ!」
「綾人! 助けて!!」
「四季!? 開けろ! 開けないとぶち破るぞ!!」
凄い剣幕の声がして、言葉通り、ドアが蹴り破られる音がした。
――ミシッ。バキッ。
そんな音がしたと思ったら、個室のドアが、蝶番の方から力任せに引き千切られた。
綾人の怒気をはらんだ顔が覗く。
その瞬間、安心というより戦慄した。
綾人、怒ってる。そうだよな……幾ら同意の元じゃないとはいえ、たった今『好き』って思った奴が、他の男に股開いてんだから。
ナベの胸倉を掴み上げて、綾人が殴ってる。
駄目だ、綾人。あんたの右ストレート、重過ぎだ。ナベが死んだら、あんたが罪に問われるよ。俺の為に、あんたが損する事はない。
そんな事を思いながら、気が抜けて、俺は失神するように意識を失った。
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