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第24話 幸せ
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他の家人に気取られないよう、お勤めの前の決まり事、口をすすぎ手を洗ったり、黒髪に櫛を通したりする事は叶わなかった。
ただ政臣さんに、嘘を吐いている事を知られたくない一心で、十分を過ごす。
僕が『珠樹』だって知ったら、本物の『充樹』の所に行ってしまうかもしれない。
はしたない事をするのかと思うと、心が傷付いて血が滲んだけれど、僕は厠に向かって歩き出した。
厠はひと気のない、東の角にあった。
木枠の部屋に居た時は、中に厠もあったけれど、充樹の部屋にはないのが弱みになるとは思わなかった。
『使用中』になっている厠の扉をそっと叩く。
「笹川さん。みつ……珠樹です」
無言で扉が開いて、乱暴に奥に押し込められる。
何も知らない頃の僕だったら、そんな荒々しさも好みだと思ったかもしれないし、実際、充樹としての僕に親切にしてくれた笹川さんを、良い人だと思っていた。
西洋式厠の蓋の上に手を着いて身体を支える僕の後ろから腰に手が回って、袴の紐が解かれる。
小袖を捲られて、下半身が剥き出しになった。
「あっ!」
かと思ったら、慣らしも濡らしもせずに、いきなり硬い肉棒が挿入(はい)ってきた。
力の抜けていたそこは、つるりと飲み込んだけれど、文字通り身を裂く激痛は後からやってきた。
「いっ、痛い、です、やめっ……」
僕の言葉を嘲笑って、笹川さんは動き出す。脂ぎった口調は、参拝者様みたいだった。
「痛い? 予備様でも、痛いなんて事があるのか? 四六時中、銜え込んでいるくせに」
まるで、お勤めが悪い事みたいな言い方をする。
お勤めは神聖な儀式。何でそんな事を言うのだろう。僕も参拝者様も、心地良くなれるのに。
「いっ・あっあ・はぁっ」
痛みもあったけれど、快感の方が勝ってくる。
このぬめる感触は、きっと孔から出血してるんだ。幼い頃、解し足りなくて何度かあった感触だった。
「ふふ、やっぱり淫乱だな。充樹様がお勤めを望まれるなんて、おかしいと思ったんだ。予備様なら、納得がいく。もう、お勤めなしじゃいられない身体なんだろう?」
「あぁ・善いっ」
神聖な儀式を中断する訳にいかない僕は、痛みすらも快感にすり替えて、やり過ごしてきた。
だから思わず、口を突く。
「善いか? 本当に、充樹様と声までそっくりだな……顔を見せろ」
抜け落ちそうなほど強く後ろ髪が引かれたけれど、そんな角度に首は曲がらない!
「離し・てっ」
僕は悲鳴を上げその手を振り払って、蓋の上に頬を着いて横顔を見せた。
その瞬間、中の質量がぐんと増す。
「あ・っあん」
「充樹様……お慕い申し上げております」
揺さぶられながらも、頭の中は何だかとても冷静だった。
笹川さんは、充樹が好きなんだ。僕が、政臣さんの事が大好きなように。
僕も、政臣さんの事を想うと、お勤めしたくなる。笹川さんも、充樹とお勤めしたいんだ。
だけど充樹は今まで誰ともお勤めしてこなかったし、病いで病院に行ったから、僕を代わりにしてるんだろう。
代わりを見付けなくてはやりきれないほどの愛なんて、きっと凄く深い。
もし充樹が元気になって、先代が許してくれたら、充樹と笹川さんも結婚して欲しい。
そこまで考えた所で、思考は途切れた。
後ろから掌が伸びて分身を握られ、腰の動きと合わせて躍動的に扱かれ始めたからだ。
「あ・あ、達して、しまいますっ」
「私もイきます、充樹様……くっ」
抉るように突き上げられて、僕は大きく喘ぐ。
「も・もうっ……あ・ん――っ!!」
「充樹……っ!!」
僕が達した一瞬後、中が、熱く熱く満たされた。
笹川さんは、その想いをどれくらい秘めてきたのだろう。
大量に出て直腸に収まりきらず、抜く時に内股を、精液と血液と腸液が伝う。
「はぁ……」
僕はそれを清めようと、巻紙(といれっとぺーぱー)に手を伸ばした。
だけどその手は笹川さんに取られて、ぐいと引かれて、抱き締められた。
「充樹様……愛しています」
ああ、やっぱりだ。僕ばかりが幸せになって良い筈ない。
笹川さんと充樹も、幸せになって欲しかった。
ただ政臣さんに、嘘を吐いている事を知られたくない一心で、十分を過ごす。
僕が『珠樹』だって知ったら、本物の『充樹』の所に行ってしまうかもしれない。
はしたない事をするのかと思うと、心が傷付いて血が滲んだけれど、僕は厠に向かって歩き出した。
厠はひと気のない、東の角にあった。
木枠の部屋に居た時は、中に厠もあったけれど、充樹の部屋にはないのが弱みになるとは思わなかった。
『使用中』になっている厠の扉をそっと叩く。
「笹川さん。みつ……珠樹です」
無言で扉が開いて、乱暴に奥に押し込められる。
何も知らない頃の僕だったら、そんな荒々しさも好みだと思ったかもしれないし、実際、充樹としての僕に親切にしてくれた笹川さんを、良い人だと思っていた。
西洋式厠の蓋の上に手を着いて身体を支える僕の後ろから腰に手が回って、袴の紐が解かれる。
小袖を捲られて、下半身が剥き出しになった。
「あっ!」
かと思ったら、慣らしも濡らしもせずに、いきなり硬い肉棒が挿入(はい)ってきた。
力の抜けていたそこは、つるりと飲み込んだけれど、文字通り身を裂く激痛は後からやってきた。
「いっ、痛い、です、やめっ……」
僕の言葉を嘲笑って、笹川さんは動き出す。脂ぎった口調は、参拝者様みたいだった。
「痛い? 予備様でも、痛いなんて事があるのか? 四六時中、銜え込んでいるくせに」
まるで、お勤めが悪い事みたいな言い方をする。
お勤めは神聖な儀式。何でそんな事を言うのだろう。僕も参拝者様も、心地良くなれるのに。
「いっ・あっあ・はぁっ」
痛みもあったけれど、快感の方が勝ってくる。
このぬめる感触は、きっと孔から出血してるんだ。幼い頃、解し足りなくて何度かあった感触だった。
「ふふ、やっぱり淫乱だな。充樹様がお勤めを望まれるなんて、おかしいと思ったんだ。予備様なら、納得がいく。もう、お勤めなしじゃいられない身体なんだろう?」
「あぁ・善いっ」
神聖な儀式を中断する訳にいかない僕は、痛みすらも快感にすり替えて、やり過ごしてきた。
だから思わず、口を突く。
「善いか? 本当に、充樹様と声までそっくりだな……顔を見せろ」
抜け落ちそうなほど強く後ろ髪が引かれたけれど、そんな角度に首は曲がらない!
「離し・てっ」
僕は悲鳴を上げその手を振り払って、蓋の上に頬を着いて横顔を見せた。
その瞬間、中の質量がぐんと増す。
「あ・っあん」
「充樹様……お慕い申し上げております」
揺さぶられながらも、頭の中は何だかとても冷静だった。
笹川さんは、充樹が好きなんだ。僕が、政臣さんの事が大好きなように。
僕も、政臣さんの事を想うと、お勤めしたくなる。笹川さんも、充樹とお勤めしたいんだ。
だけど充樹は今まで誰ともお勤めしてこなかったし、病いで病院に行ったから、僕を代わりにしてるんだろう。
代わりを見付けなくてはやりきれないほどの愛なんて、きっと凄く深い。
もし充樹が元気になって、先代が許してくれたら、充樹と笹川さんも結婚して欲しい。
そこまで考えた所で、思考は途切れた。
後ろから掌が伸びて分身を握られ、腰の動きと合わせて躍動的に扱かれ始めたからだ。
「あ・あ、達して、しまいますっ」
「私もイきます、充樹様……くっ」
抉るように突き上げられて、僕は大きく喘ぐ。
「も・もうっ……あ・ん――っ!!」
「充樹……っ!!」
僕が達した一瞬後、中が、熱く熱く満たされた。
笹川さんは、その想いをどれくらい秘めてきたのだろう。
大量に出て直腸に収まりきらず、抜く時に内股を、精液と血液と腸液が伝う。
「はぁ……」
僕はそれを清めようと、巻紙(といれっとぺーぱー)に手を伸ばした。
だけどその手は笹川さんに取られて、ぐいと引かれて、抱き締められた。
「充樹様……愛しています」
ああ、やっぱりだ。僕ばかりが幸せになって良い筈ない。
笹川さんと充樹も、幸せになって欲しかった。
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