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第8話 張型
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いつもの決まり事、前室で口をすすぎ手を洗って、肩にかかる長い黒髪に櫛を通す。
すると、一番近くに控えていた家人が、声をかけてきた。
「充樹様。大丈夫でございますか?」
「えっ」
どういう意味だろう。今まで、用事がある時以外に家人から声をかけられた事のない僕は、手を止めてまじまじとその顔を見る。
鷲鼻で三十代くらいの、見た事のない顔だった。
「はい、大丈夫です」
「予備様が、お勤め出来なくなったと聞きました。何も充樹様が引き継がずとも、よろしいのでは」
そうか。先代から、お勤めは僕だけが出来る神聖な儀式だって聞いている。『充樹』には荷が重いんじゃないかっていう、心配か。
「貴方、名前は」
「は。笹川(ささがわ)でございます」
「ありがとう、笹川さん。わたくしは、大丈夫です」
にっこり微笑むと、笹川さんはちょっと頬を赤らめた。
参拝者様みたいな反応だな。充樹は、家人とも普通に口をきくんだ。覚えておこう。
三つ指を着いて、お勤めの間に声をかけた。
「参拝者様。お待たせ致しました。皇城充樹にございます」
* * *
僕は、西洋式厠で吐いていた。
間食なんてするんじゃなかった。消化されないままの蜜柑が、丸ごと出てくる。
水を流して、唇を拭う。
今日の参拝者様は、僕の口をお使いになった。喉奥まで突かれて、精液を飲まされた。
僕の聖液を飲めば御利益が、参拝者様の精液を飲めばご祈願が出来るという。
でも僕は達してないし挿れられもしなかったから、奥が引きつれるように疼いて我慢出来ない。
袴を解くと、足元に白い布がわだかまる。
いつも小袖の袂(たもと)に入れている、張型(はりがた)を取り出す。男性器を精巧に模したそれを銜えて濡らすと、蓋の上で脚を上げて後ろの孔に埋めていった。
「は……んっ」
孔は自ら迎え入れるようにして、ぜん動する。
幼い頃からお勤めに励んできた僕のそこは、ちょっとした刺激でぱくりと口を開く。
参拝者様の分身を口内に入れただけで、もう準備は万全だった。
「あっ・はっ・善いっ」
ずぽずぽと大胆に、出し入れする。
最近はあまり、挿れる参拝者様自体が少なくなって、僕のそこはご奉仕したいとひくついていた。
前を弄らずとも、後ろだけで達せる僕は、ひたすら激しく注挿する。
「あっ・ひ・達します……!」
脈打って揺れる分身が、薄い腹筋に当たってぺちぺちと小さな音を立てる。
その瞬間、脳裏に面影が弾けた。
「政臣、さっ……ん――……!!」
聖液が、空しくお腹の上に散る。誰の口にも入らなければ、聖液もただの精液だ。
僕はぜいぜいと肩を喘がせて、収縮する内部に合わせて、何回かゆっくりと張型を前後した。
「はぁ……」
何故だか、きつく瞑った瞼の裏に、政臣さんの涼しげな奥二重や、優しい笑みが揺れる。
何でだろう。先代が、お勤めは政臣さんだけにしなさいって言った事と、関係あるのかな。
でもお勤めの喜びをほぼ毎日、何回も味わっていた僕は、三日もお勤めなしなんて、身体が疼いて耐えられない。
「政臣さん……」
僕は呟き、三日後の逢瀬を思い描いて、もう一度張型を注挿し始めた。
すると、一番近くに控えていた家人が、声をかけてきた。
「充樹様。大丈夫でございますか?」
「えっ」
どういう意味だろう。今まで、用事がある時以外に家人から声をかけられた事のない僕は、手を止めてまじまじとその顔を見る。
鷲鼻で三十代くらいの、見た事のない顔だった。
「はい、大丈夫です」
「予備様が、お勤め出来なくなったと聞きました。何も充樹様が引き継がずとも、よろしいのでは」
そうか。先代から、お勤めは僕だけが出来る神聖な儀式だって聞いている。『充樹』には荷が重いんじゃないかっていう、心配か。
「貴方、名前は」
「は。笹川(ささがわ)でございます」
「ありがとう、笹川さん。わたくしは、大丈夫です」
にっこり微笑むと、笹川さんはちょっと頬を赤らめた。
参拝者様みたいな反応だな。充樹は、家人とも普通に口をきくんだ。覚えておこう。
三つ指を着いて、お勤めの間に声をかけた。
「参拝者様。お待たせ致しました。皇城充樹にございます」
* * *
僕は、西洋式厠で吐いていた。
間食なんてするんじゃなかった。消化されないままの蜜柑が、丸ごと出てくる。
水を流して、唇を拭う。
今日の参拝者様は、僕の口をお使いになった。喉奥まで突かれて、精液を飲まされた。
僕の聖液を飲めば御利益が、参拝者様の精液を飲めばご祈願が出来るという。
でも僕は達してないし挿れられもしなかったから、奥が引きつれるように疼いて我慢出来ない。
袴を解くと、足元に白い布がわだかまる。
いつも小袖の袂(たもと)に入れている、張型(はりがた)を取り出す。男性器を精巧に模したそれを銜えて濡らすと、蓋の上で脚を上げて後ろの孔に埋めていった。
「は……んっ」
孔は自ら迎え入れるようにして、ぜん動する。
幼い頃からお勤めに励んできた僕のそこは、ちょっとした刺激でぱくりと口を開く。
参拝者様の分身を口内に入れただけで、もう準備は万全だった。
「あっ・はっ・善いっ」
ずぽずぽと大胆に、出し入れする。
最近はあまり、挿れる参拝者様自体が少なくなって、僕のそこはご奉仕したいとひくついていた。
前を弄らずとも、後ろだけで達せる僕は、ひたすら激しく注挿する。
「あっ・ひ・達します……!」
脈打って揺れる分身が、薄い腹筋に当たってぺちぺちと小さな音を立てる。
その瞬間、脳裏に面影が弾けた。
「政臣、さっ……ん――……!!」
聖液が、空しくお腹の上に散る。誰の口にも入らなければ、聖液もただの精液だ。
僕はぜいぜいと肩を喘がせて、収縮する内部に合わせて、何回かゆっくりと張型を前後した。
「はぁ……」
何故だか、きつく瞑った瞼の裏に、政臣さんの涼しげな奥二重や、優しい笑みが揺れる。
何でだろう。先代が、お勤めは政臣さんだけにしなさいって言った事と、関係あるのかな。
でもお勤めの喜びをほぼ毎日、何回も味わっていた僕は、三日もお勤めなしなんて、身体が疼いて耐えられない。
「政臣さん……」
僕は呟き、三日後の逢瀬を思い描いて、もう一度張型を注挿し始めた。
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