27 / 35
林の中での攻防戦
3 林の変化
しおりを挟む
この湧き水?ぬるま湯?は飲めるようで、私は喉を潤した。
クルトさんが、先程呼ばれた時にヨハンと二人で確認したそうだ。
「水ならいつでもクルトさんが、出せそうなのに……」
そんな疑問を私が言うと、クルトさんは苦笑混じりに答えてくれた。
「何があるか分からんからな。傭兵は外での飲み水確保の為、可否が舌で出来るように訓練するもんだ。非常事態では、出来るだけ魔力は温存しておきたいからな」
そんな会話をして、息抜きが出来たところで戻ることにしたのだが私には大変だった。
クルトさんが行きの際に言ったように、足場が悪いのだ。
滑りそうになりながらも、慎重に歩いた。
「おい、転けるなよ。危なっかしいなぁ、次よろめいたら担ぐからな」
などと言われながらも、最後まで歩いて皆のいる所まで戻ってきた。
「カーリ、転ばなかったか?」
ニヤニヤしながら聞いてくるベンの足を、ふらついた振りして踏んでやった。ふんっ!
「クルトさん、これからどうする?」
ヨハンが尋ねると、クルトさんが唸りながら意見を言っていた。
「何かいつもより地面が水っぽいんだよな……この辺りは延焼を免れているとはいえ、何らかの変化が起きてるみたいだ」
「クルトさんもそう思うんだな。変に蒸し暑くなっているし、火が出ただけの変化なのか、どうなのか……」
「それに、この辺りの小さな獣は、慌てていない感じがするのよ。火がまだ回っていないからなのか、何かがあるのかしら」
クルトさんとヨハン、レーナが岩壁の陰で意見を出し合っている。
私とベンは、それを大人しく聞いていた。
私は林の中に入った事は、あまりなかった。
ベンもここに来て間がないので、二人とも変化があると言われても分からないのだ。
そんな中、ふと呼ばれている気がした。
振り返ってみると、林の風景が一変していたのだ。
「え?何これ……ベン、林が変な事になってる」
私は隣にいるベンに呼びかけ、ベンも振り返った。
「!?すげーな、これ」
熱心に話し合っている三人は、気付いていない様だった。
「クルトさん、レーナ、ヨハン見て~!」
先程見た間欠泉なんて目じゃない程の吹き出す水は、さながら消防車のホースの水の様。
あちらもこちらも、林の木よりも高い水が溢れだしている。
あの吹き出す水の中には、消火剤でも入っているのだろうか?
あれだけ勢いのあった炎が、自然と消えていった。
火が消えると、水の勢いも収まった様で見えなくなる。
焼け跡は酷く未だ煙はあるが、本来の林の姿を取り戻しはじめていた。
私達はただただ、自然の力に圧倒されていた。
「……林の慈悲だな」
ポツリとクルトさんが呟いた。
林の慈悲とは、言い得て妙な感じだ。
でも、もっと早く力を発揮してくれたら……なんて思うのはとても贅沢な事なんだろうなぁ。
「慈悲の神様って、凄いんだね」
私の何気ない言葉は、不思議な沈黙をうんだ。
クルトさんは、凄い苦い顔をしている。
レーナとヨハンは、ため息をついていた。
ベンは「何言ってんだコイツ」と思っているのが、如実に顔に出ている。
私は、何か変な事を言っただろうか?と首を捻った。
「カーリって、本当に神様関係ってだめなのね。この世界に慈悲の神様なんていないわ。勝手に神様増やしたら教会に怒られるわよ」
本当に困った子ね、とレーナが苦笑混じりに笑った。
…………こけしもどきな女神が、愛と慈悲と豊穣を司っていたから、てっきり慈悲の神様もいると思っただけなのよ~。
クルトさんが、先程呼ばれた時にヨハンと二人で確認したそうだ。
「水ならいつでもクルトさんが、出せそうなのに……」
そんな疑問を私が言うと、クルトさんは苦笑混じりに答えてくれた。
「何があるか分からんからな。傭兵は外での飲み水確保の為、可否が舌で出来るように訓練するもんだ。非常事態では、出来るだけ魔力は温存しておきたいからな」
そんな会話をして、息抜きが出来たところで戻ることにしたのだが私には大変だった。
クルトさんが行きの際に言ったように、足場が悪いのだ。
滑りそうになりながらも、慎重に歩いた。
「おい、転けるなよ。危なっかしいなぁ、次よろめいたら担ぐからな」
などと言われながらも、最後まで歩いて皆のいる所まで戻ってきた。
「カーリ、転ばなかったか?」
ニヤニヤしながら聞いてくるベンの足を、ふらついた振りして踏んでやった。ふんっ!
「クルトさん、これからどうする?」
ヨハンが尋ねると、クルトさんが唸りながら意見を言っていた。
「何かいつもより地面が水っぽいんだよな……この辺りは延焼を免れているとはいえ、何らかの変化が起きてるみたいだ」
「クルトさんもそう思うんだな。変に蒸し暑くなっているし、火が出ただけの変化なのか、どうなのか……」
「それに、この辺りの小さな獣は、慌てていない感じがするのよ。火がまだ回っていないからなのか、何かがあるのかしら」
クルトさんとヨハン、レーナが岩壁の陰で意見を出し合っている。
私とベンは、それを大人しく聞いていた。
私は林の中に入った事は、あまりなかった。
ベンもここに来て間がないので、二人とも変化があると言われても分からないのだ。
そんな中、ふと呼ばれている気がした。
振り返ってみると、林の風景が一変していたのだ。
「え?何これ……ベン、林が変な事になってる」
私は隣にいるベンに呼びかけ、ベンも振り返った。
「!?すげーな、これ」
熱心に話し合っている三人は、気付いていない様だった。
「クルトさん、レーナ、ヨハン見て~!」
先程見た間欠泉なんて目じゃない程の吹き出す水は、さながら消防車のホースの水の様。
あちらもこちらも、林の木よりも高い水が溢れだしている。
あの吹き出す水の中には、消火剤でも入っているのだろうか?
あれだけ勢いのあった炎が、自然と消えていった。
火が消えると、水の勢いも収まった様で見えなくなる。
焼け跡は酷く未だ煙はあるが、本来の林の姿を取り戻しはじめていた。
私達はただただ、自然の力に圧倒されていた。
「……林の慈悲だな」
ポツリとクルトさんが呟いた。
林の慈悲とは、言い得て妙な感じだ。
でも、もっと早く力を発揮してくれたら……なんて思うのはとても贅沢な事なんだろうなぁ。
「慈悲の神様って、凄いんだね」
私の何気ない言葉は、不思議な沈黙をうんだ。
クルトさんは、凄い苦い顔をしている。
レーナとヨハンは、ため息をついていた。
ベンは「何言ってんだコイツ」と思っているのが、如実に顔に出ている。
私は、何か変な事を言っただろうか?と首を捻った。
「カーリって、本当に神様関係ってだめなのね。この世界に慈悲の神様なんていないわ。勝手に神様増やしたら教会に怒られるわよ」
本当に困った子ね、とレーナが苦笑混じりに笑った。
…………こけしもどきな女神が、愛と慈悲と豊穣を司っていたから、てっきり慈悲の神様もいると思っただけなのよ~。
0
お気に入りに追加
1,310
あなたにおすすめの小説
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
聖女として全力を尽くしてまいりました。しかし、好色王子に婚約破棄された挙句に国を追放されました。国がどうなるか分かっていますか?
宮城 晟峰
ファンタジー
代々、受け継がれてきた聖女の力。
それは、神との誓約のもと、決して誰にも漏らしてはいけない秘密だった。
そんな事とは知らないバカな王子に、聖女アティアは追放されてしまう。
アティアは葛藤の中、国を去り、不毛の地と言われた隣国を豊穣な地へと変えていく。
その話を聞きつけ、王子、もといい王となっていた青年は、彼女のもとを訪れるのだが……。
※完結いたしました。お読みいただきありがとうございました。
「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。
亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません!
いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。
突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。
里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。
そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。
三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。
だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。
とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。
いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。
町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。
落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。
そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。
すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。
ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。
姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。
そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった……
これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。
※ざまぁまで時間かかります。
ファンタジー部門ランキング一位
HOTランキング 一位
総合ランキング一位
ありがとうございます!
無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物
ゆうぎり
ファンタジー
私リディアーヌの不幸は双子の姉として生まれてしまった事だろう。
妹のマリアーヌは王太子の婚約者。
我が公爵家は妹を中心に回る。
何をするにも妹優先。
勿論淑女教育も勉強も魔術もだ。
そして、面倒事は全て私に回ってくる。
勉強も魔術も課題の提出は全て代わりに私が片付けた。
両親に訴えても、将来公爵家を継ぎ妹を支える立場だと聞き入れて貰えない。
気がつけば私は勉強に関してだけは、王太子妃教育も次期公爵家教育も修了していた。
そう勉強だけは……
魔術の実技に関しては無能扱い。
この魔術に頼っている国では私は何をしても無能扱いだった。
だから突然罪を着せられ国を追放された時には喜んで従った。
さあ、どこに行こうか。
※ゆるゆる設定です。
※2021.9.9 HOTランキング入りしました。ありがとうございます。
収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~
SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。
物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。
4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。
そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。
現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。
異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。
けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて……
お読みいただきありがとうございます。
のんびり不定期更新です。
魔力無しの私に何の御用ですか?〜戦場から命懸けで帰ってきたけど妹に婚約者を取られたのでサポートはもう辞めます〜
まつおいおり
恋愛
妹が嫌がったので代わりに戦場へと駆り出された私、コヨミ・ヴァーミリオン………何年も家族や婚約者に仕送りを続けて、やっと戦争が終わって家に帰ったら、妹と婚約者が男女の営みをしていた、開き直った婚約者と妹は主人公を散々煽り散らした後に婚約破棄をする…………ああ、そうか、ならこっちも貴女のサポートなんかやめてやる、彼女は呟く……今まで義妹が順風満帆に来れたのは主人公のおかげだった、義父母に頼まれ、彼女のサポートをして、学院での授業や実技の評価を底上げしていたが、ここまで鬼畜な義妹のために動くなんてなんて冗談じゃない……後々そのことに気づく義妹と婚約者だが、時すでに遅い、彼女達を許すことはない………徐々に落ちぶれていく義妹と元婚約者………主人公は
主人公で王子様、獣人、様々な男はおろか女も惚れていく………ひょんな事から一度は魔力がない事で落されたグランフィリア学院に入学し、自分と同じような境遇の人達と出会い、助けていき、ざまぁしていく、やられっぱなしはされるのもみるのも嫌だ、最強女軍人の無自覚逆ハーレムドタバタラブコメディここに開幕。
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる