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街の外

閑話 我が国は不滅なのだ1

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―――アードルフィオ国第二王子ファービリアン視点

 私は今、モーイッツ辺境伯領の一都市セーツの街近くにある林の前で、不届き者を成敗した。

 醜い断末魔の叫びは、私の耳を汚す。
 愚か者は、うるさくてかなわん。

 ふと目線を上げると、遠くで茶色の髪の女と目が合った気がした。
 なんだ?何かの違和感が体を通り過ぎるも、この不快なものの後始末の方に気がいった。

「アールン、これを片付けよ。林での混乱を起こした不届き者として、街にも触れを出せ」
「はっ畏まりました、ファービリアン殿下」

 側近のアールンの返事を聞きながら、知らず林の方に視線がいっていた。

「殿下が気にしていらっしゃる者は、追わなくてよろしいので?」
「私は何か気にしていたか?」
「はい、林の中に逃げ込む者が。これらの仲間でしょうか。五人おりましたが、すぐに捕まえましょう」

 私は思ったより、林を凝視していたようだ。

「いい、捨て置け。あの様な女など別によい」
「女、でございますか?私は男の方が気になりました。鑑定でステータスを見ようとしましたが、撥ね付けられましたから。かなりの高魔法を使う者かと」

 男?そういえば女は背負われていたが、子供なのか。

「後、先遣隊の処分はどう致しましょう」

 私を喜ばす為、先走った隊員達だ。
 ここは王族として、寛大な所を見せよう。
 怪我や火傷をした者もいることだしな。
 こちらに合流して、すぐ治療班が対処したから大事には至っていないが、さて……。

「……そうだな。セーツの街に着いたら歓楽街への出入りを禁止としよう」
「それは楽しみにしていた隊員達には、こたえるでしょうな」

 そんな話をしながらも、気がつくと視線は林の中をさまよっていた。
 アールンは、各隊長達に色々と指示を出している間も私を気にしていたようだった。



 この国では、殺しは豊穣の神が嘆くといわれ本来禁忌だが、王族は別だ。
 神々に、特に豊穣の神に愛された国である我が国アードルフィオ国。
 長年その頂点である王族は最早神の代弁者、申し子なのだ。

 王都にある大神殿は、神殿の者こそ神の代弁者だと言う。
 しかし、その代表である大神官は神殿で選ぶが最後に承諾するのは王ではないか。
 王が承諾しなければ、国の予算も下りぬからな。

 ただ王族とはいえ、神の代弁者とはいえ今はこの世界にいる。
 神には前もって、赦しを頂かなければならない。

 私達王族はこの旅で何が起こるか分からないと考えた。
 今回の事は本当に不測の事態なのだ。

 今までこの様に幾人もの王族が、一度に王都を離れる事などなかったからな。
 その為に、神に捧げる儀式を念入りに済ませてきたのだ。
 これで私が率いる部隊も、私が赦せば裁きを下せる。

 元はと言えば、力のない大神官が神からの言葉を聞いたと言うから、この様な事態になるのだ。
 中途半端に聞き、肝心の豊穣の賢女様の出現場所が分からないなどありえないだろう。




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