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26 閑話 対決前―セバス

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 私の家は古くから代々タリ・テスイール侯爵家にお仕えして参りました。
 私も当然の様に思い、教育を受けお仕え致しました。

 先々代が宰相を勤められた初期当時、私も王城へ参りました。
 その後は王都の屋敷を任され、今は領地の屋敷を任されております。



 明日からタリ・タスチーヌ侯爵家へ向かう夜の事です。
 数日馬車での移動となりますが、到着日を決めている為遅れる事は許されません。
 近隣他家には根回ししており、遅れますと迷惑どころか信用問題に関わります。

 マリナリアお嬢様も最後の確認をされています。
 そして、ご両親の結婚書類を見ながら私に問いかけられました。


『万が一、タリ・タスチーヌ侯爵家当主レイナードとタリ・テスイール侯爵当主マーリエとの間に生まれた子供以外を次の跡継ぎにした場合、この契約は無効となり互いの家から除名とする』

「セバス、この『除名』なのだけど、もし両家に生まれた者の出来が悪く、お母様が何処かから優秀な人を連れてきた場合、跡取りから外れた者は両家から除名されるとも取れるのだけど」

「……当家には無能は必要ないと言う事ですから」

 先々代は逆らえない王命でも次の手は隠し持っておられました。

「そして、タリ・タスチーヌ侯爵家を切り捨てるということね」
「あちらが両家の子を跡取りと据えてもテスイールには関係なくなりますから」

「……据えられないわよ。いぇ新たに養子縁組すれば大丈夫かしら。その時の状況次第ね。サリーニアは私とは養子縁組しなかったから、この条文には当てはまらないもので……」

 色々と思考を巡らせておられます。
 テスイールなら幾つもの方策を考え、最適解を導かなければなりません。

 ずっとタリ・テスイール家の行いは『支援の人』『影の実力者』『下支えの一族』『名よりも実をとる者達』と称えられてきたのですから。


「はぁー。私はお母様が亡くなるまでしっかり教育されたけれど、同時に見極められていたのね」

「タリ・タスチーヌ侯爵とのお血筋がまともな子に育つ可能性は半分以下と思われました。先々代も先代もマリナリアお嬢様がお生まれになり、すくすくとお育ちになる様子を見られ、安堵なさっておりましたよ」

「よくこの結婚を受け入れたわね」
「王命でございましたから」
「お爺様なら回避出来そうだけど」

「お考えがあってのこと。しかし、あそこ迄愚かだとは思われなかったようです。お嬢様の結婚前は後悔なさっておられました。婚約から結婚まで期間が空いた・・・・・・のですが、取りやめる事も出来ませんでした」

 この読み違いは、先々代が亡くなる時も「唯一の汚点」だと申されておりました。私も深く同意致します。

「特にマーリエお嬢様は『私はこの子を一人で作ったの。だから私は奥様ではないのよ。これからもずっとお嬢様と呼びなさい』と申されました。以後私はその様にしております」

「ふふ、では私がお父様の事を聞いた時は焦ったりしたのかしら」
「そうですね。マリナリアお嬢様には見えない所で毒をはらんだ言葉が飛んでおりました」

 私は懐かしく思いながら、当時の事をマリナリアお嬢様にお聞かせ致しました。




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