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15 結婚式を挙げよう―ロンドリオ
しおりを挟む「ロンド様ぁ」
王都にある小さな家で、朝早くから美しく着飾ったサリーニアが涙を溜めて俺に訴えてきた。
ここはサリーニアの育った家だそうだ。
可哀想に、こんな小さな家での暮らしはさぞ辛かった事だろう。
マリナリアはこんなところにサリーニアを押し込めていたなど、卑しい心が現れているな。
「異母姉様が、私を辱める為にこの様な仕打ちをなさるのです。……私は、私は悲しいです。辛いです。ロンド様と幸せになりたいだけなのに……」
今にも零れそうな涙を堪え、サリーニアが可愛い事を言ってくれる。
ここは、頼れる俺を見せるところだろう。
「サリーニア、任せろ。皆に美しい姿を見せてやろう」
『本日、サリーニアと挙式します。教会を空ける様に手配してください』
俺にしては丁寧に書いた手紙を急ぎ父上と母上に届けさせ、その場で返事を貰えるように命令して侍従を送り出した。
それと俺をとても可愛がってくれる公爵には両親に書いた内容と、穴場の教会を知っていたら教えて欲しい旨書いた。
サリーニアには選ばせたいからな。
暫くして母上からの返事が返ってきた。
『本日はどこの教会も空いていないので、別の日にしなさい。私達も忙しいのですよ』という簡単な内容が、長々とやたら難しく書いてある手紙だった。
解読するのに時間を浪費させるなど、母上の侍女は教育がなってないぞ。
父上からはいくら待っても返事が返って来ない。
父上は忙しい人だから、届いていないのかもしれない。
俺達はマリナリアの仕打ちに屈するしかないのか?
「異母姉様は余程私達が幸せになるのが悔しいのですわ。この様な事をなさるなんて」
「おのれマリナリアめ、陰湿にも程がある」
「あれを娘など考えたくない」
「そうよ、マリナリアはいつも私達を蔑んでいるのよ。継母として卑しい娘など恥でしかないですわ」
そんなところへ公爵が来てくれた。
「ロンドリオ殿下、私に頼って頂けるならどのようにでも力になりましょう」
俺は今困っていることや、マリナリアの事を話すと公爵は俺達の力になってくれるという。
「なんと、マリナリアの陰謀ですと?可哀想なロンドリオ殿下。私に心当たりがあります、急いで向かいましょう」
公爵に連れて来られた教会は王都で三番目の規模のところだった。
「ここは、規模は劣りますが内装が素晴らしく女性にとても人気があるのですよ。今日の最後の挙式は両家とも当家の縁者でしてな。日を改めさせましょう」
「よろしく頼む。そういえば、マリナリアに邪魔されてな。参列者がいない」
「安心なさいませ、参列者は残しましょう。なに、私が言えば大丈夫ですよ。美しい花嫁を見れば皆喜びます」
それなら一安心だ。サリーニアより美しい花嫁などいない。俺は心が広いからな。参列者にもこの幸せを分けてやろう。
「ロンド様は頼りになる方をご存知なのですね。頼もしいです」
「サリーニアは幸せものね」
「はい、お母様」
「この様な息子を持てて私も嬉しいよ」
流石公爵は俺の忠実な臣下だ。すぐに挙式出来るそうだ。
公爵が連れてきた教会の進行役が、どのような式にするか聞いてきた。
「短くで頼む。長い式は退屈だ、サリーニアもそれでいいか?」
「ロンド様、それって意味のわからない眠くなる言葉を聞かなくて済むって事ですよね。大賛成です」
参列者の注目を集めながら、教会での式は進む。
希望通り簡潔な言葉の後、お互いの将来を誓いあった。
「参列者の拍手が少ないな」
「美しい過ぎる花嫁に皆見とれているのでしょう」
「公爵もそう思います?私の美しすぎる姿が罪なのですわ」
式が滞りなく終わった俺達は、バタンと無機質に閉まった扉の向こうで、何が行われていたかは知らない。
「さぁ、簡易な予行は終わりました。少し時間は押しましたが、これから素敵な式を始めましょう」
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