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3 もう一つの屋敷
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私は数日掛けて、タリ・タス・テス侯爵領にあるもう一つの屋敷に着きました。
四台の荷馬車にあちらにある私の荷物と私専属の従僕と侍女の荷物、護衛の荷物等を全部積んで来ましたから、移動に時間が掛かりました。
アンリとアンナには短時間での荷造りを頑張ってもらいました。お疲れ様、少しお休みをあげないといけませんわ。
馬にも無理をさせました。こうなるとわかっていましたら、事前に馬車の用意をしましたのにね。
「お帰りなさいませ、マリナリアお嬢様」
この屋敷を管理してくれている執事のセバスが出迎えてくれました。
そして、セバスに事のあらましを伝えました。
「セバス、そんなに力んで持っては懐中時計の鎖が歪んでしまいますわ。お爺様より頂いた大切なものなのでしょう?」
「申し訳ございません、お嬢様。年甲斐もなく……」
「セバスは本当にお父様がお嫌いなのね」
「仕方のない事でございます。私が幼少の頃より見て参りましたマーリエお嬢様を誑かし、使い潰した御方ですから」
ニコリと笑うセバスの笑顔が黒いですわ。
お母様はご病気になっても領地経営を行い、無理に無理を重ねて亡くなってしまいました。
タリ・タス・テス侯爵領にある川が大雨で氾濫してしまい陣頭指揮を執られたのですもの。
運が悪かったのもあったのでしょう。
お父様?あの方は王都へ避難して安全なところにいらっしゃったそうですよ。
幼い頃、お母様にお父様のどこがよかったのか聞いたことがありました。
お母様は一言で言いきられましたわ。
「顔よ」
……余程お好みだったのでしょうね。
お母様曰く、自分は領主としての力量を既に備えているので、相手は無能でも構わなかったそうです。
邪魔さえしなければいい、とのお考えだったそうですが、もう少し考えて欲しかったです。
お母様とお父様の結婚には、当時の陛下や当主達のご意向も絡んでいたそうですから、仕方がないところもあったのかも知れません。
当時のお父様がどうだったか知りませんが、今や立派な邪魔者に変身してしまいました。
お母様もご自分がこの様に早く亡くなるとは思わなかったのでしょうね。
人は成長するものです。いい意味でも悪い意味でも。
「セバス、陛下からの呼び出しがあるまで私はここでゆっくり過ごします」
「かしこまりました、ではお嬢様。お休みになる前にこちらの確認をお願いいたします」
久しぶりのセバスの美味しいお茶を頂きながら、私はゆったりとした気分で書類を手に取りました。
四台の荷馬車にあちらにある私の荷物と私専属の従僕と侍女の荷物、護衛の荷物等を全部積んで来ましたから、移動に時間が掛かりました。
アンリとアンナには短時間での荷造りを頑張ってもらいました。お疲れ様、少しお休みをあげないといけませんわ。
馬にも無理をさせました。こうなるとわかっていましたら、事前に馬車の用意をしましたのにね。
「お帰りなさいませ、マリナリアお嬢様」
この屋敷を管理してくれている執事のセバスが出迎えてくれました。
そして、セバスに事のあらましを伝えました。
「セバス、そんなに力んで持っては懐中時計の鎖が歪んでしまいますわ。お爺様より頂いた大切なものなのでしょう?」
「申し訳ございません、お嬢様。年甲斐もなく……」
「セバスは本当にお父様がお嫌いなのね」
「仕方のない事でございます。私が幼少の頃より見て参りましたマーリエお嬢様を誑かし、使い潰した御方ですから」
ニコリと笑うセバスの笑顔が黒いですわ。
お母様はご病気になっても領地経営を行い、無理に無理を重ねて亡くなってしまいました。
タリ・タス・テス侯爵領にある川が大雨で氾濫してしまい陣頭指揮を執られたのですもの。
運が悪かったのもあったのでしょう。
お父様?あの方は王都へ避難して安全なところにいらっしゃったそうですよ。
幼い頃、お母様にお父様のどこがよかったのか聞いたことがありました。
お母様は一言で言いきられましたわ。
「顔よ」
……余程お好みだったのでしょうね。
お母様曰く、自分は領主としての力量を既に備えているので、相手は無能でも構わなかったそうです。
邪魔さえしなければいい、とのお考えだったそうですが、もう少し考えて欲しかったです。
お母様とお父様の結婚には、当時の陛下や当主達のご意向も絡んでいたそうですから、仕方がないところもあったのかも知れません。
当時のお父様がどうだったか知りませんが、今や立派な邪魔者に変身してしまいました。
お母様もご自分がこの様に早く亡くなるとは思わなかったのでしょうね。
人は成長するものです。いい意味でも悪い意味でも。
「セバス、陛下からの呼び出しがあるまで私はここでゆっくり過ごします」
「かしこまりました、ではお嬢様。お休みになる前にこちらの確認をお願いいたします」
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