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2 婚約破棄2

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「私がこの地を出て行くのですか?」
「当然ではありませんか。異母姉様はロンドリオ殿下と婚約破棄をするのですから」
「そうだな、それがいい」

 まだ私は婚約破棄を言われただけで返事も手続きもしていないのですが、この家では決定事項なのですね。
 お父様も笑顔で同意していますが、今この地を動かしているのは私だということをお忘れなのでしょうか?

「サリーニアは領主としての教育は受けていないでしょう?大丈夫なのですか?」

「異母姉様が心配しなくてもロンドリオ殿下がいらっしゃいますもの。ね、ロンド様」
「あ……あぁ、大丈夫だよサリー。そう、俺がいれば大丈夫」

 ロンドリオ殿下、力強く言われるのは良いのですが、顔が引きつっておりますわよ。

 王宮では勉強時間はいつも逃げ出している、と教育係が嘆いているというのに、一体何時領主教育を学ばれたのでしょう?

 第三王子がこの様では陛下に申し訳が立ちません、と何人辞めて行ったことでしょう。
 陛下も頭を抱えておられましたわ。
 見栄を張っても仕方がないでしょう、と思いますが、殿下にとっては余計なお世話なのでしょうね。

「この地を出るのは仕方がありませんが、もうこの地に対して私が手伝う事はしませんよ。お父様、いいですか?」
「……」

 ここでやっと、ご自分が領地経営など久しくしていない事を思い出したのでしょうね。
 お父様は黙り込んでしまいました。

「お父様?」

 サリーニアが訝しげにお父様を見ています。

「…………」
「お父様、だめなのですか?」

 お父様に甘えた声を掛けるサリーニアは上目遣いになって見つめています。
 男性はこのような態度が大変お好きなようですね。
 お父様も例外ではないようで「庇護欲をそそる」らしく、サリーニアは多様しています。
 これは、私には難しいワザなのです。サリーニアとは一つ違いなのですから、出来てもいいはずなのにと思ってしまいます。

「旦那様、大丈夫ですよ。若い二人を信じましょう」

 お父様の後妻に入られてから、一度も領地に関心を持ったことの無い継母様が無責任に言います。
 大変さを知らないのに気楽に言えるものです。

「ああ、マリナリアは必要ない」

 まるで自分に言い聞かせるみたいに聞こえますわ、お父様。

「わかりました。どうぞお好きして下さい。……頑張って下さいね」

 くれぐれも私を頼る事のないように。
 念を押して私はこの屋敷を出ていきました。

 婚約破棄?
 後で陛下に何か言われてしまうわね、とは思いましたが勿論了承いたしましたよ。
 ロンドリオ殿下に魅力を感じた事など一度もありませんから。


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