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1 婚約破棄1

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 侯爵家の応接室での事。
 空は澄み切り綺麗な光が射し込んでいる中、この応接室では異様な雰囲気が漂っていました。

「ロンドリオ殿下、もう一度仰って頂けますか?」

 私ことタリ・タス・テス侯爵家令嬢のマリナリアは聞き間違いかと思い尋ねました。

「何度でも言ってやる。俺の愛しているのはサリーニアだ、マリナリアではない。よって貴様とは婚約破棄する。サリーニアを婚約者とし、そして結婚する。わかったか」

 どうやら私の聞き間違いではなかったようです。

「陛下はご存知なのでしょうか?」

「問題ない。サリーニアでも貴様でも変わらないだろう?」

 いや、問題大ありなのですが、全くロンドリオ殿下は気付いていないようです。
 それにしても、そのお二人の態度は如何なものでしょう?
 いくら屋敷の中とはいえ、ロンドリオ殿下の隣にベッタリと張り付いた異母妹のサリーニア。
 この応接室にはお父様や継母様もいるのですが、誰もこの二人を注意しません。
 それどころか微笑ましげに見ています。
 この部屋にいる使用人も皆微笑み、二人を見ています。

 私が同じ様な事を殿方にしたならば、顔を顰めるのでしょうに態度が全く違います。
 屋敷中私の婚約破棄に賛成しており、殿下と異母妹が新たに結ばれる事を願っているのでしょう。

「こういう事は、先に御父上で在らせられる陛下にお知らせして、許可を取られてからの方がよろしいのでは」

 暗に「問題だ」と言っているのですが、ロンドリオ殿下には伝わらないみたいです。

「あぁ義父になるタリ・タス・テス侯爵には許可を取っている、相変わらず貴様はうるさい」
「そうよ、何時も何時も異母姉おねえ様はうるさいのよ。少しお行儀が悪かったらグチグチと言ってくるのよ。あれはもういじめよ、い・じ・め」
「可哀想なサリーニア、辛かっただろうな」

 睨みつけながらお二人は言いますが、お茶会で侯爵令嬢としての態度ではなかったのです。
 仕方なく私が指摘しました。主催者も困っていらっしゃったもの。

「何故、その時に言わなかったのサリーニア。言ってくれれば母がマリナリアを叱りましたのに」
「そうだよ、サリーニア。父も一緒に叱ってやった」

 お父様も継母様もサリーニアにはとても甘いのです。
 これで外では私とサリーニアを同じ様に接している、と言うのですからご自分達の態度の違いに気付いていないのでしょうか?


 皆の味方を得てサリーニアの口角が上がっています。
 そして、勝ち誇った顔をしてサリーニアが言いました。
異母姉おねえ様、私この地が欲しいのですわ。だから出ていって頂けます?」



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