【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり

文字の大きさ
上 下
27 / 27

27

しおりを挟む
 卒業式の翌日は貴族の式典がある。この式典は領主のみの参加とされた。
 主に爵位の変更が伝えられ、その後顔見せの立食パーティーがある。

 変更される貴族は予め国より書状が届き参加は強制。
 貴族であるならば、参加なき場合の処遇は奪爵の上罰金が科せられる。昔はあまりの屈辱で自害した領主がいるとかいないとか。
 今では奪爵よりも返上が多い。返上すれば貴族の義務から解放されるからだ。


 今年は参加者が多い。
 大々的に祝福される久々の叙爵、それも女領主の誕生だった。
 そして、ひそひそ囁かれる降爵、しかも此方は数十年振りの上位貴族から下位貴族への変更だった。

 カリンは華々しく祝福され、陛下より子爵の地位と新しい家名を賜った。

 ハマー元伯爵は流石面の皮が厚い。晒し者になりながらも式典に参加。始終屈辱に耐えた顔をしていた。パーティーには参加せずすぐに去っていった。

 式典、パーティーは大いに盛り上がり、カリンは引っ張りだこになった。鬱陶しい新しい婚約者の話は華麗にスルーし、代わりに幾つか商談を纏め上げほくほく顔である。




 翌日カリンは王都にある貴族専用の地、ハマー元伯爵家の墓標の前にいた。

「お爺様ごめんなさい、ハマー家は守れそうにありません。でも安心なさって、領地と領民は四貴族で分担して守っていきます」

 ターナー家が飛び地として、ハルホー子爵、ハヤムー子爵が増加地として、そして新設のターリー家がお爺様の大切な地を守る。

 今回の土地の拡大でハヤムー男爵は子爵へ陞爵した。
 ハルホー子爵は土地の広さは申し分ないが人が足らずそのまま爵位の変更はない。下位貴族から上位貴族への陞爵は難しいのでまだまだ時が必要だろう。
 カリンのターリー子爵も同様である。


 オリバーはお情けで卒業は出来たようだ。学園に居残られた方が大変なので、追い出された形なのだろう。
 卒業後は家に戻り遊べばいいと思っていたのだろうが、残念。今のハマー家にはそんな余裕などない。

 ハマー伯爵家は男爵に降爵された。
 この国は上位貴族に甘い。しかし一旦落ちて下位貴族になれば元上位貴族だった事など気にしない。
 下手をすれば来年にも奪爵の可能性があるだろう。

 もうどこも助けてくれない。あの領地経営のやり方だとすぐ手詰まりになる。
 平民になったとして受け入れてくれる地も職もないだろう。


 カリンは「やっとお爺様の願いに応えられます」とにっこり微笑んだ。



「さぁ、じっくりと私の領地を一緒に盛り上げてくれる人を探さないとね」

 すっきりした顔をしてカリンがエンサーとモニカを伴いターナー家の屋敷に戻ると、学園卒業のパートナー選びなど比ではない量の積み上げられた釣書、紹介状の数々に顔を引き攣らせるのであった。



「面倒なら俺で手を打ちましょう。お買い得ですよ」

 カリン後ろからそっと囁くエンサーの声が聞こえたとか聞こえなかったとか……









お読みいただきありがとうございました。


しおりを挟む
感想 24

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(24件)

メロン
2025.01.26 メロン

一気に読み終えました。
番外編、あるいは短編での続編でその後が気になります。
しかし、ターナー家の男子、しっかりせぃ。

解除
メロン
2025.01.26 メロン

まだ四話までしか読めていませんが、ターナー家当主は未来の次代達の事は考えないんですかね。
まだ四話で少ししか出てきてないのに「イラッ」としてしまいました。
続き読みます。

解除
ねこのたま
2024.06.10 ねこのたま

え~。結局カリンは誰を選んだんだろうね。気になります。でも、とっても面白かったです。ありがとうございました。

解除

あなたにおすすめの小説

両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。 一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。 更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

【完結】順序を守り過ぎる婚約者から、婚約破棄されました。〜幼馴染と先に婚約してたって……五歳のおままごとで誓った婚約も有効なんですか?〜

よどら文鳥
恋愛
「本当に申し訳ないんだが、私はやはり順序は守らなければいけないと思うんだ。婚約破棄してほしい」  いきなり婚約破棄を告げられました。  実は婚約者の幼馴染と昔、私よりも先に婚約をしていたそうです。  ただ、小さい頃に国外へ行ってしまったらしく、婚約も無くなってしまったのだとか。  しかし、最近になって幼馴染さんは婚約の約束を守るために(?)王都へ帰ってきたそうです。  私との婚約は政略的なもので、愛も特に芽生えませんでした。悔しさもなければ後悔もありません。  婚約者をこれで嫌いになったというわけではありませんから、今後の活躍と幸せを期待するとしましょうか。  しかし、後に先に婚約した内容を聞く機会があって、驚いてしまいました。  どうやら私の元婚約者は、五歳のときにおままごとで結婚を誓った約束を、しっかりと守ろうとしているようです。

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。 その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。 そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。 そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。

姉が私の婚約者と仲良くしていて、婚約者の方にまでお邪魔虫のようにされていましたが、全員が勘違いしていたようです

珠宮さくら
恋愛
オーガスタ・プレストンは、婚約者している子息が自分の姉とばかり仲良くしているのにイライラしていた。 だが、それはお互い様となっていて、婚約者も、姉も、それぞれがイライラしていたり、邪魔だと思っていた。 そこにとんでもない勘違いが起こっているとは思いもしなかった。

婚約破棄? そもそも君は一体誰だ?

歩芽川ゆい
恋愛
「グラングスト公爵家のフェルメッツァ嬢、あなたとモルビド王子の婚約は、破棄されます!」  コンエネルジーア王国の、王城で主催のデビュタント前の令息・令嬢を集めた舞踏会。  プレデビュタント的な意味合いも持つこの舞踏会には、それぞれの両親も壁際に集まって、子供たちを見守りながら社交をしていた。そんな中で、いきなり会場のど真ん中で大きな女性の声が響き渡った。  思わず会場はシンと静まるし、生演奏を奏でていた弦楽隊も、演奏を続けていいものか迷って極小な音量での演奏になってしまった。  声の主をと見れば、ひとりの令嬢が、モルビド王子と呼ばれた令息と腕を組んで、令嬢にあるまじきことに、向かいの令嬢に指を突き付けて、口を大きく逆三角形に笑みを浮かべていた。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?

ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。 レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。 アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。 ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。 そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。 上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。 「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。