【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり

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16モニカ視点

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―――モニカ視点

 私は今、カリンお嬢様の侍女をしております。

 ハマー家の厨房をお借りしてお茶の用意をして参りました。もちろんお茶の葉は持参した物を使います。

 仕方がないのです。ハマー家では侍女や従僕の入れ替わりが激しく、まともに美味しいお茶を入れられる者がおりません。茶葉もいまいちです。
 出過ぎた事とは思いますが、説明でお疲れなカリンお嬢様に不味い物でこれ以上気分を下げさせる訳にはいきませんからね。



 私は森の中の小さな村で生まれ育ちました。
 それでも近辺にある村の中では一番大きな村でした。近くにある村は「村」と言ってはいますが、木こりが集まっただけの小さな集まりが二箇所。とても不便な森に埋もれた田舎でした。

 そういう我が村も木こりや狩人が殆どで、腕のあるものは辺境伯の地へ出稼ぎに出て行きました。
 王都より辺境伯の地の方が余程近いですから。

 ある時役人が来て、「この地が売りに出された」と告げました。なんでも国中が飢饉だったそうです。私達は全く気づきませんでした。

 老人達は口々に言いました。

「やはりな」
「先代様が頑張ってこられたのにのぉ」
「当代様はこの地がお嫌いらしい」
「もう終わりだなぁ」

 皆諦めていました。

 父は先代様に親しくして頂き特産品を作り出そうとして頑張っていました。兄もそれを手伝い懸命に模索していました。

 国に買い取られた土地には領経由の商人が来ません。年に数回とはいえ我が村では商人を呼ぶ力はありません。

 私は村の皆の分の買い出しに辺境伯領へ出かけました。我が村の特産品と成りうる試作品を持って。


 私は途方に暮れました。
 せめて少しでも店に置いてもらおうといろんな所に交渉をしますが見向きもされません。

 結局戦果一つなく、村へ帰って来た所でカリンお嬢様に出会いました。以前先代様と村へ来られた為お顔だけは知っていました。

 カリンお嬢様は村の入口付近で厳しい顔をして睨むように見ていました。
 どのような心情だったのかその時はわかりませんでした。

 ただ長く仕える様になって、涙を堪えている時にその様な顔になるのだとわかるようになりました。
 私が気付いている事はカリンお嬢様には内緒です。


 カリンお嬢様から我が村の現在の状況を聞きました。
 今は国に一時的に買い取られている状態だそうです。半年を過ぎると国に完全・・に売り渡され、他の上位貴族達も買える様になるそうです。
 ただ、飢饉の為の融資として国が買取価格を上げ、本来の価値とは乖離かいりしているそうです。


「そんなに高いのですか?」

「役人に聞いたら買い戻す気はないのだろうと言われたわ」

「でも、特産品が……」

「まだ完成していない商品でしょう?これから完成出来るかわからない。後どれ位時間やお金が掛かるかもわからない。交通手段も悪い。貴族があえてこの地を購入する魅力はないわ。ここよりも価値のある土地が幾つも売りに出されると社交界では噂になっているもの」

「そんな!」

「私が買い戻すつもりよ。お爺様がせっかく育てて来た土地ですもの」

 私はその後カリンお嬢様に雇われました。いえ、拾って貰えたと言う方が正確でしょうか?



 カリンお嬢様は忙しいのです。いつまで無駄な時間を費やすつもりなのでしょう。

 本当に愚か者で忌々しい伯爵様。





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