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「……昨日夕食時に私言いましたよね。なぜお母様とポールがここにいるのですか?」
遅めの朝食を済ませたカリンは馬車の前で楽しげに移動準備をしているターナー家一同に言った。
「あら、ハマー家での晩餐は私達も呼ばれていますのよ。訪問するのは久しぶりですから当然ではありませんか」
「そうだよカリン姉様。婚家には良い顔しないといけないんだよ」
「だから私は『婚約破棄』されてその確認や手続きでハマー家へ行くのであって、今後一切婚家にはなりません」
いつもの事だと取り合わない家族にカリンはため息をついた。
「お嬢様の日頃の行いですね。頑張って信頼されるようになりましょう」
「……エンサー、笑いながら言わないで」
「私が笑顔なのはいつもの事です」
エンサーは笑いながら「書類はバッチリですよ、お嬢様」と大きな書類鞄を掲げて叩いてみせた。
馬車は結局六人用と四人用の二台仕立てられてハマー家へと向かった。その為急遽カリンは荷物を増やした。ハマー家訪問後行きたいところがある為だ。
カリンは家族とは別の馬車で行く。頭の中では改めてシュミレーションをしていた。
母親やポールは父親以上のお人好しだ。ポールは来年学園へ入る。次期ターナー伯爵として話し合いには同席するだろう。
内心「面倒なのはどっちだ」と思ったカリンは悪くない。
ハマー家へ行くにはいくつかの村を通る。
カリンはハマー領に入ると途端に村に活気がない様に感じた。
「なんだか以前にも増して悪趣味な家になりましたね」
ハマー家到着後のカリンの第一声がこれである。
玄関からゴテゴテに飾られた広間。鎮座する意味不明な彫刻。統一性なく掲げられた絵が並ぶ通路。
「お父様、ハマー家はターナー家の援助を受けないと回らなくなっているのですよね?何故色々と増えてますの?」
「……」
「借用書を見ましたが、今年の分もありましたよね?」
答えられないターナー伯爵にカリンは畳み掛けた。お金の貸し借りがある際、貸主が借主へ訪問等はない。いつもハマー伯爵が訪問していた。
実はターナー伯爵もハマー家への訪問は久々だった。
「この飾りはちょっと……」
「これって……姉様に聞いてはいたけど凄いね」
カリンがいないと比較的近くの領地でも訪れることがないので、母親と弟のハマー家訪問は父親以上に久しぶりの事だった。そんな二人も呆れていた。
「これは、家族の邪魔がない?」
ニヤリと笑うカリンに「お嬢様、お顔は整えましょう」などと失礼な事をいうエンサーの足をカリンは軽く踏んでやった。
遅めの朝食を済ませたカリンは馬車の前で楽しげに移動準備をしているターナー家一同に言った。
「あら、ハマー家での晩餐は私達も呼ばれていますのよ。訪問するのは久しぶりですから当然ではありませんか」
「そうだよカリン姉様。婚家には良い顔しないといけないんだよ」
「だから私は『婚約破棄』されてその確認や手続きでハマー家へ行くのであって、今後一切婚家にはなりません」
いつもの事だと取り合わない家族にカリンはため息をついた。
「お嬢様の日頃の行いですね。頑張って信頼されるようになりましょう」
「……エンサー、笑いながら言わないで」
「私が笑顔なのはいつもの事です」
エンサーは笑いながら「書類はバッチリですよ、お嬢様」と大きな書類鞄を掲げて叩いてみせた。
馬車は結局六人用と四人用の二台仕立てられてハマー家へと向かった。その為急遽カリンは荷物を増やした。ハマー家訪問後行きたいところがある為だ。
カリンは家族とは別の馬車で行く。頭の中では改めてシュミレーションをしていた。
母親やポールは父親以上のお人好しだ。ポールは来年学園へ入る。次期ターナー伯爵として話し合いには同席するだろう。
内心「面倒なのはどっちだ」と思ったカリンは悪くない。
ハマー家へ行くにはいくつかの村を通る。
カリンはハマー領に入ると途端に村に活気がない様に感じた。
「なんだか以前にも増して悪趣味な家になりましたね」
ハマー家到着後のカリンの第一声がこれである。
玄関からゴテゴテに飾られた広間。鎮座する意味不明な彫刻。統一性なく掲げられた絵が並ぶ通路。
「お父様、ハマー家はターナー家の援助を受けないと回らなくなっているのですよね?何故色々と増えてますの?」
「……」
「借用書を見ましたが、今年の分もありましたよね?」
答えられないターナー伯爵にカリンは畳み掛けた。お金の貸し借りがある際、貸主が借主へ訪問等はない。いつもハマー伯爵が訪問していた。
実はターナー伯爵もハマー家への訪問は久々だった。
「この飾りはちょっと……」
「これって……姉様に聞いてはいたけど凄いね」
カリンがいないと比較的近くの領地でも訪れることがないので、母親と弟のハマー家訪問は父親以上に久しぶりの事だった。そんな二人も呆れていた。
「これは、家族の邪魔がない?」
ニヤリと笑うカリンに「お嬢様、お顔は整えましょう」などと失礼な事をいうエンサーの足をカリンは軽く踏んでやった。
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