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10 嫌がらせですか?上等ですわ
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バサリと護衛役の生徒が持っていた用紙を、殿下は乱暴に机に投げ落としました。
「これは?」
「お前がやるんだ!」
「わたくし、苦情も要望も受け付けないといいましたわよね。何故まだ頼ってくるのかしら?」
本当にこのお二人は、人任せですわね。
苦い顔をして、殿下は言いました。
「教師から却下されたらしい。ベティーナが必死で書いた物を一瞥しただけだったそうだ。可哀想に、ベティーナが落ち込んでいるんだ。お前がなんとかしろ!」
わたくしも、ちらっと見ました。
用紙の半分も満たない文、読みにくい字ですわね。
クラスに残っていた生徒達も、覗き込んで唖然としていますわ。
「それは仕方のない事ではありませんか?これでは……」
「は?」
「はぁ、わたくしは甘いのかも知れませんが、間違っている所を指摘するだけなら。ベティーナそれでいいわよね」
「……わかったわ。どうせ、私のは短いって言うのでしょう?……こんなの書かなくでも殿下を誉める所沢は沢山あるもん」
最後の方は聞き取れなかったですけれど、ベティーナはこれで良いと思っているようです。
「それもあるのですが、まず……」
わたくしはおもむろに、ベティーナの発表分を読み上げました。
「私の父はバルツァーナ侯爵です。領地から頼られています。書類が沢山送られて来るのですが、ササッとサインして、仕事が早いです。この部分です」
「これの何処がいけないのよ!」
「全てです!偽りを発表する事は許されない事なのですよ。ベティーナが発表するのは『救済』です。ここで失敗すると、やり直しが出来ないわよ」
通称『救済』
どうしても緊張のあまりの失敗や体調不良で欠席等、当日発表できなかった者。
また、発表内容に誤りがあった場合の再発表の場。
発表会から5日後に行われます。
貴族となれば、やり直しのような甘い事はないのですが、
ここはあくまで学園。
まだまだ勉強中の立場ですので、一度は場を設けます。
残念ながら、二度目はないです。
この再発表で不可と成りますと、学期末で退学となってしまいます。
貴族としてやっていけるかの、ふるい落としですわね。
わたくしはベティーナがどちらになってもいいのですが、故意にとまでは思っておりません。
「それに……父は凄く素敵なのです。私に綺麗なドレスをよく買ってくれます。とてもセンスがいいです。ベルンハルト殿下の次にセンスがいいです」
「この部分は、全く発表に向いていません。ですので、全て書き直しですわね。お父様に詳しく聞いて、書き直していらっしゃい」
これで終わりなんて、休憩時間を無駄に費やしたのね。
それより、殿下からドレスが贈られているとか、何のアピールかしら。
わたくしは、贈られた事はないけれど。
「そんな……全部ダメなんて。わかったわ。お姉様、嫌がらせなのね。私が殿下とお父様を独り占めしているからって、こんな風にするなんて、あんまりだわ~」
何処からその発想になるのか不明ですが、意地悪ですか、そうですか……
「わたくしからいわせてもらえば、これで大丈夫だと思う方が、大丈夫なのか心配してしまいますわ。ベティーナ、文を書くのが苦手なのは仕方のないとしても、調べ物はできるでしょう。お父様と継母と一緒に暮らしているのだから聞けるでしょう。わたくしに頼ること事態が間違いなのです!」
キツい口調で言ったからでしょうか。
ベティーナは酷い酷いと涙を流しながら、訴える様にこの場を去りました。
付属の殿下も、睨んで出て行きましたわ。
「バルツァーナ嬢、もう少し詳しくしても良かったのでは?」
「そうなのですが、ここでは言えないのです。領地運営にも関わる事ですもの。それに継母の事は興味がなくて、詳しくは知らないの。それよりも……貴方達護衛失格ですわよ」
わたくしはちょっと笑いながら、場の雰囲気を変えました。
「バルツァーナ嬢、それは酷い」
「あんな行動取るなんて思わないよな!」
「護衛の位置にいれば、阻止出来てたよ、絶対!」
お父様が今は領主代行をほぼしておらず、お役御免となる日が近いなんて、流石に言えませんわ。
「これは?」
「お前がやるんだ!」
「わたくし、苦情も要望も受け付けないといいましたわよね。何故まだ頼ってくるのかしら?」
本当にこのお二人は、人任せですわね。
苦い顔をして、殿下は言いました。
「教師から却下されたらしい。ベティーナが必死で書いた物を一瞥しただけだったそうだ。可哀想に、ベティーナが落ち込んでいるんだ。お前がなんとかしろ!」
わたくしも、ちらっと見ました。
用紙の半分も満たない文、読みにくい字ですわね。
クラスに残っていた生徒達も、覗き込んで唖然としていますわ。
「それは仕方のない事ではありませんか?これでは……」
「は?」
「はぁ、わたくしは甘いのかも知れませんが、間違っている所を指摘するだけなら。ベティーナそれでいいわよね」
「……わかったわ。どうせ、私のは短いって言うのでしょう?……こんなの書かなくでも殿下を誉める所沢は沢山あるもん」
最後の方は聞き取れなかったですけれど、ベティーナはこれで良いと思っているようです。
「それもあるのですが、まず……」
わたくしはおもむろに、ベティーナの発表分を読み上げました。
「私の父はバルツァーナ侯爵です。領地から頼られています。書類が沢山送られて来るのですが、ササッとサインして、仕事が早いです。この部分です」
「これの何処がいけないのよ!」
「全てです!偽りを発表する事は許されない事なのですよ。ベティーナが発表するのは『救済』です。ここで失敗すると、やり直しが出来ないわよ」
通称『救済』
どうしても緊張のあまりの失敗や体調不良で欠席等、当日発表できなかった者。
また、発表内容に誤りがあった場合の再発表の場。
発表会から5日後に行われます。
貴族となれば、やり直しのような甘い事はないのですが、
ここはあくまで学園。
まだまだ勉強中の立場ですので、一度は場を設けます。
残念ながら、二度目はないです。
この再発表で不可と成りますと、学期末で退学となってしまいます。
貴族としてやっていけるかの、ふるい落としですわね。
わたくしはベティーナがどちらになってもいいのですが、故意にとまでは思っておりません。
「それに……父は凄く素敵なのです。私に綺麗なドレスをよく買ってくれます。とてもセンスがいいです。ベルンハルト殿下の次にセンスがいいです」
「この部分は、全く発表に向いていません。ですので、全て書き直しですわね。お父様に詳しく聞いて、書き直していらっしゃい」
これで終わりなんて、休憩時間を無駄に費やしたのね。
それより、殿下からドレスが贈られているとか、何のアピールかしら。
わたくしは、贈られた事はないけれど。
「そんな……全部ダメなんて。わかったわ。お姉様、嫌がらせなのね。私が殿下とお父様を独り占めしているからって、こんな風にするなんて、あんまりだわ~」
何処からその発想になるのか不明ですが、意地悪ですか、そうですか……
「わたくしからいわせてもらえば、これで大丈夫だと思う方が、大丈夫なのか心配してしまいますわ。ベティーナ、文を書くのが苦手なのは仕方のないとしても、調べ物はできるでしょう。お父様と継母と一緒に暮らしているのだから聞けるでしょう。わたくしに頼ること事態が間違いなのです!」
キツい口調で言ったからでしょうか。
ベティーナは酷い酷いと涙を流しながら、訴える様にこの場を去りました。
付属の殿下も、睨んで出て行きましたわ。
「バルツァーナ嬢、もう少し詳しくしても良かったのでは?」
「そうなのですが、ここでは言えないのです。領地運営にも関わる事ですもの。それに継母の事は興味がなくて、詳しくは知らないの。それよりも……貴方達護衛失格ですわよ」
わたくしはちょっと笑いながら、場の雰囲気を変えました。
「バルツァーナ嬢、それは酷い」
「あんな行動取るなんて思わないよな!」
「護衛の位置にいれば、阻止出来てたよ、絶対!」
お父様が今は領主代行をほぼしておらず、お役御免となる日が近いなんて、流石に言えませんわ。
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