8 / 10
8 苦情、要望は受け付けませんわよ
しおりを挟む
ベルンハルト殿下とベティーナは、お互い温もりを感じあって落ち着いたのか、わたくしを睨んできます。
学舎の前まで来ていたわたくしは、無視してクラスに入ってしまうという事も考えました。
しかし、追いかけられる可能性の方が高そうです。
それに、わたくしが少し後ろに気を取られているうちに、殿下の護衛の一人が学舎の所まで来ていました。
「アンゲリータ、貴様はそれでもベティーナの姉か!姉なら妹に便宜を図るものだろう!」
「お言葉ですが殿下。異母妹なら姉に迷惑をかけないようにするべきではありませんか?」
「未熟な妹を導いてやる事も出来ないとは……情けない。それでも、それでも…………俺の、こ、こ婚約者かー!」
なんですか、その苦渋に満ちたお顔は!
殿下は余程、わたくしの事を『婚約者』と言いたくなかったのでしょうね。
周りを見渡せば、びっくりしている生徒がちらほらといらっしゃいます。
発表会で見た顔ですわ、1年生ですわね。
今度、1年生でどのような噂が流れているか調べてみましょう。
それにしても、殿下の口から『婚約者』と言われたのは、生徒会の仕事を押し付けられた時以来でしょうか。
その前は確か……殿下の政務を押し付けられた時でしたわね。
勿論、陛下や王妃様には苦言を呈しておりますわよ。
改善されておりませんけれど……
そして今度は、ベティーナの課題を押し付けられる気満々ですわね。
発表会前は、出会わない様に手を回しましたから、早目に仕掛けて来たのでしょうが、知りません。
他の方は困りませんから、こちらは放置で大丈夫でしょう。
「未熟な異母妹だからこそ、自分で課題を行う様に言っているのではありませんか。わたくしの発表した物は参考になりませんもの」
殿下は2年生の時、生徒会会長として発表会を聞いていらっしゃった。
頭脳派側近のバルトルト様が、お隣で指導していらっしゃったのを見ていましたから。
「そんなはずないだろう!」
「いいえ、殿下はわたくしの発表を聞いていらっしゃったのですから、ご存知ですわよね」
「あ、当たり前だろう。皆の発表は聞いている。だから参考に貸せと言っている」
「参考にするだけなら、今回発表した方にお借りすればよろしいではないですか。ベティーナとて、お友達はいますでしょう?」
法衣貴族の生徒のものの方が、余程参考になりますわ。
「……酷い!お姉様は私を虐めて楽しんでいるのだわ。酷い酷いわ~」
え?酷いって、もしかしてお友達が一人もいないのかしら?
言い合うわたくし達の周りには、人が集まっています。
1年生と思しき生徒を見ると目をそらされましたわ。
……そうですか、課題を見せ合う様な相手もいないのですか。
そういえば、昼食は王族専用の食堂へ行っているとベティーナが自慢していましたわね。
殿下のクラスにも行っているみたいですし、わたくしのクラスにも来ていましたわね。
せっかくの学園ですもの。
これを機会にして、お友達を作ればいいのですわ。
そんな気持ちでベティーナを見ますと、プイッと視線を外されましたわ。
そうしている内に、時間がなくなってしまったようです。
どこからか、「授業始まるぞ~」と言う声で、さーーーっと人が引いていきました。
わたくしも遅れたくはありません。
「とにかく、わたくしは貸しませんし、手伝いません。この事に関して苦情、要望は受け付けません。後、お父様にもその旨お知らせいたしますわ」
そう言いおいて、クラスに向かいました。
わたくしが発表した際、父親の事はこれっぽっちも書いていないのですもの。
領地の新作果樹の宣伝が主体となっておりましたから。
参考にする所などありませんわ。
学舎の前まで来ていたわたくしは、無視してクラスに入ってしまうという事も考えました。
しかし、追いかけられる可能性の方が高そうです。
それに、わたくしが少し後ろに気を取られているうちに、殿下の護衛の一人が学舎の所まで来ていました。
「アンゲリータ、貴様はそれでもベティーナの姉か!姉なら妹に便宜を図るものだろう!」
「お言葉ですが殿下。異母妹なら姉に迷惑をかけないようにするべきではありませんか?」
「未熟な妹を導いてやる事も出来ないとは……情けない。それでも、それでも…………俺の、こ、こ婚約者かー!」
なんですか、その苦渋に満ちたお顔は!
殿下は余程、わたくしの事を『婚約者』と言いたくなかったのでしょうね。
周りを見渡せば、びっくりしている生徒がちらほらといらっしゃいます。
発表会で見た顔ですわ、1年生ですわね。
今度、1年生でどのような噂が流れているか調べてみましょう。
それにしても、殿下の口から『婚約者』と言われたのは、生徒会の仕事を押し付けられた時以来でしょうか。
その前は確か……殿下の政務を押し付けられた時でしたわね。
勿論、陛下や王妃様には苦言を呈しておりますわよ。
改善されておりませんけれど……
そして今度は、ベティーナの課題を押し付けられる気満々ですわね。
発表会前は、出会わない様に手を回しましたから、早目に仕掛けて来たのでしょうが、知りません。
他の方は困りませんから、こちらは放置で大丈夫でしょう。
「未熟な異母妹だからこそ、自分で課題を行う様に言っているのではありませんか。わたくしの発表した物は参考になりませんもの」
殿下は2年生の時、生徒会会長として発表会を聞いていらっしゃった。
頭脳派側近のバルトルト様が、お隣で指導していらっしゃったのを見ていましたから。
「そんなはずないだろう!」
「いいえ、殿下はわたくしの発表を聞いていらっしゃったのですから、ご存知ですわよね」
「あ、当たり前だろう。皆の発表は聞いている。だから参考に貸せと言っている」
「参考にするだけなら、今回発表した方にお借りすればよろしいではないですか。ベティーナとて、お友達はいますでしょう?」
法衣貴族の生徒のものの方が、余程参考になりますわ。
「……酷い!お姉様は私を虐めて楽しんでいるのだわ。酷い酷いわ~」
え?酷いって、もしかしてお友達が一人もいないのかしら?
言い合うわたくし達の周りには、人が集まっています。
1年生と思しき生徒を見ると目をそらされましたわ。
……そうですか、課題を見せ合う様な相手もいないのですか。
そういえば、昼食は王族専用の食堂へ行っているとベティーナが自慢していましたわね。
殿下のクラスにも行っているみたいですし、わたくしのクラスにも来ていましたわね。
せっかくの学園ですもの。
これを機会にして、お友達を作ればいいのですわ。
そんな気持ちでベティーナを見ますと、プイッと視線を外されましたわ。
そうしている内に、時間がなくなってしまったようです。
どこからか、「授業始まるぞ~」と言う声で、さーーーっと人が引いていきました。
わたくしも遅れたくはありません。
「とにかく、わたくしは貸しませんし、手伝いません。この事に関して苦情、要望は受け付けません。後、お父様にもその旨お知らせいたしますわ」
そう言いおいて、クラスに向かいました。
わたくしが発表した際、父親の事はこれっぽっちも書いていないのですもの。
領地の新作果樹の宣伝が主体となっておりましたから。
参考にする所などありませんわ。
36
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説
双子の妹は私から全てを奪う予定でいたらしい
佐倉ミズキ
恋愛
双子の妹リリアナは小さい頃から私のものを奪っていった。
お人形に靴、ドレスにアクセサリー、そして婚約者の侯爵家のエリオットまで…。
しかし、私がやっと結婚を決めたとき、リリアナは激怒した。
「どういうことなのこれは!」
そう、私の新しい婚約者は……。
婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?
お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~
柚木ゆず
恋愛
今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。
お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?
ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。
雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」
妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。
今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。
私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。
婚約は破棄なんですよね?
もるだ
恋愛
義理の妹ティナはナターシャの婚約者にいじめられていたと嘘をつき、信じた婚約者に婚約破棄を言い渡される。昔からナターシャをいじめて物を奪っていたのはティナなのに、得意の演技でナターシャを悪者に仕立て上げてきた。我慢の限界を迎えたナターシャは、ティナにされたように濡れ衣を着せかえす!
勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い
猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」
「婚約破棄…ですか」
「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」
「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」
「はぁ…」
なんと返したら良いのか。
私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。
そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。
理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。
もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。
それを律儀に信じてしまったというわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。
婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです
神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。
そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。
アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。
仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。
(まさか、ね)
だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。
――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。
(※誤字報告ありがとうございます)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる