13 / 14
マーガレット・アンクール辺境伯令嬢の場合
12 私の婚約事情―心から叫ぶ事は
しおりを挟む
「ガルディが辺境の地を治めるなんて、無理な事です!!」
これが、我が領地で彼に接した人達の総意だった。
しかし政略の上の約束事であっても、当主達が婚姻の約束を交わしてしまった。
返品交換しようにも、ローディング侯爵の上二人の息子は結婚済み。
「上二人は立派に成長した若者なのだがな……」
資質なのか、年の離れた末息子の教育をサボったのか。
多分両方だろうと思われるが、とにかくあれに辺境伯の地位など与えれば、我が家は没落一直線だろう。
あまりに酷い相手に、無理と分かっていても聞かずにはいられなかった。
「お父様、この婚約はどうしても続けなければならないのですか?」
「……婚約を条件に出して来たのは侯爵だ。私としては、今回であの三男がこの地に合わないことが判明した。逃げ帰る位なのだから、白紙に戻し私の提案を受け入れると思ったのだがな」
「お父様のご提案は、どのようなものなのでしょう?」
「なに、簡単な事だ。私を寄子として派閥に入れる口実を若輩だからとすれば良い。それなら派閥が落ち着いたなら私も役目終了で抜けれるしな」
「若輩……ですか?」
「そう次期侯爵の嫡男は、王太子の側近になれる位出来が良い。ロンダース公爵に色々押し付けられる位なら、代替わりを勧めたのだ。即座に却下されたがな」
あれだけ愚痴を言う位なら、侯爵を降り肩の荷を下ろせば良いものを、と父は小声で呟いた。
侯爵は、まだまだ頑張りたいらしい。
「代が変わると公爵との血縁関係も薄れる。新しい派閥には次期侯爵の嫁舅の伯爵もいる。新しい血縁と近くの地縁。二人で地盤を固める手伝いをするという口実は、理にかなっていると思うのだがな」
「そうかも知れませんが、その案は……」
「そう、外聞を考えると些か悪い。まとめる力がないように見られ、以後侮られかねない。政略結婚の方が何かと周りを説明する際、手軽に納得されやすいからな」
それではこちらから破棄にした上で、寄子として派閥に留まる事は出来ないだろう。
陛下の頼みが叶えられず、侯爵の私怨を買うだけだ。
私に出来ることは、ガルディが成長して少しでもマシになる事を祈る!のみ。
……望みは薄すぎるけれども。
そして父がとった行動は、結果私の婚期を遅らせることになった。
父がガルディを見定める前の計画では、二年後ガルディが十六になり結婚が可能になれば、すぐにでも結婚させる。
そして、我がアンクール辺境伯家として、王城勤めをしてもらう予定だった事だろう。
私に話をした後、父は侯爵とも直接話し合う為王都に向かった。
その後私は王都に呼ばれ、今王城で働いている。
これが、我が領地で彼に接した人達の総意だった。
しかし政略の上の約束事であっても、当主達が婚姻の約束を交わしてしまった。
返品交換しようにも、ローディング侯爵の上二人の息子は結婚済み。
「上二人は立派に成長した若者なのだがな……」
資質なのか、年の離れた末息子の教育をサボったのか。
多分両方だろうと思われるが、とにかくあれに辺境伯の地位など与えれば、我が家は没落一直線だろう。
あまりに酷い相手に、無理と分かっていても聞かずにはいられなかった。
「お父様、この婚約はどうしても続けなければならないのですか?」
「……婚約を条件に出して来たのは侯爵だ。私としては、今回であの三男がこの地に合わないことが判明した。逃げ帰る位なのだから、白紙に戻し私の提案を受け入れると思ったのだがな」
「お父様のご提案は、どのようなものなのでしょう?」
「なに、簡単な事だ。私を寄子として派閥に入れる口実を若輩だからとすれば良い。それなら派閥が落ち着いたなら私も役目終了で抜けれるしな」
「若輩……ですか?」
「そう次期侯爵の嫡男は、王太子の側近になれる位出来が良い。ロンダース公爵に色々押し付けられる位なら、代替わりを勧めたのだ。即座に却下されたがな」
あれだけ愚痴を言う位なら、侯爵を降り肩の荷を下ろせば良いものを、と父は小声で呟いた。
侯爵は、まだまだ頑張りたいらしい。
「代が変わると公爵との血縁関係も薄れる。新しい派閥には次期侯爵の嫁舅の伯爵もいる。新しい血縁と近くの地縁。二人で地盤を固める手伝いをするという口実は、理にかなっていると思うのだがな」
「そうかも知れませんが、その案は……」
「そう、外聞を考えると些か悪い。まとめる力がないように見られ、以後侮られかねない。政略結婚の方が何かと周りを説明する際、手軽に納得されやすいからな」
それではこちらから破棄にした上で、寄子として派閥に留まる事は出来ないだろう。
陛下の頼みが叶えられず、侯爵の私怨を買うだけだ。
私に出来ることは、ガルディが成長して少しでもマシになる事を祈る!のみ。
……望みは薄すぎるけれども。
そして父がとった行動は、結果私の婚期を遅らせることになった。
父がガルディを見定める前の計画では、二年後ガルディが十六になり結婚が可能になれば、すぐにでも結婚させる。
そして、我がアンクール辺境伯家として、王城勤めをしてもらう予定だった事だろう。
私に話をした後、父は侯爵とも直接話し合う為王都に向かった。
その後私は王都に呼ばれ、今王城で働いている。
23
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説

ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。
ねお
恋愛
ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。
そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。
「そんなこと、私はしておりません!」
そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。
そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。
そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。

王命って何ですか?
まるまる⭐️
恋愛
その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。
貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。
現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。
人々の関心を集めないはずがない。
裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。
「私には婚約者がいました…。
彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。
そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。
ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」
裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。
だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。
彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。
次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。
裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。
「王命って何ですか?」と。
✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。

知らない人に「お前とは婚約破棄をする」と言われました。私の婚約者は貴方じゃありません。
あお
恋愛
エリスが学園のカフェテラスで人を待っていたら、見知らぬ男女がやってきて。
「お前と婚約破棄して、ユリアと結婚する。もう決めた事だ。ヴェラー伯爵には話をつけてある。ユリアを妻として、俺が婿養子に入るって事をな」
と婚約破棄を宣言した。
誰かとお間違えでないですか?
いや、でも女の方、面影があるわ。
お母様が亡くなった後、喪が明ける前に元父が連れ込んだ愛人の子。
ヴェラー家とは縁を切ったはずなのに、これはなんの嫌がらせかしら。
私は、アウリーデ公爵令嬢。
あなた達、こんな公衆の面前で、公爵令嬢を侮辱して、ただで済むとは思わないことね。
遅れてやって来たエリスの婚約者ルイス。
エリスを完璧にエスコートしながら、エリスに喧嘩を売った二人に格の違いを見せつけつつ誤解を解いていく。
元実家のトラブルに巻き込まれたエリスと、彼女の婚約者ルイス。愚かなお猿さんたちの話。
全7話完結。予約投稿済です。
下げ渡された婚約者
相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。
しかしある日、第一王子である兄が言った。
「ルイーザとの婚約を破棄する」
愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。
「あのルイーザが受け入れたのか?」
「代わりの婿を用意するならという条件付きで」
「代わり?」
「お前だ、アルフレッド!」
おさがりの婚約者なんて聞いてない!
しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。
アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。
「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」
「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

人の顔色ばかり気にしていた私はもういません
風見ゆうみ
恋愛
伯爵家の次女であるリネ・ティファスには眉目秀麗な婚約者がいる。
私の婚約者である侯爵令息のデイリ・シンス様は、未亡人になって実家に帰ってきた私の姉をいつだって優先する。
彼の姉でなく、私の姉なのにだ。
両親も姉を溺愛して、姉を優先させる。
そんなある日、デイリ様は彼の友人が主催する個人的なパーティーで私に婚約破棄を申し出てきた。
寄り添うデイリ様とお姉様。
幸せそうな二人を見た私は、涙をこらえて笑顔で婚約破棄を受け入れた。
その日から、学園では馬鹿にされ悪口を言われるようになる。
そんな私を助けてくれたのは、ティファス家やシンス家の商売上の得意先でもあるニーソン公爵家の嫡男、エディ様だった。
※マイナス思考のヒロインが周りの優しさに触れて少しずつ強くなっていくお話です。
※相変わらず設定ゆるゆるのご都合主義です。
※誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません!

婚約破棄されましたが、私はあなたの婚約者じゃありませんよ?
柴野
恋愛
「シャルロット・アンディース公爵令嬢!!! 今ここでお前との婚約を破棄するッ!」 ある日のこと、学園の新入生歓迎パーティーで婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロット。でも……。 「私はあなたの婚約者じゃありませんよ? どなたかとお間違いなのでは? ――そこにいる女性があなたの婚約者だと思うのですが」 「え!?」 ※ざまぁ100%です。
※小説家になろう、カクヨムに重複投稿しています。


【完結済み】婚約破棄したのはあなたでしょう
水垣するめ
恋愛
公爵令嬢のマリア・クレイヤは第一王子のマティス・ジェレミーと婚約していた。
しかしある日マティスは「真実の愛に目覚めた」と一方的にマリアとの婚約を破棄した。
マティスの新しい婚約者は庶民の娘のアンリエットだった。
マティスは最初こそ上機嫌だったが、段々とアンリエットは顔こそ良いが、頭は悪くなんの取り柄もないことに気づいていく。
そしてアンリエットに辟易したマティスはマリアとの婚約を結び直そうとする。
しかしマリアは第二王子のロマン・ジェレミーと新しく婚約を結び直していた。
怒り狂ったマティスはマリアに罵詈雑言を投げかける。
そんなマティスに怒ったロマンは国王からの書状を叩きつける。
そこに書かれていた内容にマティスは顔を青ざめさせ……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる