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マーガレット・アンクール辺境伯令嬢の場合
12 私の婚約事情―心から叫ぶ事は
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「ガルディが辺境の地を治めるなんて、無理な事です!!」
これが、我が領地で彼に接した人達の総意だった。
しかし政略の上の約束事であっても、当主達が婚姻の約束を交わしてしまった。
返品交換しようにも、ローディング侯爵の上二人の息子は結婚済み。
「上二人は立派に成長した若者なのだがな……」
資質なのか、年の離れた末息子の教育をサボったのか。
多分両方だろうと思われるが、とにかくあれに辺境伯の地位など与えれば、我が家は没落一直線だろう。
あまりに酷い相手に、無理と分かっていても聞かずにはいられなかった。
「お父様、この婚約はどうしても続けなければならないのですか?」
「……婚約を条件に出して来たのは侯爵だ。私としては、今回であの三男がこの地に合わないことが判明した。逃げ帰る位なのだから、白紙に戻し私の提案を受け入れると思ったのだがな」
「お父様のご提案は、どのようなものなのでしょう?」
「なに、簡単な事だ。私を寄子として派閥に入れる口実を若輩だからとすれば良い。それなら派閥が落ち着いたなら私も役目終了で抜けれるしな」
「若輩……ですか?」
「そう次期侯爵の嫡男は、王太子の側近になれる位出来が良い。ロンダース公爵に色々押し付けられる位なら、代替わりを勧めたのだ。即座に却下されたがな」
あれだけ愚痴を言う位なら、侯爵を降り肩の荷を下ろせば良いものを、と父は小声で呟いた。
侯爵は、まだまだ頑張りたいらしい。
「代が変わると公爵との血縁関係も薄れる。新しい派閥には次期侯爵の嫁舅の伯爵もいる。新しい血縁と近くの地縁。二人で地盤を固める手伝いをするという口実は、理にかなっていると思うのだがな」
「そうかも知れませんが、その案は……」
「そう、外聞を考えると些か悪い。まとめる力がないように見られ、以後侮られかねない。政略結婚の方が何かと周りを説明する際、手軽に納得されやすいからな」
それではこちらから破棄にした上で、寄子として派閥に留まる事は出来ないだろう。
陛下の頼みが叶えられず、侯爵の私怨を買うだけだ。
私に出来ることは、ガルディが成長して少しでもマシになる事を祈る!のみ。
……望みは薄すぎるけれども。
そして父がとった行動は、結果私の婚期を遅らせることになった。
父がガルディを見定める前の計画では、二年後ガルディが十六になり結婚が可能になれば、すぐにでも結婚させる。
そして、我がアンクール辺境伯家として、王城勤めをしてもらう予定だった事だろう。
私に話をした後、父は侯爵とも直接話し合う為王都に向かった。
その後私は王都に呼ばれ、今王城で働いている。
これが、我が領地で彼に接した人達の総意だった。
しかし政略の上の約束事であっても、当主達が婚姻の約束を交わしてしまった。
返品交換しようにも、ローディング侯爵の上二人の息子は結婚済み。
「上二人は立派に成長した若者なのだがな……」
資質なのか、年の離れた末息子の教育をサボったのか。
多分両方だろうと思われるが、とにかくあれに辺境伯の地位など与えれば、我が家は没落一直線だろう。
あまりに酷い相手に、無理と分かっていても聞かずにはいられなかった。
「お父様、この婚約はどうしても続けなければならないのですか?」
「……婚約を条件に出して来たのは侯爵だ。私としては、今回であの三男がこの地に合わないことが判明した。逃げ帰る位なのだから、白紙に戻し私の提案を受け入れると思ったのだがな」
「お父様のご提案は、どのようなものなのでしょう?」
「なに、簡単な事だ。私を寄子として派閥に入れる口実を若輩だからとすれば良い。それなら派閥が落ち着いたなら私も役目終了で抜けれるしな」
「若輩……ですか?」
「そう次期侯爵の嫡男は、王太子の側近になれる位出来が良い。ロンダース公爵に色々押し付けられる位なら、代替わりを勧めたのだ。即座に却下されたがな」
あれだけ愚痴を言う位なら、侯爵を降り肩の荷を下ろせば良いものを、と父は小声で呟いた。
侯爵は、まだまだ頑張りたいらしい。
「代が変わると公爵との血縁関係も薄れる。新しい派閥には次期侯爵の嫁舅の伯爵もいる。新しい血縁と近くの地縁。二人で地盤を固める手伝いをするという口実は、理にかなっていると思うのだがな」
「そうかも知れませんが、その案は……」
「そう、外聞を考えると些か悪い。まとめる力がないように見られ、以後侮られかねない。政略結婚の方が何かと周りを説明する際、手軽に納得されやすいからな」
それではこちらから破棄にした上で、寄子として派閥に留まる事は出来ないだろう。
陛下の頼みが叶えられず、侯爵の私怨を買うだけだ。
私に出来ることは、ガルディが成長して少しでもマシになる事を祈る!のみ。
……望みは薄すぎるけれども。
そして父がとった行動は、結果私の婚期を遅らせることになった。
父がガルディを見定める前の計画では、二年後ガルディが十六になり結婚が可能になれば、すぐにでも結婚させる。
そして、我がアンクール辺境伯家として、王城勤めをしてもらう予定だった事だろう。
私に話をした後、父は侯爵とも直接話し合う為王都に向かった。
その後私は王都に呼ばれ、今王城で働いている。
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