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マーガレット・アンクール辺境伯令嬢の場合

5 言葉の意味の受け取り方

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ビオラ嬢の一言で、部屋の空気は一変した。

彼女は、ガルディが爵位を賜るとも言っていた。

そこで皆、こう考えたのだ。
ローディング侯爵家の後継者・・・・・・・・・・・・・が変わったのだと。

この派閥は立ち上げてそれ程の時が経っていない。
次期寄親の人柄も考慮に入れて、加入した貴族も多いだろう。

前提が崩れる……。


貴族達が口々に問い始めた。

「それは本当の事でしょうか?」
「そのような事は聞いていないのですが」
「我々の知らぬ間に……」

「嫡男が病気になったとか?」
「いや、ここに来る前にお会いした。王太子の執務室で仕事をしている筈だ」

「ローディング侯爵はまだか?」
「とにかく事実確認を……」


その間に、リリーはサラサラと書面をしたため、私に渡した。

私は、お茶出しの為貴族の間にいたメイドのクレマの所へと行き、その書面を渡す。
それと同時に、王太子の許可後次期ローディング侯爵を呼ぶ様に小声で指示をした。

未だ部屋入口に陣取っている二人を横目に、クレマはするりと部屋を抜け出て行く。
それに続いて、数人どこかの従者も部屋を出て行った。

てっきり、入口でひと悶着あるかと思っていたが拍子抜けだった。

ただ私が部屋の片隅から中央へと動いた事で、ガルディが私を睨みつけ、ひたすら注視している。

視線が痛い。
こんなに真剣に見つめられたのなんて、婚約してから初めてかもしれない。

私が今から、何かをすると思っているのだろうか?

しかし、先程横を通ったクレマには気を払っていなかった。
クレマに細工等何かを頼んだとは、思わなかったのか?

本当に騎士見習いとして、王城に上がってから何を学んでいるのやら、何とも不思議な事だ。


「そう言えばガルディ、貴方騎士見習いの仕事はどうしたのです?」
「俺程の傑物になると、雑用は代わってくれる奴らがごまんといるんだよ。お前と違ってな」

つまり、爵位を傘に人に仕事を押し付けてきたと。

「お前もとっとと婚約破棄に了承し、俺達を祝福しろ。祝儀代わりにたっぷり慰謝料は貰うがな!」

何かを思い出したのか、憎々しげに告げられた。

「私は父の意見に従いますわ。詳しくは父とお話ください。では私は仕事中ですので、控えさせて頂きます」

貴族達のざわめきよりも大きく、ぎゃあぎゃあと騒ぐガルディを尻目に元の場所に戻った。

あいにく、私は今仕事中だ。

王城で働く者として、騎士見習いの仕事の有無を聞くのは許される範囲だろう。


しかし、婚約破棄に関しては家の問題。
私は、父や他の貴族から意見を求められてはいない。

ガルディと違って仕事を放棄して、戯れ言に付き合うつもりはない。


ちらりと父を見ると「任せろ」と言わんばかりに力強く頷いてくれた。

婿がねを教育しようとしていた父は、私よりガルディとの接点が多い。
言いたい事も多いだろう。

こんな厄介な婚約者を宛てがったのだから、最後の面倒も責任をもって見てくれるらしい。


頼もしい限りだ。



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