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マーガレット・アンクール辺境伯令嬢の場合

3 お相手は明白な違反行為中

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それにしても、私は今回のお相手ビオラ・ロンダース子爵令嬢を知らない。
ガルディとの会話の中にも、それらしき人はいなかったはずだ。
でも、少なすぎて参考にならないかな……。

「リリー。貴方はビオラ・ロンダース子爵令嬢を知っているかしら?」

私は、後ろにいるリリーに聞いてみた。

「えぇ、今年デビューしたばかりの十四歳の令嬢ね。まだ一人で登城出来る年齢ではないわよ。保護者は今どこかしらね。親ならロンダース子爵ご夫妻、祖父母ならロンダース公爵ご夫妻だけど」

ふふふと、黒い笑みが浮かんでいそうな声でリリーが答えてくれた。
ビオラ嬢が、保護者なしで城を彷徨うろつく事は明白な違反行為。
王太子の婚約者としては見過ごせないのだろう。


王城へ上がるには家長の許可がいる。
それは当たり前の事だろう。
王城はこの国の施政の中心であり、他国の貴賓が訪れるところ、遊び場ではない。

何か問題が起きた場合、それはそのまま家の評価に繋がる。
貴族教育が終わっていることは最低限の事。
国としての重要人物を覚え、粗相をしない。
何か不測の事態が起きても、『対応出来る』と家長が判断してから送り出す。

それでも問題を起こしたら?
それは家長の見る目がないだけの事と思われたり、仕方がないと思われたり、その時の状況によるだろう。

そして見る目がないと思われた家が落ちぶれようが、周りは当然と思う。
上位貴族である程、判断は厳しくなりがちだった。
それだけの教育にかける財力も、貴族としての責任もあるのだから。

その為、王城側でも一定の決まりがある。
登城は十六歳以上と年齢制限があるのだ。

しかし、例外が存在する。
14歳のデビュタントから始まる、保護者との同伴登城だ。

この国の貴族は皆、デビュタントが初登城だ。
この日は大抵の者が緊張して、普段とは違う失敗をする為、大目に見られる。

その代表の失敗が迷子だ。

「デビュタントの日に少しやらかしまして」

というのは、その後の笑い話になる事も多い。

デビュタントが済めば次は保護者同伴。
将来王城で働く場合の職場見学や、親の手伝い等がある。

保護者がいるなら大丈夫だろう。
何かあれば、保護者が対応するのだから。
その為に保護者から離れない、というのが基本。
保護者も目を決して離さないというのが鉄則だけれど、今回のビオラ嬢は誰の目を盗んできたのだろう。


それに、ロンダース公爵というと、この派閥が形成される前にここの貴族の大半が所属していた所なのだが……。

皆馴染みで、ガルディも勝算があると思っているのだろう。
今は、再び注目された事で満足気だ。




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