婚約破棄と言うなら「時」と「場所」と「状況」を考えましょうか

ゆうぎり

文字の大きさ
4 / 14
マーガレット・アンクール辺境伯令嬢の場合

3 お相手は明白な違反行為中

しおりを挟む
それにしても、私は今回のお相手ビオラ・ロンダース子爵令嬢を知らない。
ガルディとの会話の中にも、それらしき人はいなかったはずだ。
でも、少なすぎて参考にならないかな……。

「リリー。貴方はビオラ・ロンダース子爵令嬢を知っているかしら?」

私は、後ろにいるリリーに聞いてみた。

「えぇ、今年デビューしたばかりの十四歳の令嬢ね。まだ一人で登城出来る年齢ではないわよ。保護者は今どこかしらね。親ならロンダース子爵ご夫妻、祖父母ならロンダース公爵ご夫妻だけど」

ふふふと、黒い笑みが浮かんでいそうな声でリリーが答えてくれた。
ビオラ嬢が、保護者なしで城を彷徨うろつく事は明白な違反行為。
王太子の婚約者としては見過ごせないのだろう。


王城へ上がるには家長の許可がいる。
それは当たり前の事だろう。
王城はこの国の施政の中心であり、他国の貴賓が訪れるところ、遊び場ではない。

何か問題が起きた場合、それはそのまま家の評価に繋がる。
貴族教育が終わっていることは最低限の事。
国としての重要人物を覚え、粗相をしない。
何か不測の事態が起きても、『対応出来る』と家長が判断してから送り出す。

それでも問題を起こしたら?
それは家長の見る目がないだけの事と思われたり、仕方がないと思われたり、その時の状況によるだろう。

そして見る目がないと思われた家が落ちぶれようが、周りは当然と思う。
上位貴族である程、判断は厳しくなりがちだった。
それだけの教育にかける財力も、貴族としての責任もあるのだから。

その為、王城側でも一定の決まりがある。
登城は十六歳以上と年齢制限があるのだ。

しかし、例外が存在する。
14歳のデビュタントから始まる、保護者との同伴登城だ。

この国の貴族は皆、デビュタントが初登城だ。
この日は大抵の者が緊張して、普段とは違う失敗をする為、大目に見られる。

その代表の失敗が迷子だ。

「デビュタントの日に少しやらかしまして」

というのは、その後の笑い話になる事も多い。

デビュタントが済めば次は保護者同伴。
将来王城で働く場合の職場見学や、親の手伝い等がある。

保護者がいるなら大丈夫だろう。
何かあれば、保護者が対応するのだから。
その為に保護者から離れない、というのが基本。
保護者も目を決して離さないというのが鉄則だけれど、今回のビオラ嬢は誰の目を盗んできたのだろう。


それに、ロンダース公爵というと、この派閥が形成される前にここの貴族の大半が所属していた所なのだが……。

皆馴染みで、ガルディも勝算があると思っているのだろう。
今は、再び注目された事で満足気だ。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い

猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」 「婚約破棄…ですか」 「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」 「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」 「はぁ…」 なんと返したら良いのか。 私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。 そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。 理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。 もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。 それを律儀に信じてしまったというわけだ。 金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】よりを戻したいですって?  ごめんなさい、そんなつもりはありません

ノエル
恋愛
ある日、サイラス宛に同級生より手紙が届く。中には、婚約破棄の原因となった事件の驚くべき真相が書かれていた。 かつて侯爵令嬢アナスタシアは、誠実に婚約者サイラスを愛していた。だが、サイラスは男爵令嬢ユリアに心を移していた、 卒業パーティーの夜、ユリアに無実の罪を着せられてしまったアナスタシア。怒ったサイラスに婚約破棄されてしまう。 ユリアの主張を疑いもせず受け入れ、アナスタシアを糾弾したサイラス。 後で真実を知ったからと言って、今さら現れて「結婚しよう」と言われても、答えは一つ。 「 ごめんなさい、そんなつもりはありません」 アナスタシアは失った名誉も、未来も、自分の手で取り戻す。一方サイラスは……。

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?

榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」 “偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。 地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。 終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。 そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。 けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。 「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」 全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。 すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく―― これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。

【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

処理中です...