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国境へ
15 国境門
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今私の目の前には、国境門がそびえている。
来るまでの道程で、私は水晶を使われたくない事を告げている。
その上で、五人にこのまま乗り続けるかどうか確認していた。
その際、アビィは無言で頷いた。
「私も、家出中だからね。このまま国出ちゃおう!」
「……いいよ」
「私達も構いませんよ。国境門まででも助かりますから」
「私は博打は強いからな。賭けよう」
ローラ、フィル、レニー、リュドの順に返事が返ってくる。
「あれ~、その割にちょっとの差でこの騒動に巻き込まれたって言ってたじゃない」
「ふんうるさいな、たまたま調子が悪かっただけだ」
気がつけば、ローラとリュドは賑やかに後ろで騒ぎ始めた。
フィルはまた始まったとばかりに呆れ、レニーは「二人元気ですね」と言いながら傍観している。
「そういうことだから、手続き頼む」
「坊ちゃんも人使いが荒いですね。まあいいでしょう。そっちの護衛さんも情報料って事で、協力よろしく」
そんな話をしながら、何かを確認する様に男は一瞬手網に触れた。
「はぁ、分かった。主に伝えておく」
「じゃあ、ひとっ走りして来ま~す」
護衛の返事を聞き、男は屋根の上をぴょんぴょんと飛んで行った。
私は今一つ、男のやり取りが分からないがアビィは「心配ないよ」と笑った。
「ではアビィ。俺も一旦下がるが、何かあったら言えよな」
「あまり貸しは作りたくないんだけどな。何かあったら協力頼むよ」
後ろの護衛の人は、アビィと挨拶を交わし後ろの護衛に戻って行った。
「おっ、間に合った~。坊ちゃんこれ、取ってきましたよ」
国境門に入る手前で、男がまたもや上から降ってきた。
「思ったより遅かったな」
「無茶言わんでください。この騒ぎで混んでいたんですよ。はい、確認して下さい」
男が見せた、少し傷んだ書状には『仮・試運転中・馭者見習い』から始まり『クローディル国ブルンデン商人連合』と最後に書かれ押印があった。
見習い者の名前は書かれておらず、私は正式に使えるかわからないと思った。
「引っ掴んできました。偉いでしょう」
「偉い偉い。で、会長は何か言ってたか?」
「参りましたよ~。色々愚痴られました」
二人は情報交換をしていたが、私が書状を凝視していたのにアビィが気付き説明してくれた。
こういう場合に使う羊皮紙は高く、使い回すのが普通で名前は書かないとの事。
「それで、こんなに書状がくたびれているのですね」
「見習いなんて、いくらでもいるからな。いちいち書いていられないし、羊皮紙代を見習いに請求するには厳しいんだよな」
「そうそう、それに分かる者には分かるんですよ。例えば、普通こういう場合坊ちゃんが馭者を引き受けるのにしてない。さっき手網を触ったら馬に睨まれちまったから、理由なんて明白だ。随分と賢い馬を使っているんだなと」
男はにこにこしながら、再度手網を触ろうとしたが、その前に馬に威嚇されていた。
隣でアビィが「相変わらず、動物に嫌われてるなぁ」と笑っていた。
「そろそろ国境門が閉まる時間ですが、間に合いそうですね。では坊ちゃん、騎士に会ったら適当に妨害するので安心して下さい」
そう言って男は去って行った。
長い国境門の入口でも、街門と同じ魔道具が設置されていた。
私は逃げ切れたんだと、ほっとした矢先の事だった。
魔道具の下を通った所で、後方から声が響き渡った。
「進行止まれ!人も馬車止まれ!門番、門兵何をしている。何勝手にしている。止まらせろ!」
拡声の魔術を使い、告げられた言葉で私は青ざめた。
前も後ろも馬車が詰まり、逃げようにも身動きが取れない。
「坊ちゃんすみません。妨害間に合わなかった~」
そんな男の声が、遠くからうっすらと聞こえた。
来るまでの道程で、私は水晶を使われたくない事を告げている。
その上で、五人にこのまま乗り続けるかどうか確認していた。
その際、アビィは無言で頷いた。
「私も、家出中だからね。このまま国出ちゃおう!」
「……いいよ」
「私達も構いませんよ。国境門まででも助かりますから」
「私は博打は強いからな。賭けよう」
ローラ、フィル、レニー、リュドの順に返事が返ってくる。
「あれ~、その割にちょっとの差でこの騒動に巻き込まれたって言ってたじゃない」
「ふんうるさいな、たまたま調子が悪かっただけだ」
気がつけば、ローラとリュドは賑やかに後ろで騒ぎ始めた。
フィルはまた始まったとばかりに呆れ、レニーは「二人元気ですね」と言いながら傍観している。
「そういうことだから、手続き頼む」
「坊ちゃんも人使いが荒いですね。まあいいでしょう。そっちの護衛さんも情報料って事で、協力よろしく」
そんな話をしながら、何かを確認する様に男は一瞬手網に触れた。
「はぁ、分かった。主に伝えておく」
「じゃあ、ひとっ走りして来ま~す」
護衛の返事を聞き、男は屋根の上をぴょんぴょんと飛んで行った。
私は今一つ、男のやり取りが分からないがアビィは「心配ないよ」と笑った。
「ではアビィ。俺も一旦下がるが、何かあったら言えよな」
「あまり貸しは作りたくないんだけどな。何かあったら協力頼むよ」
後ろの護衛の人は、アビィと挨拶を交わし後ろの護衛に戻って行った。
「おっ、間に合った~。坊ちゃんこれ、取ってきましたよ」
国境門に入る手前で、男がまたもや上から降ってきた。
「思ったより遅かったな」
「無茶言わんでください。この騒ぎで混んでいたんですよ。はい、確認して下さい」
男が見せた、少し傷んだ書状には『仮・試運転中・馭者見習い』から始まり『クローディル国ブルンデン商人連合』と最後に書かれ押印があった。
見習い者の名前は書かれておらず、私は正式に使えるかわからないと思った。
「引っ掴んできました。偉いでしょう」
「偉い偉い。で、会長は何か言ってたか?」
「参りましたよ~。色々愚痴られました」
二人は情報交換をしていたが、私が書状を凝視していたのにアビィが気付き説明してくれた。
こういう場合に使う羊皮紙は高く、使い回すのが普通で名前は書かないとの事。
「それで、こんなに書状がくたびれているのですね」
「見習いなんて、いくらでもいるからな。いちいち書いていられないし、羊皮紙代を見習いに請求するには厳しいんだよな」
「そうそう、それに分かる者には分かるんですよ。例えば、普通こういう場合坊ちゃんが馭者を引き受けるのにしてない。さっき手網を触ったら馬に睨まれちまったから、理由なんて明白だ。随分と賢い馬を使っているんだなと」
男はにこにこしながら、再度手網を触ろうとしたが、その前に馬に威嚇されていた。
隣でアビィが「相変わらず、動物に嫌われてるなぁ」と笑っていた。
「そろそろ国境門が閉まる時間ですが、間に合いそうですね。では坊ちゃん、騎士に会ったら適当に妨害するので安心して下さい」
そう言って男は去って行った。
長い国境門の入口でも、街門と同じ魔道具が設置されていた。
私は逃げ切れたんだと、ほっとした矢先の事だった。
魔道具の下を通った所で、後方から声が響き渡った。
「進行止まれ!人も馬車止まれ!門番、門兵何をしている。何勝手にしている。止まらせろ!」
拡声の魔術を使い、告げられた言葉で私は青ざめた。
前も後ろも馬車が詰まり、逃げようにも身動きが取れない。
「坊ちゃんすみません。妨害間に合わなかった~」
そんな男の声が、遠くからうっすらと聞こえた。
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