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幕間―別視点【四人ピックアップ】
何かがおかしいのだろうか……(後編)
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エイヴァリーズ公爵夫人の妊娠初期時に王宮にある魔道具が反応した。
これは過去我が国の教訓から生み出された王国の秘宝の一つであり、余程魔力が高い者が宿らないと反応はしなかった。
これで、女児が産まれたなら王太子の婚約者とする旨決まった。
大切に大切に育まれた胎児がどうやら双子だという事が分かり、出産にもより万全の体制が整えられた。
そんな中、マリアーヌは大層難産で産まれた。
王宮で火急の事案が発生し、随分遅れてエイヴァリーズ公爵邸に着いた。
そしてまず告げられた言葉は「母子ともに危険」だった。
それでも産まれたといわれ産室に入ったが、夫人は気を失い若い産婆が赤子の背を叩いていた。
赤子が何かを吐き出したと思えば、一気に魔力が押し寄せてきた。
余りの勢いに余がふらついた位だ。
満場一致に将来の王太子妃が決まった瞬間だった。
上機嫌に産室を出たが、王宮から「急ぎお戻りください」と侍従が宰相からの伝言を持ってきており、余韻を味わう暇もなく場を去った。
「お二人共無事お産まれになったのですね」
王宮に戻る最中の侍従の言葉で、双子だったと思い至った。
今からすぐに戻るか?しかし、立派な婚約者はもう決まり、国の大事な事案は待ってはくれない。
余は国政を取り、侍従に急ぎまだ残っている妃や王族にもう一人に会っておく様に指示をした。
「もう一人の方は驚く程魔力を感じませんでした。あれは駄目ですわ」
王宮に戻ってきた妃が感想を言った。
余はこれも義務だと思い再度訪問したが、同じ感想を抱いた。
念の為この件は調査させた。
当時夫人は予定より早い陣痛が突然襲いよろめき、庇った産婆が負傷していた。
主戦力が欠けた産室で混乱はあったのだろう。
来ていた王宮魔術師長にも確認され、治癒魔術は夫人と赤子にまとめて使った一度だけだとの返答だった。
そして、報告書には「姉はマリアーヌの半日も前に産まれ、放置された」という記述はどこにもなかった。
もし、この記述があったなら全ての前提が違った事に気付いただろう。
産まれたばかりの魔力ある家の赤子が、半日放置され生きている意味。
一体この赤子は庇護を求め、どれ程の魔力を放出し続けた事だろう。
枯れたのは魔力だけなのか?
王国の最重要極秘機密の中に、最も危険な方法としてあったのだが、この時の余は知る由もなかった。
余と妃と公爵家は姉リディアーヌについて相談した。
元々魔力が少ないのか、出産後に魔力を放出した時点で王宮魔術師長の魔力の余波がかかってしまったのかの見極めは、八歳の魔力解放で確認する。
それまでは、次期公爵として育てる。
公爵は姉のいた部屋は、外部の魔力遮断が完璧な部屋なので魔術師長の魔力は掛かっていないと主張しており、この決定に随分不服の様だった。
そして八歳の魔力解放時の余りの魔力の低さに失望し、姉を見捨てる事に決めたようだ。
妃と何やら約束をしていたが、昨今上位貴族は何度も出産するのを厭う傾向にある。
随分大変だからな。
実際余も息子も兄弟はおらん。
マリアーヌは何人も産んでくれるだろうか?
宰相から翌日、極秘に公爵家の部隊と一部王太子の部隊を貸出捜索に当たると報告があった。
そして、この日から王宮の機能がおかしくなっていった。
「儀典長、一月後の帝国との会合の準備は順調か?」
「はい、順調にございます陛下。つきましてはこちらをご覧下さい。陛下に覚えて頂きたく存じます」
「ふむ、…………儀典長、なんだこれは!書き損じの物を持ってきたのか?」
上二枚に表紙と簡潔な内容が書かれた以外は、白紙の紙がそこにあった。
「そんなはずは……申し訳ございません。今すぐ確認して参ります。いつもは完璧に仕上げていましたので、確認を怠ってしまいました」
いつも任せていたのは、優秀だと評判の男でエイヴァリーズ公爵家推薦で王宮に出仕し、将来マリアーヌの脇を固める者だという。
儀典長が去った後、臣下が誰も来ず暇になった。
「今日は随分と空きの時間があるな」
「陛下、皆が今回の帝国の訪問の意味を分かっているのでしょう。その資料作成が佳境なのかも知れません」
「そうだな、では忙しくなる前に散歩でもしてこようか」
この時気持ちを穏やかに庭園へ行き、久方ぶりに妃とゆっくりお茶を飲んだ。
嵐の前触れとも知らずに……
これは過去我が国の教訓から生み出された王国の秘宝の一つであり、余程魔力が高い者が宿らないと反応はしなかった。
これで、女児が産まれたなら王太子の婚約者とする旨決まった。
大切に大切に育まれた胎児がどうやら双子だという事が分かり、出産にもより万全の体制が整えられた。
そんな中、マリアーヌは大層難産で産まれた。
王宮で火急の事案が発生し、随分遅れてエイヴァリーズ公爵邸に着いた。
そしてまず告げられた言葉は「母子ともに危険」だった。
それでも産まれたといわれ産室に入ったが、夫人は気を失い若い産婆が赤子の背を叩いていた。
赤子が何かを吐き出したと思えば、一気に魔力が押し寄せてきた。
余りの勢いに余がふらついた位だ。
満場一致に将来の王太子妃が決まった瞬間だった。
上機嫌に産室を出たが、王宮から「急ぎお戻りください」と侍従が宰相からの伝言を持ってきており、余韻を味わう暇もなく場を去った。
「お二人共無事お産まれになったのですね」
王宮に戻る最中の侍従の言葉で、双子だったと思い至った。
今からすぐに戻るか?しかし、立派な婚約者はもう決まり、国の大事な事案は待ってはくれない。
余は国政を取り、侍従に急ぎまだ残っている妃や王族にもう一人に会っておく様に指示をした。
「もう一人の方は驚く程魔力を感じませんでした。あれは駄目ですわ」
王宮に戻ってきた妃が感想を言った。
余はこれも義務だと思い再度訪問したが、同じ感想を抱いた。
念の為この件は調査させた。
当時夫人は予定より早い陣痛が突然襲いよろめき、庇った産婆が負傷していた。
主戦力が欠けた産室で混乱はあったのだろう。
来ていた王宮魔術師長にも確認され、治癒魔術は夫人と赤子にまとめて使った一度だけだとの返答だった。
そして、報告書には「姉はマリアーヌの半日も前に産まれ、放置された」という記述はどこにもなかった。
もし、この記述があったなら全ての前提が違った事に気付いただろう。
産まれたばかりの魔力ある家の赤子が、半日放置され生きている意味。
一体この赤子は庇護を求め、どれ程の魔力を放出し続けた事だろう。
枯れたのは魔力だけなのか?
王国の最重要極秘機密の中に、最も危険な方法としてあったのだが、この時の余は知る由もなかった。
余と妃と公爵家は姉リディアーヌについて相談した。
元々魔力が少ないのか、出産後に魔力を放出した時点で王宮魔術師長の魔力の余波がかかってしまったのかの見極めは、八歳の魔力解放で確認する。
それまでは、次期公爵として育てる。
公爵は姉のいた部屋は、外部の魔力遮断が完璧な部屋なので魔術師長の魔力は掛かっていないと主張しており、この決定に随分不服の様だった。
そして八歳の魔力解放時の余りの魔力の低さに失望し、姉を見捨てる事に決めたようだ。
妃と何やら約束をしていたが、昨今上位貴族は何度も出産するのを厭う傾向にある。
随分大変だからな。
実際余も息子も兄弟はおらん。
マリアーヌは何人も産んでくれるだろうか?
宰相から翌日、極秘に公爵家の部隊と一部王太子の部隊を貸出捜索に当たると報告があった。
そして、この日から王宮の機能がおかしくなっていった。
「儀典長、一月後の帝国との会合の準備は順調か?」
「はい、順調にございます陛下。つきましてはこちらをご覧下さい。陛下に覚えて頂きたく存じます」
「ふむ、…………儀典長、なんだこれは!書き損じの物を持ってきたのか?」
上二枚に表紙と簡潔な内容が書かれた以外は、白紙の紙がそこにあった。
「そんなはずは……申し訳ございません。今すぐ確認して参ります。いつもは完璧に仕上げていましたので、確認を怠ってしまいました」
いつも任せていたのは、優秀だと評判の男でエイヴァリーズ公爵家推薦で王宮に出仕し、将来マリアーヌの脇を固める者だという。
儀典長が去った後、臣下が誰も来ず暇になった。
「今日は随分と空きの時間があるな」
「陛下、皆が今回の帝国の訪問の意味を分かっているのでしょう。その資料作成が佳境なのかも知れません」
「そうだな、では忙しくなる前に散歩でもしてこようか」
この時気持ちを穏やかに庭園へ行き、久方ぶりに妃とゆっくりお茶を飲んだ。
嵐の前触れとも知らずに……
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