24 / 42
幕間―別視点【四人ピックアップ】
何かがおかしいのだろうか……(前編)
しおりを挟む
―――クローディル国王視点
部屋の中から赤子の元気な泣き声が聞こえた。
「元気な男の子です。さあ陛下、是非ご覧下さいませ」
「うむ」
一声頷き産室に入り、赤子の顔を見た。
他の国では驚かれる事だが、我がクローディルでは国王自らが赤子の出産を見守る。
これは大事な王族の仕事だ。
勿論全てに立ち会える訳ではない。
忙しい我が身だからな。
将来国政に関わる上位の家の者を厳選しておる。
産まれたての赤子から、魔力が放出しているのが分かる。
その魔力を受け取り、赤子は余が差し出した魔力を引き寄せる。
これでこの子は、余をこの国を大切に思うだろう。
赤子は部屋の中の大人達と交換していたが、交換の魔力はかなり薄い。
この子は余り力がないのかもな。
目安ではあるが余の経験上そう感じた。
しかし元気に産まれた子ならば、体内にある魔力が一旦無くなっても、また溜め少しづつ親との絆は強まるだろう。
他者の魔術をかけられるまでは。
最近は初手から魔力が高いと感じる者が減ったな、と思いながら王宮へ戻る馬車に乗った。
赤子には不思議な力がある。
一人では生きていけない故に相手側に保護を求め、愛護を願う。
一種の魅了とも言われる力だ。
我が国はあえて赤子の力を受け入れる事を選んだ。
その代わり赤子にも我が国の益になってもらう。
それは過去、我が国の歴史にあった。
魔力の高い者に狼藉者が増え、混沌と殺伐を好む者達で荒れた。
それと同時に愛国心を胸に秘め、魔力に満ちた偉大な魔術師達がその者達を抑え込んだ。
この図式は長く続いた。
問題は両方が同じ一族であったり、近親者であった事。
このままでは、魔力が強い事は危険な事とされかねない。
王族は勿論の事、上位貴族は皆魔力が高い。
これは個人の資質の問題と片付けるには、あまりにも異質だった。
危機感を持ち徹底的に調べられ分かった事は、腹の中で大きくなっていく過程と産まれた赤子の状態だった。
他者の魔術を受けると変化を起こす。
臨月に近づく程に影響が大きく、産まれた直後が頂点となる。
赤子が自ら魔力を放出しないと、本来持っている力が歪むのだろう。
赤子の保護を訴える魔力が消えたり、場合によっては反転する。
結果放置や無関心ならいい方で、とても言葉には表せられない状態の養育課程を経て大人になっていく。
しかしこれでは、性格が歪むのは当然だった。
そしてそれは、魔力の存在能力の高いもの程顕著だった。
将来上位になり得る、魔力の持ち主に対しての危機感もあったのやもしれない。
この事は最重要極秘機密として、王族でも一部の者が知るのみだ。
余も成人した三年後、子が出来てから教えられた。
理由は簡単だ。
歪んで育った者は、稀にありえない魔力を発現させるからだ。
今でも何処かの暗殺集団が、残酷な育て方をしている等の噂も聞くが調べると大概自滅している。
子は慈しんで育てるものだ。
ただ、このやり方も完璧ではない。
魔力の加減も知らない赤子から受ける魔力は、受け取る者の技量にも左右されるからな。
魔力が高い者は求めるが、魔力が強いだけの人格破綻者など我が国に必要ない。
甘くなりがちな子供時代を過ごそうと、この国を支える余の子供達には幸せになって欲しいものだ。
そんな事を思いながら、王宮へ戻ってみれば宰相が血相を変えていた。
「陛下、エイヴァリーズ公爵家から緊急の知らせが来ております」
「何かあったのか?」
あの家は優秀な息子の婚約者がいる家だ。
宰相から手紙を受け取り、呆れ返った。
「不出来な姉が学園を退学となったようだ。それを苦に出奔とは人騒がせな。優しいマリアーヌが気に病んでいるので、捜索隊を出したいだと願い出ておる。宰相、いかが致す?」
「触れを出せば、エイヴァリーズ公爵家の失策にも捉えられかねません」
「案外、姉はそれが狙いかもな。随分と出来の良い妹に嫉妬していると聞き及んでおるぞ」
「騎士団長と相談したいと存じます」
「任せる」
そう言えば、マリアーヌの出産時は大変だったな。
部屋の中から赤子の元気な泣き声が聞こえた。
「元気な男の子です。さあ陛下、是非ご覧下さいませ」
「うむ」
一声頷き産室に入り、赤子の顔を見た。
他の国では驚かれる事だが、我がクローディルでは国王自らが赤子の出産を見守る。
これは大事な王族の仕事だ。
勿論全てに立ち会える訳ではない。
忙しい我が身だからな。
将来国政に関わる上位の家の者を厳選しておる。
産まれたての赤子から、魔力が放出しているのが分かる。
その魔力を受け取り、赤子は余が差し出した魔力を引き寄せる。
これでこの子は、余をこの国を大切に思うだろう。
赤子は部屋の中の大人達と交換していたが、交換の魔力はかなり薄い。
この子は余り力がないのかもな。
目安ではあるが余の経験上そう感じた。
しかし元気に産まれた子ならば、体内にある魔力が一旦無くなっても、また溜め少しづつ親との絆は強まるだろう。
他者の魔術をかけられるまでは。
最近は初手から魔力が高いと感じる者が減ったな、と思いながら王宮へ戻る馬車に乗った。
赤子には不思議な力がある。
一人では生きていけない故に相手側に保護を求め、愛護を願う。
一種の魅了とも言われる力だ。
我が国はあえて赤子の力を受け入れる事を選んだ。
その代わり赤子にも我が国の益になってもらう。
それは過去、我が国の歴史にあった。
魔力の高い者に狼藉者が増え、混沌と殺伐を好む者達で荒れた。
それと同時に愛国心を胸に秘め、魔力に満ちた偉大な魔術師達がその者達を抑え込んだ。
この図式は長く続いた。
問題は両方が同じ一族であったり、近親者であった事。
このままでは、魔力が強い事は危険な事とされかねない。
王族は勿論の事、上位貴族は皆魔力が高い。
これは個人の資質の問題と片付けるには、あまりにも異質だった。
危機感を持ち徹底的に調べられ分かった事は、腹の中で大きくなっていく過程と産まれた赤子の状態だった。
他者の魔術を受けると変化を起こす。
臨月に近づく程に影響が大きく、産まれた直後が頂点となる。
赤子が自ら魔力を放出しないと、本来持っている力が歪むのだろう。
赤子の保護を訴える魔力が消えたり、場合によっては反転する。
結果放置や無関心ならいい方で、とても言葉には表せられない状態の養育課程を経て大人になっていく。
しかしこれでは、性格が歪むのは当然だった。
そしてそれは、魔力の存在能力の高いもの程顕著だった。
将来上位になり得る、魔力の持ち主に対しての危機感もあったのやもしれない。
この事は最重要極秘機密として、王族でも一部の者が知るのみだ。
余も成人した三年後、子が出来てから教えられた。
理由は簡単だ。
歪んで育った者は、稀にありえない魔力を発現させるからだ。
今でも何処かの暗殺集団が、残酷な育て方をしている等の噂も聞くが調べると大概自滅している。
子は慈しんで育てるものだ。
ただ、このやり方も完璧ではない。
魔力の加減も知らない赤子から受ける魔力は、受け取る者の技量にも左右されるからな。
魔力が高い者は求めるが、魔力が強いだけの人格破綻者など我が国に必要ない。
甘くなりがちな子供時代を過ごそうと、この国を支える余の子供達には幸せになって欲しいものだ。
そんな事を思いながら、王宮へ戻ってみれば宰相が血相を変えていた。
「陛下、エイヴァリーズ公爵家から緊急の知らせが来ております」
「何かあったのか?」
あの家は優秀な息子の婚約者がいる家だ。
宰相から手紙を受け取り、呆れ返った。
「不出来な姉が学園を退学となったようだ。それを苦に出奔とは人騒がせな。優しいマリアーヌが気に病んでいるので、捜索隊を出したいだと願い出ておる。宰相、いかが致す?」
「触れを出せば、エイヴァリーズ公爵家の失策にも捉えられかねません」
「案外、姉はそれが狙いかもな。随分と出来の良い妹に嫉妬していると聞き及んでおるぞ」
「騎士団長と相談したいと存じます」
「任せる」
そう言えば、マリアーヌの出産時は大変だったな。
77
お気に入りに追加
8,473
あなたにおすすめの小説

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる