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幕間―別視点【四人ピックアップ】
俺の止まっていた時間が動き出した(前編)
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―――王宮魔術師アドリアン・パレテヌミーユ視点
俺は遊学し、魔術師として知らない知識を吸収したい。
王宮に何度願い出ても、不許可の通知が来るだけだった。
だが、まさか渋々受けた学園の試験官があの様な結果になるなんて思いもしなかった。
フライで王宮の自室に戻り、荷物をまとめる。
「楽しそうですね。どこかへ行かれるのですか?」
そんな風にすれ違った魔術師や官吏に聞かれた。
俺は余程楽しそうにしていたのだろう。
「ちょっとそこまで」
自宅に戻り、自宅ごと収納した。
王族と王太子が国外追放を発令したのだ。
難癖付けられる前に早く去るに限る。
俺はまたフライを唱え飛んだ。
俺の未来は決まっていた。
将来王に仕え活躍する様に、当時の王宮魔術師長の養子に入ったからだ。
八歳の時、教会で水晶に手をかざし魔力の量が推測されると周りが一変した。
甘く厳しかった両親も説得され養子に出し、十二歳の最終測定後異例の魔術師見習いになった。
養父を俺は師匠と呼んで慕っていた。
俺が学園と専門課程を卒業し、一人前の魔術師に成長したと判断した師匠は王宮を辞し、小国へ渡った。
ここから俺の生活は一気につまらなく、止まってしまった。
今までは魔術研究を楽しくしていたのに、無駄な雑事に忙殺される日々。
俺はどうも人との交流は苦手なのだが、それでも親しくしている同僚がいた。
歳は離れていたが、とても気があった。
そいつも王宮魔術師を辞め、帝国に渡るという。
「は?帝国に行くなんて聞いてないよ」
「妻が妊娠して、心機一転だな」
「それも聞いてない。何?奥さん帰ってきたの?」
こいつは俺と一緒で研究の虫だからな。
気づけば奥さんに捨てられていたんだ。
「違う違う、再婚したんだ。子供の家庭教師に来て貰ってた人なんだが、指導は厳しいが心根が優しい人でな。子供も凄く懐いて……」
延々惚気を聞かされた。
再婚相手のキャサリンが素敵なのはわかったから、心機一転の理由を教えやがれ。
「どうも誤解からだと思うんだが、突き上げが酷くてな」
今いる家庭教師先の不興を買ったらしく、このままではお腹の子に良くないと判断したらしい。
妊婦の旅も相当なリスクがあるのに、それを推してもこの国を出ていくのか。
それって相手は相当な力があるよな。
しかし、それでよく帝国行きを許されたもんだ。
「あ、帝国行きは黙っていろよ。お前だから言ったんだからな」
俺は羨ましげに同僚の退職を見送った。
思えばこの頃からこの国を出て見聞を広げ、己の魔術を高めたいと思うようになったのだろう。
そんな思いは知らず強くなり、色々とこの国への興味を失っていった。
だからだろうか。王太子が八歳になり、魔術宮で魔力解放を行っても最終測定が終わっても俺にはピンと来なかった。
将来こいつに仕えるのか……。
魔術実技の勉強に俺を教師に加える話もあったが、魔力が多いだけの教え下手だから却下された。
これは地味に嬉しかった。
それからも、王宮に出向けば王太子を見かけるのだが、いつもお茶会を開いていた。
「あの様に庭園でゆったり過ごしていても成果を上げるなんて、余程優秀なんですね」
嫌味混じりに言っても、周りからは賞賛の声しか返ってこなかった。
今まで断っていた学園の試験官を受けたのは陛下からの直々の指示だった。
将来の王の成果や側近の勇姿を見て来いとの事だ。
「今年の出来は酷いな」
「王太子自身があれで満足しているから、育たないのだろう」
「昨年が良すぎたのでは?」
試験が終わり、他の試験官達が話していた。
俺は普通に成績を付けた。
忖度する?知らんな。
結果、俺はこの国から解放された。
それにしても、王宮魔術師としての生活は最初から最後までエイヴァリーズ公爵家が関わっているのか。
妙な縁を感じた。
俺は遊学し、魔術師として知らない知識を吸収したい。
王宮に何度願い出ても、不許可の通知が来るだけだった。
だが、まさか渋々受けた学園の試験官があの様な結果になるなんて思いもしなかった。
フライで王宮の自室に戻り、荷物をまとめる。
「楽しそうですね。どこかへ行かれるのですか?」
そんな風にすれ違った魔術師や官吏に聞かれた。
俺は余程楽しそうにしていたのだろう。
「ちょっとそこまで」
自宅に戻り、自宅ごと収納した。
王族と王太子が国外追放を発令したのだ。
難癖付けられる前に早く去るに限る。
俺はまたフライを唱え飛んだ。
俺の未来は決まっていた。
将来王に仕え活躍する様に、当時の王宮魔術師長の養子に入ったからだ。
八歳の時、教会で水晶に手をかざし魔力の量が推測されると周りが一変した。
甘く厳しかった両親も説得され養子に出し、十二歳の最終測定後異例の魔術師見習いになった。
養父を俺は師匠と呼んで慕っていた。
俺が学園と専門課程を卒業し、一人前の魔術師に成長したと判断した師匠は王宮を辞し、小国へ渡った。
ここから俺の生活は一気につまらなく、止まってしまった。
今までは魔術研究を楽しくしていたのに、無駄な雑事に忙殺される日々。
俺はどうも人との交流は苦手なのだが、それでも親しくしている同僚がいた。
歳は離れていたが、とても気があった。
そいつも王宮魔術師を辞め、帝国に渡るという。
「は?帝国に行くなんて聞いてないよ」
「妻が妊娠して、心機一転だな」
「それも聞いてない。何?奥さん帰ってきたの?」
こいつは俺と一緒で研究の虫だからな。
気づけば奥さんに捨てられていたんだ。
「違う違う、再婚したんだ。子供の家庭教師に来て貰ってた人なんだが、指導は厳しいが心根が優しい人でな。子供も凄く懐いて……」
延々惚気を聞かされた。
再婚相手のキャサリンが素敵なのはわかったから、心機一転の理由を教えやがれ。
「どうも誤解からだと思うんだが、突き上げが酷くてな」
今いる家庭教師先の不興を買ったらしく、このままではお腹の子に良くないと判断したらしい。
妊婦の旅も相当なリスクがあるのに、それを推してもこの国を出ていくのか。
それって相手は相当な力があるよな。
しかし、それでよく帝国行きを許されたもんだ。
「あ、帝国行きは黙っていろよ。お前だから言ったんだからな」
俺は羨ましげに同僚の退職を見送った。
思えばこの頃からこの国を出て見聞を広げ、己の魔術を高めたいと思うようになったのだろう。
そんな思いは知らず強くなり、色々とこの国への興味を失っていった。
だからだろうか。王太子が八歳になり、魔術宮で魔力解放を行っても最終測定が終わっても俺にはピンと来なかった。
将来こいつに仕えるのか……。
魔術実技の勉強に俺を教師に加える話もあったが、魔力が多いだけの教え下手だから却下された。
これは地味に嬉しかった。
それからも、王宮に出向けば王太子を見かけるのだが、いつもお茶会を開いていた。
「あの様に庭園でゆったり過ごしていても成果を上げるなんて、余程優秀なんですね」
嫌味混じりに言っても、周りからは賞賛の声しか返ってこなかった。
今まで断っていた学園の試験官を受けたのは陛下からの直々の指示だった。
将来の王の成果や側近の勇姿を見て来いとの事だ。
「今年の出来は酷いな」
「王太子自身があれで満足しているから、育たないのだろう」
「昨年が良すぎたのでは?」
試験が終わり、他の試験官達が話していた。
俺は普通に成績を付けた。
忖度する?知らんな。
結果、俺はこの国から解放された。
それにしても、王宮魔術師としての生活は最初から最後までエイヴァリーズ公爵家が関わっているのか。
妙な縁を感じた。
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