無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物

ゆうぎり

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第一章 公爵令嬢の姉

9 姉として育って

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 幼い頃は何も知らなかった。
 両親が訪れる事が殆どなくても、乳母が冷たい態度をしていても、閉じ込められた空間ではわからない。

 違いがわかったのは、三歳の誕生日の時だろう。
 貴族のお披露目も兼ねた誕生日会は、もちろん妹の誕生日に合わせられた。

 妹は将来の王妃として、華やかにお披露目された。
 私はその隅で、少しだけお披露目された。
 律儀な人はいるもので、可愛いリボンや綺麗なボール等を直接貰った。

 それが気に入らなかったのか、妹の機嫌を損ねすぐ会場を出された。

 ドレスも私のサイズではなかった。
 私には少し大きく、多分何着も作った妹のドレスなのだろう。
 気に入らなかった物なのか、くすんだ色のドレスを着せられていた。

 後から渡されたプレゼントは、分厚い本や女の子が喜ぶのだろうか?と思う古い魔道具。
 私に直接渡されたプレゼントは、会場で侍女に預けたきり戻って来なかった。

 つまり、妹が気に入らなかった物のみ私に贈られたのだ。

 貴族のお披露目が終わり、私達は勉強を始めた。
 最初は私達と乳母の子二人が一緒の部屋で学んだ。
 私の乳母兄弟のみ男の子で、他は女の子だった。

「笑ってはだめなの。かわいく笑うのは私だけなんだから」

 そう言って妹は私を突き飛ばした。
 私は突然の事で泣いたが、両親はそんな私を叱責した。

「マリアーヌが可愛いからと、突っかかったらしいな。可愛くもない泣き顔など見せおって、表情など変えるな」
「可愛いマリアーヌと比べるなど無意味ですのに、わからないなど問題があるのではないかしら」

 そんな事を言われ続け、私の表情筋は固まっていった。

 妹は当たり前の様に、私から乳母兄弟を取った。

「私も男の子の乳母兄弟が欲しい」

 妹の言葉に、両親は当然の様に承諾した。
 乳母も当たり前の様に妹に付いた。
 私にはこの屋敷での味方は誰もいないのだと、突きつけられた。
 
 家庭教師に対しての扱いも酷かった。
 私が褒められると妹が拗ね不機嫌になる。
 それから妹は駄々をこねて、勉強部屋を出て行く。
 両親が怒り、家庭教師が変わるを繰り返した。

 幼い頃の家庭教師が変わるのはよくある事のようで、公爵家の評判が落ちる事はなかったようだ。
 一年程こんな事を繰り返した後、別々の家庭教師が宛てがわれた。

 優しく評判の良い家庭教師は妹と乳母の子達を教え、私には厳しいと評判の教師が来た。

 これだけだったら別にいい。
 しかし、評判の良い教師はしっかり子供達を見るから評判が良いのだ。
 妹の機嫌を損ねる事もあるだろう。
 こうなったらもう駄目だった。
 家庭教師二人を解雇して別の人達を雇った。

「上の子の出来が悪く、家庭教師の言う事を聞かないのですよ」

 私は便利に使われ矢面に出され、妹は守られる。
 徐々に妹達三人には甘いだけの教師が、私には評判の良くない教師が付くようになった。



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