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第一章 公爵令嬢の姉

7 姉として家族に報告しました

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 学園を去る際、オルレンブルグ先生が私に手紙を渡してくれた。

「これは、帝国にある私の知り合い宛の手紙だ。もし帝国に立ち寄ることがあったら訪ねるといいよ」

 帝国とは隣国のユーフルディア帝国を指す。
 最近魔術大国として有名で、技術も技も洗練されている。
 魔道具も有名で、公爵家で使っている魔道具は全て帝国産だ。

「私が帝国に行っても意味がないと思うのですが」

 この様な手紙を渡されて、嬉しくない訳がない。
 叶わぬ夢だが、帝国には行ってみたい。

 私は嬉しさを押し隠し、疑問だけを口にした。
 押し隠さなくても、私の表情は乏しいけれどね。

「そんな事ないよ。マリアーヌ嬢の筆記試験を今までこなしていたんだろう。十分実力がある。帝国は魔術の理論も進んでいるから、勉強になると思うよ。是非一度訪れてみるといい」

 そんな風に人から言われた事がなかったから、嬉しかった。
 この事は私の胸を温かくしてくれた。
 次に待ち構えているだろう、困難に立ち向かう勇気をくれた。


 公爵家に帰宅すると、珍しく家にいた母に学園を退学になった事を告げた。

 理由も聞かず、母は慌てて王宮にいる父を呼び出した。
 父を待っている間ずっと、母の罵倒や叱責と腕へと振るわれる鞭に耐えていた。

 母は鞭を振るう際、魔力を宿らせる。
 この見慣れた鞭は魔道具だ。
 痛みを与え、傷を残さない仕様になっている。

 だが、故意なのか上手く扱えていないだけなのか、私の腕には鞭の跡が残る事があった。

 私には身体強化の魔術は使えない。
 こんな時には、自分の魔力の少なさが恨めしい。

 どれ位耐えていただろう。
 屋敷の玄関が騒がしくなり、父の帰宅を告げた。

 慌てて帰って来たのだろう。
 服装が乱れている父が、私を見るなり顔を殴りつけた。

「何を考えている。我が公爵家に恥をかかせ、評判を落とすなどありえん。マリアーヌとはなんという違いだ」

 殴られた頬は腫れ、口から血が流れた。
 父を見た私の目が反抗的だと、また殴られた。

 私は立ち上がる事も話す事も出来ないまま、この痛みをそらし続けた。



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