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第一章 公爵令嬢の姉

6 姉として退学を受け入れました

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 学園長の言葉に周りの魔術師や王宮関係者が慌てている。

「学園長お取消しを」
「その様な判断をなさっては……」

 口々に出る諌言かんげんも、ものともしない学園長からは最終決定がなされた。

「ええい、くどい。これは覆されない決定事項だ。リディアーヌ・エイヴァリーズは退学処分。そこの口を挟んだ共犯者二人は国外追放。これは王族としての決定だ」

「私も支持し、同決定を王太子として発令します」

 再び静まり返った第一演習場に、のんびりとした声が響いた。

「いやー、こんな決定をされるなんて思いもしなかったですよ」

 国外追放を言い渡された王宮魔術師だった。

「気でも狂ったのか?」
「あまりのことに、おかしくなったんだろうか」

 そんな周りの小声があちらこちらから聞こえてくる。

「どれほど遊学したい、と王宮に願い出ても聞き届けられなかったですからね。長期の休みも取れないし困っていたんですよ。こんな機会を貰えるなんて嬉しい限りです」

 ばさりと、魔術師が被っていたフードを脱ぎ顔を出した。

「私、アドリアン・パレテヌミーユは国外追放を受け入れましょう」

 まさかの、若手王宮魔術師の筆頭。
 将来を嘱望され、いずれ王宮魔術師長になると言われていた男の追放だった。

 しまったと思ったのか、学園長は取り乱している。
 王太子は呆然としている。
 妹は王太子の隣で魔術師の美貌に見蕩れていた、妹よ……。

「いや、ちょ……待って。こ、これは忘れて…いや間違いで」

 なんとかしようと学園長は声を出すが、周りの雑音が大きすぎるのか言葉になっていない。

 今年は王太子がいるから、魔術試験は有名有望な人を集めたと自慢していたじゃないですか。
 まさか、誰も学園長が忘れていたとは思わず、王太子も相手に気づかなかったのだろう。

「急ぎこの国を出ていきますので、それでは失礼」

 フライの術式を描き呪文を唱え、魔術師は第一演習場から飛び立って行った。
 あれだけの力がある魔術師なら、ここの結界をものともしないのだなと、変に感心しながら見送った。
 周りも口を開けて唖然としながら見送っていた。

「今の内にとっとと宣言して、この場を離れよう」

 教師が近づいて来て、私にそう告げた。
 私の言い分など誰にも伝わらないのだから反論するだけ無駄だと、これまでの経験で骨身に染みていた。
 だから、素直に頷いた。

「教師であるライナルト・オルレンブルグはこの学園を去り国外追放を受け入れます」
「私、リディアーヌ・エイヴァリーズは学園からの退学処分を受け入れ去ります」

 二人の言葉は、学園長に届いたのか不明だったが、王太子と目が合ってので聞こえただろう。

 私達は、混乱する第一演習場を後にし、荷物をまとめて学園を去った。





「あの……申し訳ございません」
「ん?」
「巻き込んでしまいまして……」
「ハハハ、私は意地悪じゃないからな。権限のない謝罪も気持ちを受け取りますよ」
「……充分意地悪です」




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