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第一章 公爵令嬢の姉
4 姉としての第一演習場での断罪予感
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私達がゆっくり雑談しながら教室に戻った時には、午前の授業は終わりを迎えていた。
終わりの鐘が鳴ったのと同時に、園内放送が流れ始める。
余程の緊急性がないと使われない放送に、周りがざわめいた。
「生徒会から緊急のお知らせです。学園にいる全ての者は即刻第一演習場に集まる様に」
三度怒鳴りつける様な生徒会長である王太子の声が、繰り返し告げていた。
この学園には食堂も軽食がとれるテラスもあるが、外に出かける生徒もいる。
生徒全員を集めるには、この時間がベストタイミングなのだろう。
そして午後の授業が始まるまでの自由時間は、たっぷりとってあるのだ。
私はいつもこの時間を使って、図書室で勉強をしていた。
昼食はどうしていたのかって?
そんなものは、私にはない。
私の予算は妹の物、取り上げられてお終いだった。
何事だろう、と第一演習場に集まる生徒や教師達。
そして何故か、魔術師を含む王宮関係者達が来ていた。
「今日、王宮の魔術師が来る日だった?」
「違う筈だよなぁ」
「そういえば、まだ試験結果の貼りだしないよな」
「一、二年の時は朝に貼りだされていたよね」
「そうそう、一、二年の所では朝貼りだしあったよ」
「去年の三年はどうだったんだろうね」
「誰か兄弟がいる奴、聞いてないか?」
そんなざわめきを聴きながら、第一演習場で待っていると、壇上に王太子が現れた。
「皆、集まっているだろうか?今回この学園で由々しき事態がおきた。あってはならない事だ。それ故に、この様な場を設けさせて貰った」
第一演習場が静まり返った。
「先日皆が試験を受けただろう。試験とは公正であるべきもの。皆の学力を正しく測る為にあるものだ。そうではないか?」
「そうだそうだ!」
三年のトップクラスが集まる辺りでは、大きな声が上がっていた。
「それが、あろう事か不正を働いた者がいる。これは厳罰に処す必要があると思わないか!」
王太子が堂々とした演説を披露し、皆の同意を求める。
「ありえない!」
「即厳罰だ!」
また三年トップクラスの辺りから、同意と煽りの言葉が飛んだ。
嫌な予感がする。
「さあ、マリアーヌ・エイヴァリーズ公爵令嬢。ここへ来て真実を述べよ」
あぁ、これは仕組まれた事だろう。
言い逃れ出来ない試験結果に、この様な手段を取るとは思わなかった。
誰から見ても「先程まで泣いていました」と分かるように、目が赤く染まっている。
実際教室では、泣いて見せたのかもしれない。
少し涙を見せ目を擦れば、肌がきめ細やかな妹はすぐ赤くなる。
今も涙に濡れた可愛らしい仕草をした妹が、王太子に導かれ壇上に立った。
終わりの鐘が鳴ったのと同時に、園内放送が流れ始める。
余程の緊急性がないと使われない放送に、周りがざわめいた。
「生徒会から緊急のお知らせです。学園にいる全ての者は即刻第一演習場に集まる様に」
三度怒鳴りつける様な生徒会長である王太子の声が、繰り返し告げていた。
この学園には食堂も軽食がとれるテラスもあるが、外に出かける生徒もいる。
生徒全員を集めるには、この時間がベストタイミングなのだろう。
そして午後の授業が始まるまでの自由時間は、たっぷりとってあるのだ。
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何事だろう、と第一演習場に集まる生徒や教師達。
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「今日、王宮の魔術師が来る日だった?」
「違う筈だよなぁ」
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「一、二年の時は朝に貼りだされていたよね」
「そうそう、一、二年の所では朝貼りだしあったよ」
「去年の三年はどうだったんだろうね」
「誰か兄弟がいる奴、聞いてないか?」
そんなざわめきを聴きながら、第一演習場で待っていると、壇上に王太子が現れた。
「皆、集まっているだろうか?今回この学園で由々しき事態がおきた。あってはならない事だ。それ故に、この様な場を設けさせて貰った」
第一演習場が静まり返った。
「先日皆が試験を受けただろう。試験とは公正であるべきもの。皆の学力を正しく測る為にあるものだ。そうではないか?」
「そうだそうだ!」
三年のトップクラスが集まる辺りでは、大きな声が上がっていた。
「それが、あろう事か不正を働いた者がいる。これは厳罰に処す必要があると思わないか!」
王太子が堂々とした演説を披露し、皆の同意を求める。
「ありえない!」
「即厳罰だ!」
また三年トップクラスの辺りから、同意と煽りの言葉が飛んだ。
嫌な予感がする。
「さあ、マリアーヌ・エイヴァリーズ公爵令嬢。ここへ来て真実を述べよ」
あぁ、これは仕組まれた事だろう。
言い逃れ出来ない試験結果に、この様な手段を取るとは思わなかった。
誰から見ても「先程まで泣いていました」と分かるように、目が赤く染まっている。
実際教室では、泣いて見せたのかもしれない。
少し涙を見せ目を擦れば、肌がきめ細やかな妹はすぐ赤くなる。
今も涙に濡れた可愛らしい仕草をした妹が、王太子に導かれ壇上に立った。
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