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第一章 公爵令嬢の姉
2 姉としての馬車通園
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朝になるのは早い。
侍女が朝食の準備が出来た、と知らせてきた。
私は、徹夜で眠い目を擦りながら返事をした。
侍女はサッと私の部屋に入り、仕上がった妹の課題を持って出ていった。
私は自分の支度をしてから食卓につくが、パンと冷めたスープがあるだけだった。
いつも思うが、私の食事は使用人より酷いかもしれない。
貴族は食事の知らせがあった後に食卓へ向かう、と教えられた。
そして、妹は私と同じ食卓につくのを嫌う。
必然的に、私は遅れて知らされた。
食卓には一斉に食事が並べられるのだが、妹が私の分に手を付けても咎められない。
淑女としての教育はどうした?
と思うが、我が家ではこれが普通だった。
少しでも、妹が手を付けた皿は下げられる。
だからだろう、いつもあまり残っていなかった。
おかげで、甘い物などほとんど食べた事がない。
菓子が出るという、貴族としてのお茶会は?
私にとっては、何それって感じだ。
妹が仕切るので、私は必要ないらしい。
これでも次期公爵家当主。
多分今ではその事を覚えているのは、私と国の一部の官吏位かもしれない。
昔は両親に「将来公爵家を継ぎ妹を支える立場だ」と言われたが、最近は言われなくなった。
私が素直に妹の課題をしているからなのか、忘れているかなのか……。
両親とは接触自体ないのだから、どちらとも言えない。
そんな事をぼんやり考えながら、学園へ向かった。
もちろん馬車は別、私のは質素で家名さえ入っていない。
見た目はとても質素で、下位貴族が利用する感じの馬車を使っている。
王宮入りの際は、家名のプレートを掛けた。
私が華美を嫌う、という理由になっているらしい。
私の服装はいつも地味だから、この理由の裏付けになっていた。
ただ、私は与えられた服を着ているだけ。
少しでもいい服、綺麗な服を私が着ると妹マリアーヌが嫌がる。
私がこの様な身分に合わない物に囲まれていても、公爵家貧乏ですよ、との宣伝にならないのもひとえに妹の存在。
すっごく派手派手なのだ。
これでもかと飾り立て、磨き上げられた馬車。
王宮からは護衛を借り受け、配置させて学園へ通っている。
私からすれば、もう少し目に優しい方がいいと思っている。
だが、権勢を誇示したい両親の思惑と妹の好みにより、輝かしい状態が成り立っている。
馬車の置き場も別だった。
悠々と二人分の置き場を、妹が占領している。
私は別に申請しており、少し離れた所での停留となっていた。
学園での唯一良い所は、クラスが違う所だろうか。
妹は一番上のトップクラス、私は四クラス中一番下の四番目のクラス。
入学筆記試験は、名前を入れ替えさせられた。
私は実技の魔術はまるで駄目で、家では無能扱い。
それは家だけでなく、国の貴族としても無能扱いだった。
だが後から聞いた話では、魔術だけでなくそれより筆記が苦手と思える成績だったらしい。
無能扱いされる魔術より酷いって……と当時は思ったものだ。
それは今でも変わらない。
妹はもちろん、次席で入学した。
ちなみに、首席は王太子だった。
そして学園生活三年目の今日、初めて入れ替えなしでの成績が発表される予定……だった。
侍女が朝食の準備が出来た、と知らせてきた。
私は、徹夜で眠い目を擦りながら返事をした。
侍女はサッと私の部屋に入り、仕上がった妹の課題を持って出ていった。
私は自分の支度をしてから食卓につくが、パンと冷めたスープがあるだけだった。
いつも思うが、私の食事は使用人より酷いかもしれない。
貴族は食事の知らせがあった後に食卓へ向かう、と教えられた。
そして、妹は私と同じ食卓につくのを嫌う。
必然的に、私は遅れて知らされた。
食卓には一斉に食事が並べられるのだが、妹が私の分に手を付けても咎められない。
淑女としての教育はどうした?
と思うが、我が家ではこれが普通だった。
少しでも、妹が手を付けた皿は下げられる。
だからだろう、いつもあまり残っていなかった。
おかげで、甘い物などほとんど食べた事がない。
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私にとっては、何それって感じだ。
妹が仕切るので、私は必要ないらしい。
これでも次期公爵家当主。
多分今ではその事を覚えているのは、私と国の一部の官吏位かもしれない。
昔は両親に「将来公爵家を継ぎ妹を支える立場だ」と言われたが、最近は言われなくなった。
私が素直に妹の課題をしているからなのか、忘れているかなのか……。
両親とは接触自体ないのだから、どちらとも言えない。
そんな事をぼんやり考えながら、学園へ向かった。
もちろん馬車は別、私のは質素で家名さえ入っていない。
見た目はとても質素で、下位貴族が利用する感じの馬車を使っている。
王宮入りの際は、家名のプレートを掛けた。
私が華美を嫌う、という理由になっているらしい。
私の服装はいつも地味だから、この理由の裏付けになっていた。
ただ、私は与えられた服を着ているだけ。
少しでもいい服、綺麗な服を私が着ると妹マリアーヌが嫌がる。
私がこの様な身分に合わない物に囲まれていても、公爵家貧乏ですよ、との宣伝にならないのもひとえに妹の存在。
すっごく派手派手なのだ。
これでもかと飾り立て、磨き上げられた馬車。
王宮からは護衛を借り受け、配置させて学園へ通っている。
私からすれば、もう少し目に優しい方がいいと思っている。
だが、権勢を誇示したい両親の思惑と妹の好みにより、輝かしい状態が成り立っている。
馬車の置き場も別だった。
悠々と二人分の置き場を、妹が占領している。
私は別に申請しており、少し離れた所での停留となっていた。
学園での唯一良い所は、クラスが違う所だろうか。
妹は一番上のトップクラス、私は四クラス中一番下の四番目のクラス。
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私は実技の魔術はまるで駄目で、家では無能扱い。
それは家だけでなく、国の貴族としても無能扱いだった。
だが後から聞いた話では、魔術だけでなくそれより筆記が苦手と思える成績だったらしい。
無能扱いされる魔術より酷いって……と当時は思ったものだ。
それは今でも変わらない。
妹はもちろん、次席で入学した。
ちなみに、首席は王太子だった。
そして学園生活三年目の今日、初めて入れ替えなしでの成績が発表される予定……だった。
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