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第一章 公爵令嬢の姉

1 姉としての徹夜

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 私リディアーヌは、いつものように困っていた。

 王宮から疲れはて、屋敷に戻って来たところだった。
 待ち構えていた様に、侍女に呼び止められたのだ。
 応接室に来るようにと言われ、ついて行ってみるとテーブルに何冊もの本が積んであった。

「マリアーヌお嬢様よりのご伝言です。明日提出されるとの事でした。ではお任せします」

 素っ気なく用件のみ伝えた侍女は、私の返事も聞かずそのまま退出していった。

「この膨大な課題を明日までって……」

 双子の妹マリアーヌに押し付けられた学園の課題は、とても一日で片付けられるものではない。

「今夜も徹夜かぁ」

 慣れているとはいえ、たまったものではない。
 だが許されなかった。
 私はこの家で一番立場が弱い。

 優先順位は何を置いても妹だった。
 例え私の課題が出来ていなくても、妹の物は先に仕上げなければならない。

 私はそっとため息を付いた。
 そして課題を部屋に運び入れ、取り掛かっていった。



 我がエイヴァリーズ公爵家には、双子の姉妹がいる。

 私が姉として生まれて、次期公爵ではあるがある事情・・・・で蔑まれながら生活していた。

 妹は生まれてすぐに、王太子の婚約者となった。
 生まれてからずっと、蝶よ花よと甘やかされている。
 将来エイヴァリーズ公爵家を引き立ててくれるのだからと、両親はなんでもわがままを聞いた。

 王家の対応も甘い。
 陰で私に課題を丸投げしている事など、知っている事だろう。
 王太子との仲が良好だからと言って、妹が嫌がる国の書類仕事を私にさせるのはどうかと思う。

 私は将来国政に関わるつもりはないのだから、必要のない事なのだ。
 将来の王太子妃の仕事だろうと、言えればいい。
 だが、両親に言っても妹に言っても、私には折檻が待っているだけだった。

 王宮で私は、自分に関係のない仕事を押し付けられている。
 その間、妹は王太子やご友人という名の太鼓持ちに囲まれて、楽しい時間を過ごす。

 そして私は疲れてゆっくり休むことも出来ず、学園の課題に取りかかるのが今の生活だった。




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