かぐや姫戦記

初澪 ほたる

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巡り会い

人生そんなに甘くない。

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「え?いやだよ」

え?、と唖然とするかぐや。

「それじゃあ。俺帰るから」

じゃあ、とかぐやに背を向けて帰ろうとする俺の袖を掴むかぐや。

「まてまて、え?冗談だよね?全裸の美少女をこのまま置いて帰るなんて、そんなことしないよね?」

俺が本気で帰ろうとしているのを悟ったのか、焦りながら俺の袖をまた強く引っ張る。

「いや、お前なあ、なんでもその通りに行くと思うなよ?人生そんなに甘くないないんだよ。あと、そのあたかも助けられて当然みたいな態度が腹立つ」

じゃっ、と再び帰ろうとする。

「ごめん、ごめんなさい!だから置いてかないで!わかったなんでも手伝うから!」

涙目で俺を引き止めるかぐや。

はぁ、と仕方なく連れて帰ることにした。

「しかしなあ、お前その格好じゃあ俺が爺さんと婆さんにどんな顔されるかわからん」

全裸のかぐやを指差し言うと、ああ、それなら、と竹の時と同じような光がかぐやを包んだ。

かぐやの体を覆う光が徐々に収まり気づくと美しい着物になっていた。

「おまえほんと何者だよ...」



☆☆☆☆☆



山を降りる途中かぐやから色々聞いた。

どうやらかぐやは月の都の人間らしい。
何かの罪を犯し、この世界に落とされたのは自覚しているのだが、その肝心な罪を思い出すことができないという。

簡単に言うとかぐやは天女てんにょだ。

そして一番驚いたのは、天女はおろか天人あまつかびとはこの下界と卑下されているこの世界に他にもおり、多くは記憶がないらしいのだが、かぐやのように何らかの理由で記憶が残っているものがいると言うことだ。

「それで、そいつらとは会わないのか?」

ううん、と首を横に振りかぐやは言った。

「見た目は私たちと変わらないからそもそも誰が天人あまつかびとかわからないの。それに...」

うつむきながら最後になにか言いかけたかぐやだったが、すぐに笑顔でごまかした。

「何でもないの!会わないし、会いたくもない!それにツキと約束したもの、養ってくれるって」

おい、そんなこと言った覚えはない。

そんなことを言おうとしたが、かぐやがうつむき、何か言いかけたことを思い出した俺は、言葉を飲み込んだ。

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