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第三章
エリアス王太子様が来ましたわ
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教会に行くのが2日後になった日、突然にエリアス王太子様が訪ねて来ましたわ。王族の女性達が嫌がるので私を登城させれないようで秘密でお城から抜け出して来たそうです。
「急にすまない」
「いいえ。どうされましたか?王太子様が私に用などと」
お茶を給仕するマリルだけお部屋に残る事を許されてお母様はお部屋から出ていきました。お父様とお兄様はお仕事で教会ですわ。
お部屋の中にはマリルの他に王太子様の護衛騎士がお一人だけ居ますわ。
多分、凄く信頼されている騎士なのでしょうね。
「まず、マリルといったか?」
「はい。王太子様」
マリルが頭を下げました。
「お前はアイラ嬢が幼い頃から仕えていると聞いている。今ここで話す内容は他言無用だ。お前を信頼しているぞ」
「畏まりました」
マリルは更に深く頭を下げましたわ。
「まずは先日の聖女認定でのアイラ嬢は素晴らしかった。あのような現象はきっと2度と見られないであろうと思う」
ニコニコしながら話す王太子様はもう前の人生の時の印象はどこにもありません。本当はこの様に穏やかでお優しい方だったのですね。黒魔術とは恐ろしいと改めて思いましたわ。
「ありがとうございます」
「あれは普通の聖女には出来ない事だと後から神官に聞いた。あの時神官がやけにアイラ嬢の事を大聖女候補だと強調していたけれど......」
あら?少し眉間にシワが?
もしや、神官様にあまり良い印象をお持ちではないのかしら?
「はい。詳しくは教会に行ってからまた更に検査をされて確実に決まる事のようです」
「そうなのか。どちらにしても大聖女候補とは凄い事だ。アイラ嬢は幼い頃から少し人と違う雰囲気だったからな」
しーん。ん?ん?どうされました?
何か言いたそうですけれど?
私に言うか言わないかを迷っている様に見えますわ。
無言のまま5分くらい経過していますが?
「王太子様?何か私に話したい事があるのでこちらに来たのではないのですか?ご遠慮なさらずに仰って下さいませ」
我慢出来ずに私から訊いてしまいましたわ。
「あ、ああ。すまない。これから教会に行く君に言ってもいいものなのかギリギリまで悩んでいたのだ。それにお父上も兄上も聖騎士で教会に勤務されているし......。キメラ事件でのアイラ嬢の活躍を見込んで頼みたい事があるのだ。実は神官にクーデターの疑いありと噂があってね、今内密に調査をしているのだよ」
なるほどですわ。やはり神官様はきな臭いわけですわね。
「それでだ。こんな事をアイラ嬢に頼んでいいのか悩んだのだが......」
「私にスパイをしてほしい、ですか?」
「あ、いや、うん。うん?」
ズバッと言われたので動揺してしまっていますわね。ふふふ。可愛いですわ。
「最初にですけれどキメラ事件の解決は私だけの力ではないという事を心に留めておいて下さいませね?それで、ですが私も少し神官様には思う事があります。教会に入ったら神官様や教会について色々と調べてみようと思っていたところでしたの。王太子様とは少し違う方向ですけれど。ですので何か分かりましたらご報告致しますわ」
私はニッコリ微笑んでお返事をしました。
「え⁉︎そ、それは願ってもない事だが、アイラ嬢はそのように私を簡単に信じて良いのか?もしかしたら私の方が悪い事を考えていて神官を陥れようとしているのかもしれないぞ?」
「そうなのですか?」
私は王太子様のお顔を覗き込むように見つめました。
「そ、そんな事ある訳がない......」
お顔を真っ赤にしながら答えてくれましたわ。更に可愛いです。
「それなら安心しましたわ。どうやって連絡を取りますの?」
「『信じの手紙』を使う」
あ、それはとても高度な魔術ですわね。信じている人、好きな人、愛している人、信頼している人、あとは忘れてしまいましたがそういった自分が心の底から信頼している人にしか見えない手紙なのですわ。なので他の人には察知もされないし勿論見えもしない。
「アイラ嬢も使えるのだろう?」
「はい。使えますわ。王太子様は私を信頼して下さるのですね」
「勿論だ。そうでないとこの様な事は頼めない。だからアイラ嬢も私を信頼して欲しい」
「分かりましたわ」
「礼を言う。そしてこんな危険な事を頼むのだ、密かに教会の中に護衛を付ける。そして身の危険を感じたら直ぐに私に知らせて欲しい。助けに行く」
え?私を?助けに来るのですか?
王太子様、自らですの?
私が驚いてしまいましたわ。
「何故そんなに驚いているのだ?」
「いえ、その、逆に王太子様が来てはいけませんわ。この国をゆくゆくは治める方ですもの。その様な危険な事はお止め下さい。大丈夫ですわ。私、こう見えても結構強いのです。だって大聖女様候補ですもの」
「君は......凄いな」
そう呟いた王太子様のお顔が真っ赤ですわ。何故?
「分かった。今まで王族と聖女が月に一回会う会議の数を増やしていく予定だ。そしてその殆どを私が出席する事にする。アイラ嬢の安否確認の為だ。それぐらいなら良いだろう?」
王族と教会は会議とかをしているのですね。上部は仲良くこの国の為にと装っているのかしらね。教会は。
あー。駄目ですわ。まだ何も調べていないのにこんなに疑っては。
ひと通り秘密のお話が終わりました。するとまた言いにくそうに王太子様が私を見ましたわ。
「アレク王子の事なのだが、もう聞いているかい?」
「婚約の事でしょうか?」
「そうだ。......ショックだっただろうか?アレク王子はアイラ嬢を好いていたのにその、違う令嬢と婚約してしまって」
「いいえ。最初は驚きましたけれど思えばあのお2人は幼い頃から喧嘩する程仲が良かったのですわ。祝福しています」
私がはっきり言うと王太子様は嬉しそうな笑顔になりました。
「そうか。良かった。ではアイラ嬢は今は好いた人はいないのか?」
「はい。今は聖女様、大聖女様候補などそちらに忙しくその様な方はいらっしゃいませんわ」
「そうか......。その、神子とはどうなのだ?あの神子はキメラ事件の時に出会ってこちらに連れて来たと聞いているが......」
「ルカさんですか?ルカさんはお兄様のようなお人ですわ。頼れるお兄様ですの」
「そ、そうなのか?そうか......」
と、王太子様がとても魅力的な微笑みをしましたわ。胸が少し苦しくなったのは何故でしょう?
「急にすまない」
「いいえ。どうされましたか?王太子様が私に用などと」
お茶を給仕するマリルだけお部屋に残る事を許されてお母様はお部屋から出ていきました。お父様とお兄様はお仕事で教会ですわ。
お部屋の中にはマリルの他に王太子様の護衛騎士がお一人だけ居ますわ。
多分、凄く信頼されている騎士なのでしょうね。
「まず、マリルといったか?」
「はい。王太子様」
マリルが頭を下げました。
「お前はアイラ嬢が幼い頃から仕えていると聞いている。今ここで話す内容は他言無用だ。お前を信頼しているぞ」
「畏まりました」
マリルは更に深く頭を下げましたわ。
「まずは先日の聖女認定でのアイラ嬢は素晴らしかった。あのような現象はきっと2度と見られないであろうと思う」
ニコニコしながら話す王太子様はもう前の人生の時の印象はどこにもありません。本当はこの様に穏やかでお優しい方だったのですね。黒魔術とは恐ろしいと改めて思いましたわ。
「ありがとうございます」
「あれは普通の聖女には出来ない事だと後から神官に聞いた。あの時神官がやけにアイラ嬢の事を大聖女候補だと強調していたけれど......」
あら?少し眉間にシワが?
もしや、神官様にあまり良い印象をお持ちではないのかしら?
「はい。詳しくは教会に行ってからまた更に検査をされて確実に決まる事のようです」
「そうなのか。どちらにしても大聖女候補とは凄い事だ。アイラ嬢は幼い頃から少し人と違う雰囲気だったからな」
しーん。ん?ん?どうされました?
何か言いたそうですけれど?
私に言うか言わないかを迷っている様に見えますわ。
無言のまま5分くらい経過していますが?
「王太子様?何か私に話したい事があるのでこちらに来たのではないのですか?ご遠慮なさらずに仰って下さいませ」
我慢出来ずに私から訊いてしまいましたわ。
「あ、ああ。すまない。これから教会に行く君に言ってもいいものなのかギリギリまで悩んでいたのだ。それにお父上も兄上も聖騎士で教会に勤務されているし......。キメラ事件でのアイラ嬢の活躍を見込んで頼みたい事があるのだ。実は神官にクーデターの疑いありと噂があってね、今内密に調査をしているのだよ」
なるほどですわ。やはり神官様はきな臭いわけですわね。
「それでだ。こんな事をアイラ嬢に頼んでいいのか悩んだのだが......」
「私にスパイをしてほしい、ですか?」
「あ、いや、うん。うん?」
ズバッと言われたので動揺してしまっていますわね。ふふふ。可愛いですわ。
「最初にですけれどキメラ事件の解決は私だけの力ではないという事を心に留めておいて下さいませね?それで、ですが私も少し神官様には思う事があります。教会に入ったら神官様や教会について色々と調べてみようと思っていたところでしたの。王太子様とは少し違う方向ですけれど。ですので何か分かりましたらご報告致しますわ」
私はニッコリ微笑んでお返事をしました。
「え⁉︎そ、それは願ってもない事だが、アイラ嬢はそのように私を簡単に信じて良いのか?もしかしたら私の方が悪い事を考えていて神官を陥れようとしているのかもしれないぞ?」
「そうなのですか?」
私は王太子様のお顔を覗き込むように見つめました。
「そ、そんな事ある訳がない......」
お顔を真っ赤にしながら答えてくれましたわ。更に可愛いです。
「それなら安心しましたわ。どうやって連絡を取りますの?」
「『信じの手紙』を使う」
あ、それはとても高度な魔術ですわね。信じている人、好きな人、愛している人、信頼している人、あとは忘れてしまいましたがそういった自分が心の底から信頼している人にしか見えない手紙なのですわ。なので他の人には察知もされないし勿論見えもしない。
「アイラ嬢も使えるのだろう?」
「はい。使えますわ。王太子様は私を信頼して下さるのですね」
「勿論だ。そうでないとこの様な事は頼めない。だからアイラ嬢も私を信頼して欲しい」
「分かりましたわ」
「礼を言う。そしてこんな危険な事を頼むのだ、密かに教会の中に護衛を付ける。そして身の危険を感じたら直ぐに私に知らせて欲しい。助けに行く」
え?私を?助けに来るのですか?
王太子様、自らですの?
私が驚いてしまいましたわ。
「何故そんなに驚いているのだ?」
「いえ、その、逆に王太子様が来てはいけませんわ。この国をゆくゆくは治める方ですもの。その様な危険な事はお止め下さい。大丈夫ですわ。私、こう見えても結構強いのです。だって大聖女様候補ですもの」
「君は......凄いな」
そう呟いた王太子様のお顔が真っ赤ですわ。何故?
「分かった。今まで王族と聖女が月に一回会う会議の数を増やしていく予定だ。そしてその殆どを私が出席する事にする。アイラ嬢の安否確認の為だ。それぐらいなら良いだろう?」
王族と教会は会議とかをしているのですね。上部は仲良くこの国の為にと装っているのかしらね。教会は。
あー。駄目ですわ。まだ何も調べていないのにこんなに疑っては。
ひと通り秘密のお話が終わりました。するとまた言いにくそうに王太子様が私を見ましたわ。
「アレク王子の事なのだが、もう聞いているかい?」
「婚約の事でしょうか?」
「そうだ。......ショックだっただろうか?アレク王子はアイラ嬢を好いていたのにその、違う令嬢と婚約してしまって」
「いいえ。最初は驚きましたけれど思えばあのお2人は幼い頃から喧嘩する程仲が良かったのですわ。祝福しています」
私がはっきり言うと王太子様は嬉しそうな笑顔になりました。
「そうか。良かった。ではアイラ嬢は今は好いた人はいないのか?」
「はい。今は聖女様、大聖女様候補などそちらに忙しくその様な方はいらっしゃいませんわ」
「そうか......。その、神子とはどうなのだ?あの神子はキメラ事件の時に出会ってこちらに連れて来たと聞いているが......」
「ルカさんですか?ルカさんはお兄様のようなお人ですわ。頼れるお兄様ですの」
「そ、そうなのか?そうか......」
と、王太子様がとても魅力的な微笑みをしましたわ。胸が少し苦しくなったのは何故でしょう?
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