上 下
73 / 89
第三章

王都に帰りましたわ

しおりを挟む
「アイラ!アイラ!」

懐かしのお屋敷に帰ると外までお母様とマリルが迎えに出ていました。
2人とも私を見た途端大泣きして抱きついてきましたわ。
私も大泣きしてしまいました。

お父様が屋敷の中でゆっくり話そうと言ってくれてリビングへ入りました。
懐かしい。
本当に帰って来たのだとやっと思えました。お父様にソファーにお座りと促されましたので失礼して......。
フワッとした感触。我が家のソファーですわ!ふぅー。

お母様が痩せてしまっています。
私のせい?心配そうにしている私に気がついてお母様が言いました。

「アイラが見つかったと知らせを受けた日から食欲も戻ったのよ?大丈夫。これからもっと元気になると思うわ」

良かったです。

「マリル?目は......」

今まで記憶がなくてマリルの目の事は忘れていました。ごめんなさいね。

「あの時、お嬢様が咄嗟に癒しの術をかけてくれていたので傷も残らず視力も前のままです。本当にありがとうございました」

泣きながら今の状態を説明してくれました。そうでした。マリルの目にハンカチをあてながらバレないように癒していたのでした。

「アイラ?もっと顔を見せて!ああ、もう12歳、来月で13歳ですものね!大きくなって......。こんなに綺麗になって......。アイラが無事なのはキルジーさんという方のおかげなのよね?お父様から大体の事は聞いているわ」

お母様はソファーに座った私の前に跪き両手で頬を触りながら言いました。
お母様?私、魔力を封印されていたので殆ど10歳の時から成長していませんわ。
お母様には少しだけ本当ならこう成長しているであろう私が見えるのでしょうか?元聖女様だったのですからその様な力があっても不思議ではないですわね。

あ!キルジーさんといえばまだルカさんの紹介をしていませんでした!

私はお父様とお兄様と一緒に立っているルカさんを見て

「お母様、マリル、こちらキルジーさんと同様に2年間凄くお世話になったルカさんですわ。もうお父様から事情は聞いていらっしゃるかしら?」

と、紹介しました。

「ええ、聞いているわ。神子認定までこの屋敷でゆっくりなさってね?アイラを守って下さって本当にありがとうございました」

お母様は立っていたルカさんの方へと歩いて行き深々と頭を下げましたの。

「あ、いえ!俺なんかに頭下げないで下さい!」

慌てているルカさんが可愛くて思わず笑ってしまいましたわ。

「天使だ......。やはり今すぐに結婚しなければ誰かに取られてしまうのではないか?」

お兄様の大きな独り言が聞こえてきましたがその独り言を無視してお父様が言いました。

「アイラもルカくんも今日はゆっくり体を休めなさい。夕食は2人の好きな料理にしよう。それとルネは私と聖騎士団の本部に来なさい。キメラ事件の事で国王様から伝達が来ているそうだ」

「え?それ今じゃないといけないですか?折角アイラが帰って来たのに」

「まずは仕事を片付けてからゆっくりアイラと話しなさい」

「......分かりました。じゃあ、アイラ......」

お兄様が私を抱き締めようとした瞬間にお父様が

「では、行ってくるよ。リリー後は頼んだよ?」

と、言ってお兄様を無理矢理引き寄せて移動魔法で消えてしまいましたわ。

「まったく、あの子は隙あらばアイラを狙うのだから」

お母様が呆れたように言いましたわ。

「ルカさん、貴方のお部屋に案内するわね。執事長お願い」

私が帰って来て嬉しいとお部屋の隅で泣きながら立っていた執事長が、畏まりましたと言って頭を下げました。

「ああ、アクアは......」

私が言いかけるとお母様が悲しげな表情を浮かべました。

「ごめんなさいね、アクアは......」

お母様が説明してくれようとしましたが私は知っていますの。

「お母様。大丈夫ですわ。アクアは私の夢で接触してきましたの。今は違うジゲンに行っているのですって。意味がよく分かりませんでしたけど近くに居ない事は分かりました。もう少しすると戻って来ると言ってましたわ」

私の言葉にお母様もマリルも驚いていましたわ。そしてルカさんは違う意味で驚いたようです。

「悪魔って?」

「ふふふ。私幼い頃に悪魔と契約していたのです。2年前の襲撃事件の時にあの男に無理矢理に契約解除されましたの」

「悪魔と契約!やっぱりアイラは凄いな。でもあの男、ずっとアイラに付き纏ってるんだな。用心しないと」

ルカさん、驚いたり心配したり忙しいです。

「でもアクアが言っていた『違うジゲン』とは何なのでしょう?」

私は首を傾げて言いましたわ。

「アクアが帰ってきたら訊いてみましょうね」

お母様が優しく答えてくれました。
何となくですけれどお母様は知っている様な気がしますわ。
『ジゲン』の意味を。

執事長がルカさんをお部屋へと案内しましたので私は自分のお部屋に行きました。10歳の時のままのお部屋です。
何一つ変わらずそのままにしておいてくれたのですわ。
きちんと綺麗に掃除もされています。
ふふふ。と嬉しくてつい笑ってしまいましたわ。

そういえば神託がされたのでしたね。
どんな神託なのか気になりますわ。
お父様は話して下さるかしら?
神子様が関係しているだなんて絶対に前の人生の時の神託とは違うはずですわ。

もしもルカさんが神子様なら守らなくては。絶対にルカさんを危険な目に合わせてはいけませんわ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました

ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。 大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。 ー--- 全5章、最終話まで執筆済み。 第1章 6歳の聖女 第2章 8歳の大聖女 第3章 12歳の公爵令嬢 第4章 15歳の辺境聖女 第5章 17歳の愛し子 権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。 おまけの後日談投稿します(6/26)。 番外編投稿します(12/30-1/1)。 作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

前世で医学生だった私が、転生したら殺される直前でした。絶対に生きてみんなで幸せになります

mica
ファンタジー
ローヌ王国で、シャーロットは、幼馴染のアーサーと婚約間近で幸せな日々を送っていた。婚約式を行うために王都に向かう途中で、土砂崩れにあって、頭を強くぶつけてしまう。その時に、なんと、自分が転生しており、前世では、日本で医学生をしていたことを思い出す。そして、土砂崩れは、実は、事故ではなく、一家を皆殺しにしようとした叔父が仕組んだことであった。 殺されそうになるシャーロットは弟と河に飛び込む… 前世では、私は島の出身で泳ぎだって得意だった。絶対に生きて弟を守る! 弟ともに平民に身をやつし過ごすシャーロットは、前世の知識を使って周囲 から信頼を得ていく。一方、アーサーは、亡くなったシャーロットが忘れられないまま騎士として過ごして行く。 そんな二人が、ある日出会い…. 小説家になろう様にも投稿しております。アルファポリス様先行です。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

1番じゃない方が幸せですから

cyaru
ファンタジー
何時だって誰かの一番にはなれないルビーはしがない子爵令嬢。 家で両親が可愛がるのは妹のアジメスト。稀有な癒しの力を持つアジメストを両親は可愛がるが自覚は無い様で「姉妹を差別したことや差をつけた事はない」と言い張る。 しかし学問所に行きたいと言ったルビーは行かせてもらえなかったが、アジメストが行きたいと言えば両親は借金をして遠い学問所に寮生としてアジメストを通わせる。 婚約者だって遠い町まで行ってアジメストには伯爵子息との婚約を結んだが、ルビーには「平民なら数が多いから石でも投げて当たった人と結婚すればいい」という始末。 何かあれば「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」と言われ続けてきたルビーは決めた。 「私、王都に出て働く。家族を捨てるわ」 王都に行くために資金をコツコツと貯めるルビー。 ある日、領主であるコハマ侯爵がやってきた。 コハマ侯爵家の養女となって、ルワード公爵家のエクセに娘の代わりに嫁いでほしいというのだ。 断るも何もない。ルビーの両親は「小姑になるルビーがいたらアジメストが結婚をしても障害になる」と快諾してしまった。 王都に向かい、コハマ侯爵家の養女となったルビー。 ルワード家のエクセに嫁いだのだが、初夜に禁句が飛び出した。 「僕には愛する人がいる。君を愛する事はないが書面上の妻であることは認める。邪魔にならない範囲で息を潜めて自由にしてくれていい」 公爵夫人になりたかったわけじゃない。 ただ夫なら妻を1番に考えてくれるんじゃないかと思っただけ。 ルビーは邪魔にならない範囲で自由に過ごす事にした。 10月4日から3日間、続編投稿します 伴ってカテゴリーがファンタジー、短編が長編に変更になります。 ★↑例の如く恐ろしく省略してますがコメディのようなものです。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

処理中です...