断罪された大聖女は死に戻り地味に生きていきたい

花音月雫

文字の大きさ
上 下
67 / 128
第二章

間違われましたわ

しおりを挟む
私達は逃げ場も無くその場で立ち尽くしていると前から来た男の人達が私達に気がついた。

「お前達!何処から入って来た!」

「いや、待て!そっちの女はアレじゃないか?」

「あぁぁ、新しく実験した人型のキメラか?」

そうか?そうなのか?と、男の人達がザワザワしている。
私、キメラと勘違いされてる⁉︎
うっ。何か微妙にショックだけど今、この危機を乗り切れる様な気がする!
確かにこの化け物顔はキメラ、いけるかも!

「ソウダ ワタシハ アタラシク ウマレタ モノダ。トナリノ オトコハ カナリノ チカラヲ モッテイル ジッケンダイダ。コレカラ ジッケンシツニ ツレテイク」

片言な感じで話してみた。
その方がキメラっぽいかなって。

ルカさんも手を後ろに回して束縛されている振りをしてくれた。

「はぁ~そうなのか。人型キメラの実験は成功したんだな」

「コレって成功って言えるか?どう見ても化け物だろう?」

「ま、でも主様が実験台の人間を運搬させるぐらいなんだから中々の出来なんじゃねーか?そもそもキメラなんて化け物だろう?ほら、実験室は分かってるのか?」

男の人の1人が訊いてきた。

「キイタガ ワスレタ。ドコダ?ジッケンシツハ」

私はキメラっぽく笑いながら問いかけた。

「「うわー!気持ち悪っ!」」

数人の男の人達が顔をしかめる。
酷い。とびっきりの笑顔なのに。

「もう少し行ったとこにある黄色い扉が実験室だ。早く行かないと使い物にならないって処分されるぞ?」

え?そうなの?
勝手に実験されて勝手に処分されちゃうの?何なの!それ!
私がぷんぷん怒っていたら横からルカさんが肘で突っついてきた。

あ、そうか。
とりあえずこの場から離れないと。
色々バレないうちに。

「ワカッタ モウイク。タスカッタ」

そう言って私達はそそくさと歩いて黄色い扉の前まで来た。

「はぁ~。ヤバかったけどアミーの転機で切り抜けられたな!ありがとう!」

「もう駄目かと思いましたが、この化け物顔が役に立つ日が来るとは思いませんでした」

私がふふふと笑うとルカさんが怒る。

「アイツら後でボッコボコにしてやるからな!アミーは化け物なんかじゃないからな?」

何処までも優しいなルカさんは。
実験室まで辿り着いたので中に入ってみる事にした。でも中に人が居たら。私達2人では戦えない。

......。
一瞬考えたけどそこはどうにでもなれ精神で扉を開けた。

中には何をどう使うのか分からない装置が沢山置いてあった。
その装置を見てるだけも気持ちが悪い。

キョロキョロと室内を見渡したけど誰も居ないみたいだ。

2人でホッとする。

「何か不気味ですね」

私はルネさんね服の裾を無意識に握っていた。それに気がついたルネさんが私と手を繋いでくれた。
うん。安心感。

「本当に変な所だな。実験ってどうやってるんだろう?」

「知りたいかい?」

突然に後ろから声がして2人して体がビックってなった。
誰か居たの?気配無かったけど。

振り返ると男の人が立っている。
その人はニヤニヤしながら少し近づいて来た。ルカさんがサッと私を後ろに隠す。

「本当にお前は何処に行っても何処に居てもどんな姿でも守ってくれる奴が現れるんだなー。それが大聖女としての資質なんかなー」

え?それって私の事?

「私の事を知ってるのですか?」

即質問する。

「あぁ。覚えて無いと思うが俺達は腐れ縁だ。お前が何故か俺がする事に関わってくるんだよなー。
かれこれ4回目になるかー。あっ、3回目は俺の方から参加したけどな。3回目ってのはお前が記憶失くしたときな」

ジリジリと寄ってくる。
ルカさんと一緒にジリジリ後ろに下がる。

「あ~やっぱりすげー化け物だな。あの女、手加減なしかよ。あんなに美少女だったのにみる影もない。力は封印されたままだな。流石俺だわ」

「貴方が私の力を封印したの⁉︎何故⁉︎」

「説明面倒くさいからしない。兎に角お前の力が邪魔だったしな、あの時は。ま、昔話は後で時間があればするよ。で、お前達は実験された奴ら、見たくない?」

男の人が指を指す方を見たら奥の方に大きい水槽があった。
とても嫌な予感がする。
でも行かないといけないような気もする。私とルカさんは2人でその水槽まで歩いて行った。

あぁぁ。やっぱり。

水槽は壁一面にあってかなりの大きさだ。それこそ人が何人も入れるぐらい。

その中に......。
3人の人魚と2人の海坊主が泳いでいた。
人魚の1人は女の人であとの2人は男の人だ。海坊主はどちらも男の人だった。

「マルタ......。マルタだ!大きくなってるけど!なんて酷い!なんて事を!」

ルカさんが叫んで水槽に両手を付いた。
あの人魚がマルタさん⁉︎

「マルタ!マルタ!」

ルカさんが女の人魚に向かって叫んだ。
すると泳いでいた女の人魚が側にきてルカさんの手に自分の手を水槽越しに合わせ顔を歪めた。
水の中だから見えないけどきっと泣いてるんだと思う。

「あぁぁ~。あの女は珍しく長生きしてるんだよな。大体女は適合しなくて直ぐに死んじまうんだが。ほら、あっちの男は女よりも長生きだ。海坊主は駄目だな。何回作っても直ぐに死ぬ」

「何故?何故こんな事をしているのですか?」

私は震える声で訊く。

「あ?面白いから」

「面白い⁉︎」

私は自分の頭に血が上るのを感じた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

裏切られた公爵令嬢は、冒険者として自由に生きる

小倉みち
ファンタジー
 公爵令嬢のヴァイオレットは、自身の断罪の場で、この世界が乙女ゲームの世界であることを思い出す。  自分の前世と、自分が悪役令嬢に転生してしまったという事実に気づいてしまったものの、もう遅い。  ヴァイオレットはヒロインである庶民のデイジーと婚約者である第一王子に嵌められ、断罪されてしまった直後だったのだ。  彼女は弁明をする間もなく、学園を退学になり、家族からも見放されてしまう。  信じていた人々の裏切りにより、ヴァイオレットは絶望の淵に立ったーーわけではなかった。 「貴族じゃなくなったのなら、冒険者になればいいじゃない」  持ち前の能力を武器に、ヴァイオレットは冒険者として世界中を旅することにした。

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

21時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜

はくまい
ファンタジー
ひょんなことから異世界へと転生した少女、江西奏は、全く知らない場所で目が覚めた。 目の前には小さなお家と、周囲には森が広がっている。 家の中には一通の手紙。そこにはこの世界を救ってほしいということが書かれていた。 この世界は十人の魔女によって支配されていて、奏は最後に召喚されたのだが、宛先に奏の名前ではなく、別の人の名前が書かれていて……。 「人違いじゃないかー!」 ……奏の叫びももう神には届かない。 家の外、柵の向こう側では聞いたこともないような獣の叫ぶ声も響く世界。 戻る手だてもないまま、奏はこの家の中で使えそうなものを探していく。 植物に愛された奏の異世界新生活が、始まろうとしていた。

悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!

naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』 シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。 そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─ 「うふふ、計画通りですわ♪」 いなかった。 これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である! 最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

処理中です...