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第二章

会議ですわ

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「えっと、シャーロットさん、ダリルさん、ルネさん、ミカエルさん、この2年間私を探してくれてありがとうございます。大変だったと思います。それなのに記憶が無くてごめんなさい」

私はきちんとお礼を言わなくてはと思い、今が皆さん揃っているので丁度良いタイミングではないかと思った。

気にする事はないと4人ともニコニコ顔だ。先程まで泣いていたルネさんも笑顔になった。
良かった!

「それで?ルネさんとしてはアミーを王都に連れて帰りたいんだね?」

「名前はアイラです」

「え?」

「アミーではなく、アイラです」

「私の前ではアミーなんだよ」

「「......」」

キルジーさんとルネさんが名前についてバチバチしてる。共に最後は無言だ。

「さっきも言ったけどさ、アミーはこの島でやりたい事があるんだよ。連れて帰るにしても少し待って欲しい」

そのバチバチを遮るようにルカさんがルネさんにお願いする。

「それ、どんな事ですか?」

ミカエルさんが訊いてきた。
言っても良いの?
どうなの?
私はダリルさんを見る。

「何故そこでその男を見るのだ⁉︎私を見なさい」

面倒くさいな。

「多分言わないと納得しないでしょうから仕方ないです」

ダリルさんがため息混じりにOKを出してくれた。

今日聞いた岩山の件の事もキルジーさん達に報告ついでに今まで調べた事をルネさんとミカエルさんに話した。

「なんと。その様な事が!更に国王さまから密命がされていたなんて!」

ミカエルさんの顔が青くなる。分かりやすく驚いているようだ。

「国王様から宰相に密命がされているのなら聖騎士団長にも密命がされていると思うぞ?」

ルネさんがあっけらかんと言う。

「え⁉︎そうゆうものなんですか?」

「そうゆうものだ。しかし話を聞くと実験場所はこの島の可能性がかなり高いな」

ルネさんが少し考え込む。
そんなルネさんを見て私は思う。
やっぱり綺麗でカッコいいのに真の変態って勿体無いな、と。

「で、何故アイラがこの事件を解決しなければいけないのだ?」

ひょ⁉︎突然!

「や、え?それは人魚を生で見てしまって......」

「見てしまって?」

ルネさんはため息をつく。

「アイラのそういうところは変わってないのだな。昔から巻きこれる、勢いで関わってしまう、ただなんとなく?的な感じだった。今回もそんな感じなのか?」

そうだったのか?ならばシャーロットさんやダリルさんが言っていた事件を解決したっていうのも何か違うのでは?
成り行きで解決しちゃった感じ?
それでも今回は......。

「過去の私がそうだったとしても!今回は自分の意思で解決したいと、解決までいかなくても調べた事を然るべき機関に報告して調査して欲しいと思いました!だってキルジーさんの娘さんを見つけたいから!私を助けてくれたキルジーさんに少しでも恩返ししたいから!パンや石をぶつけられてた私を優しく助けてくれたからぁぁぁ~」

私はキルジーさんと出会った時の事を思い出して何だか胸いっぱいになり思わず叫んでしまった。

「アミー、そんな事思ってくれてたのかい?あぁぁ、なんていい子なんだい......」

キルジーさんがエプロンで涙を拭いている。

「石?パン?」

シャーロットさんが呟く。

「ぶつけられた⁉︎」

ダリルさんが低い声で繰り返す。

「何処のどいつだ。連れて来い。殺す」

ルネさんがルカさんに命令している。

ルネさんの言葉にシャーロットさんもダリルさんも頷いている。
何か話がズレてきているような?

「私の事はえーと、後で、そう!後でいいのでキメラ事件を......」

私は慌てて話をして元に戻す。

「分かった。とりあえず明日その岩山とやらを見に行ってみようか」

「え?あ、はい!」

「アイラは一度決めた事は最後までやり通す子だ。私がここで何を言っても駄目だろう。それなら早く決着をつけて連れて帰る事にする」

ルネさんが高らかに宣言した。

「そうかい。分かったよ。とりあえず今あたしとダンは夕方の仕込みに入るからあんた達で会議して色々決めておくれ。決まった事は全部あたしに報告する事!いいかい?」

キルジーさんが笑顔で私達に言った。
ダンさんも良かったなと私の頭を撫でてくれた。
その手をルネさんが振り払う。
何をする。ダンさんのナデナデは私の癒しなのに!

その後は会議が始まったのだけどルネさん、ミカエルさん、ダリルさん、シャーロットさんが意見を出し合っていた。
本当の会議みたいでカッコいい。
でも私とルカさんはそれを黙って聞いてるだけ。

だってなんか、内容が専門的っぽくて私が発言するなんて場違いな気がしたから。
ルカさんも私と同じ事を思ったみたいで黙っている。

会議の結果。
岩山を調べてから今まで調べた事の報告書を作り聖騎士団長に送る事になった。
これ以上は素人の私達が首を突っ込むと危険だとルネさんが言ったので。
聖騎士団長に委ねる事にしたのだ。

会議が終わった頃に丁度レストランの夕方営業が始まった。
私は従業員なのでエプロンをして厨房に行こうとしたらルネさんに手を掴まれた。

「その姿は?何処へ行くのだ?」

「私、ここの従業員なので働きに行きます」

「働くだと⁉︎」

「はい。そうですけど?」

ルネさんが体を震わせてワナワナしている。

「なんて事だ!2年間も働いていたのか?あぁ、だからこんなに手がカサカサに!アイラの白魚のような手が......。今日から働くのは禁止する」

「え?」

「駄目ですよ?またそんな事言ってアイラ嬢を困らせないで下さい。アイラ嬢にはここでの生活があるんですよ?ルネ様の知らない2年間の。そーゆー我儘は王都に連れて帰ってから言って下さい」

ミカエルさんにまた怒られる。

「むう」

と、一言だけ言ってルネさんは静かになった。私はミカエルさんにお礼を言って厨房に行った。
もうお皿が溜まっている。

隣にスッとダリルさんが来て一緒にお皿を洗い出した。
レストランホールにはキルジーさんと一緒にシャーロットさんが注文をとっている。いつの間にかこの2人も従業員になっていた。
何故か嬉しくて気持ちが温かくなった。



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