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第二章
シャーロットですわ
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この島でそんな事が起こっていたなんて。話を聞く限りではどう考えても誘拐。子供達を攫って何をしているのだろうか?身代金要求もなし、そもそもお金が目的なら孤児院の子を攫ったりしないよね。うーん。
でも攫われた子達は何処に居るんだろう?この島、そんなに大きくないし。島から出てる?わざわざ島の外からやって来て攫って?
考えれば考えるほど分からなくなってきた。
キルジーさん、辛いだろうな。
私はなんと声をかけていいか分からなかった。
それを察してかキルジーさんは私の頭をポンポンして言った。
「あたしはね、諦めてないよ?いつか娘が帰って来ると信じてるんだよ」
「はい。そうですね」
私達は微笑み合った。
「アミー、ルカのとこに行って魚買ってきておくれ。突然に団体客の予約が入っちまって食材が足りない!」
次の日の朝、そう言ってキルジーさんは買って欲しい魚の種類を紙に書いて私に渡す。
「はい。分かりました。行ってきます」
このレストランからルカさんの魚屋さんまではそう遠くない。
私の足で歩いても15分ぐらいだ。
いつもの様に頭からしっかりスカーフを巻いて顔を隠す。
「こんにちは。このお魚ありますか?」
魚屋さんに到着して声をかける。
出てきたのはルカさんのおじいさんだ。
「おお!アミーちゃん久しぶりだね!元気だったかい?」
ルカさんと同じ綺麗な金髪のおじいさん。名前はカミュさん。
「はい。元気です!ルカさんにはいつもお世話になってます」
カミュさんはタレ目をフニャ~とさせて
「アミーちゃんは小さいのにしっかりしてるな」
と言って頭をポンポンしてくれた。
いつも会うとポンポンしてくれるのだ。
でも私、カミュさんが思っている様な年齢ではないと思う。多分。
「あれ?ルカさんは居ないの?」
「あいつは今漁に出てるよ。漁師仲間の船に乗ってる子の代わりにね」
「あら。その子体調でも悪くなったの?」
「いや、違うんだ。先週海で人魚を見たって言ってね、怖いからもう船に乗りたく無いって駄々をこねたんだよ。それで人手が足りないからルカを貸してもらえないかってね」
カミュさんは私が渡した魚のリストを見ながら袋に入れていく。
「人魚?人魚ってあの上が人間で下が魚の?」
「ああ。そうらしい。あの海は人魚を見たとか海坊主を見たとかそういった噂が絶えないんだよ。ワシは見たことないがね」
人魚とか海坊主とかって伝説の生き物だ。きっと何か生物の見間違いとか突然変異で形が変わってしまった生物とかなのでは?
「はいよ。全部あったよ~。安くしとくから」
「ありがとうございます」
カミュさんから袋を受け取り代金を支払う。すると遠くから叫び声が聞こえる。それがどんどん近くなってきた。
「アイラァァァァーーー!!」
カミュさんと私は声がする方を見た。
とても美人な女の子がこちらに向かって走って来る。
来るけどアイラなんて子は知らないので私には関係ない。
カミュさんにお辞儀をして帰ろうとするとその美人さんに突然抱きつかれた。
「ひゃぁ?」
思わず変な声が出てしまった。
「アイラ!アイラ!アイラァァァ!」
美人さんは私に抱きついたまま泣き出してしまう。
「え?え?私はアイラさんって方ではありませんが?」
動揺しながらも説明する。
「この声!絶対にアイラだし!この匂いもアイラだし!このサラサラの髪の毛もアイラだし!ずっと探してたのーー!うわぁぁぁぁぁぁん!会いたかったぁぁぁ!!」
美人さんは叫びながらも絶対に私を離そうとしない。
カミュさんがお店から出てきてくれた。
「お嬢さん、見かけない顔だけど島の外から来たのかな?」
優しく美人さんに話しかける。
美人さんはうん、うんと頷くものの私から離れる気配はない。
「お嬢さん、アミーちゃんが困っているから一旦離れて事情を話してくれるかな?」
「嫌だぁぁぁぁぁぁ!この手を離したらまた何処かに行っちゃう!」
ぎゅうぎゅう締め付けてくるので息が苦しくなってきた。私の体は華奢な上に太れなくてガリガリだから骨が折れそうだ。誰か助けてくれ。
「おい。女。アミーを離せよ。そんなに強く締め付けたら骨が折れちまうぞ。ほらほら」
いつの間にか帰って来ていたルカさんが私から美人さんを剥がしとる。
「いやぁぁぁぁぁぁ!アイラと私を離さないでぇぇぇぇ!!」
美人さんの体をルカさんが両手で掴んで離さないのでこちらに来ようとしても足が進まない。
私と距離が離れて更に大泣きする。
美人さんなのに凄い顔になってしまっているが大丈夫か?
「君、アミーの顔も見ないでア?アイ?誰だかだって分かんないだろう?少し落ち着けよ」
「アイラよ!ア・イ・ラ!今のアイラの顔を見たってどうしょもないわよ!変えられてるんだから!本当の顔じゃないもん!」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら美人さんは叫ぶ。
え?本当の顔じゃない?
変えられてる?
ルカさんもえ?って顔をした。
勿論カミュさんも。
とりあえず美人さんを引きずり魚屋さんの中に入れて椅子に座らせた。
私も一緒に中に入ったら美人さんが手を繋いできて離さないので隣の椅子に座る。カミュさんが温かい紅茶を淹れてくれてそれを美人さんに渡した。
一口飲んでほぉ~と息を吐く。
そして私の方を見てニッコリと微笑んだ。
「良かったわ。まだ誰もアイラの所に来てないみたいね。私が一番。やっぱり私だけのアイラよ」
美人さんは訳のわからない事を言って握っている手に力を入れてきた。
でも攫われた子達は何処に居るんだろう?この島、そんなに大きくないし。島から出てる?わざわざ島の外からやって来て攫って?
考えれば考えるほど分からなくなってきた。
キルジーさん、辛いだろうな。
私はなんと声をかけていいか分からなかった。
それを察してかキルジーさんは私の頭をポンポンして言った。
「あたしはね、諦めてないよ?いつか娘が帰って来ると信じてるんだよ」
「はい。そうですね」
私達は微笑み合った。
「アミー、ルカのとこに行って魚買ってきておくれ。突然に団体客の予約が入っちまって食材が足りない!」
次の日の朝、そう言ってキルジーさんは買って欲しい魚の種類を紙に書いて私に渡す。
「はい。分かりました。行ってきます」
このレストランからルカさんの魚屋さんまではそう遠くない。
私の足で歩いても15分ぐらいだ。
いつもの様に頭からしっかりスカーフを巻いて顔を隠す。
「こんにちは。このお魚ありますか?」
魚屋さんに到着して声をかける。
出てきたのはルカさんのおじいさんだ。
「おお!アミーちゃん久しぶりだね!元気だったかい?」
ルカさんと同じ綺麗な金髪のおじいさん。名前はカミュさん。
「はい。元気です!ルカさんにはいつもお世話になってます」
カミュさんはタレ目をフニャ~とさせて
「アミーちゃんは小さいのにしっかりしてるな」
と言って頭をポンポンしてくれた。
いつも会うとポンポンしてくれるのだ。
でも私、カミュさんが思っている様な年齢ではないと思う。多分。
「あれ?ルカさんは居ないの?」
「あいつは今漁に出てるよ。漁師仲間の船に乗ってる子の代わりにね」
「あら。その子体調でも悪くなったの?」
「いや、違うんだ。先週海で人魚を見たって言ってね、怖いからもう船に乗りたく無いって駄々をこねたんだよ。それで人手が足りないからルカを貸してもらえないかってね」
カミュさんは私が渡した魚のリストを見ながら袋に入れていく。
「人魚?人魚ってあの上が人間で下が魚の?」
「ああ。そうらしい。あの海は人魚を見たとか海坊主を見たとかそういった噂が絶えないんだよ。ワシは見たことないがね」
人魚とか海坊主とかって伝説の生き物だ。きっと何か生物の見間違いとか突然変異で形が変わってしまった生物とかなのでは?
「はいよ。全部あったよ~。安くしとくから」
「ありがとうございます」
カミュさんから袋を受け取り代金を支払う。すると遠くから叫び声が聞こえる。それがどんどん近くなってきた。
「アイラァァァァーーー!!」
カミュさんと私は声がする方を見た。
とても美人な女の子がこちらに向かって走って来る。
来るけどアイラなんて子は知らないので私には関係ない。
カミュさんにお辞儀をして帰ろうとするとその美人さんに突然抱きつかれた。
「ひゃぁ?」
思わず変な声が出てしまった。
「アイラ!アイラ!アイラァァァ!」
美人さんは私に抱きついたまま泣き出してしまう。
「え?え?私はアイラさんって方ではありませんが?」
動揺しながらも説明する。
「この声!絶対にアイラだし!この匂いもアイラだし!このサラサラの髪の毛もアイラだし!ずっと探してたのーー!うわぁぁぁぁぁぁん!会いたかったぁぁぁ!!」
美人さんは叫びながらも絶対に私を離そうとしない。
カミュさんがお店から出てきてくれた。
「お嬢さん、見かけない顔だけど島の外から来たのかな?」
優しく美人さんに話しかける。
美人さんはうん、うんと頷くものの私から離れる気配はない。
「お嬢さん、アミーちゃんが困っているから一旦離れて事情を話してくれるかな?」
「嫌だぁぁぁぁぁぁ!この手を離したらまた何処かに行っちゃう!」
ぎゅうぎゅう締め付けてくるので息が苦しくなってきた。私の体は華奢な上に太れなくてガリガリだから骨が折れそうだ。誰か助けてくれ。
「おい。女。アミーを離せよ。そんなに強く締め付けたら骨が折れちまうぞ。ほらほら」
いつの間にか帰って来ていたルカさんが私から美人さんを剥がしとる。
「いやぁぁぁぁぁぁ!アイラと私を離さないでぇぇぇぇ!!」
美人さんの体をルカさんが両手で掴んで離さないのでこちらに来ようとしても足が進まない。
私と距離が離れて更に大泣きする。
美人さんなのに凄い顔になってしまっているが大丈夫か?
「君、アミーの顔も見ないでア?アイ?誰だかだって分かんないだろう?少し落ち着けよ」
「アイラよ!ア・イ・ラ!今のアイラの顔を見たってどうしょもないわよ!変えられてるんだから!本当の顔じゃないもん!」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら美人さんは叫ぶ。
え?本当の顔じゃない?
変えられてる?
ルカさんもえ?って顔をした。
勿論カミュさんも。
とりあえず美人さんを引きずり魚屋さんの中に入れて椅子に座らせた。
私も一緒に中に入ったら美人さんが手を繋いできて離さないので隣の椅子に座る。カミュさんが温かい紅茶を淹れてくれてそれを美人さんに渡した。
一口飲んでほぉ~と息を吐く。
そして私の方を見てニッコリと微笑んだ。
「良かったわ。まだ誰もアイラの所に来てないみたいね。私が一番。やっぱり私だけのアイラよ」
美人さんは訳のわからない事を言って握っている手に力を入れてきた。
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