上 下
33 / 81
第一章

お兄様からのお手紙ですわ

しおりを挟む
「愛しい、愛しいアイラ。毎日アイラに会いたくて喉が渇くんだ。
この孤独感、喪失感、そして夜のモヤモヤと毎日戦っているよ。

毎週書いて送っている手紙は読んでくれているだろうか?いや、訊くまでもないね。アイラから来る1ヶ月に一回の手紙の内容を読むと僕が送っている手紙の内容と全然繋がらない。きっと一通も読んでないのだろう?

最初はお父様とお母様に送る手紙に同封していたけれど絶対にお父様に捨てられていると気がついたんだ。お父様には聖騎士学園に入る前の日、立派な紳士になって帰っておいでと言われたよ。

そう、だからアイラに書く手紙は僕の最上級の紳士的な内容なのだけど、お父様にはそうは思ってもらえなかったようだね。

だから僕はお父様とお母様宛てとは別にアイラ宛てに送る事にしたのだよ。でもやはりアイラからの手紙の内容と僕が送っている手紙の内容が食い違う。
うーん。何故だろう?

考えた結果、これもまたお父様なのではないのかと思ったよ。お父様達と別に送っても結局は同じ屋敷に届くのだよね。日にちをずらしたとしても郵便物はお父様のチェックが入るのだもの。
ははは。気が付くのが少し遅かったね。

僕はね、アイラに愛を伝える為に一生懸命手紙を書いているんだ。それなのに届かない。悲しいよね。
それで僕はまた新しい魔術を勉強し習得したんだ。アイラに手紙を、いや、愛を届けたい一心で。

愛する人だけにしか見えない、開けられない手紙魔術を完璧に習得したんだ。 
今回はそれを実行するよ。
これで僕の4年間溜まっていたアイラへの愛を届ける事が出来る。
嬉しいよ。

僕が屋敷を出てからもう4年になる。
その間に僕は心身共に大人になったんだ。もう十分にアイラを愛せる身体にもなった。

僕の部屋には家族全員で絵師に描いてもらった肖像画を飾っているんだ。その絵のアイラは最後にお別れした時のだからまだ6歳だ。
本当は今のアイラの肖像画が欲しいのだけれど、アイラだけが描かれている一枚物が欲しいのだけれどお父様に却下されたんだ。今のアイラの肖像画をどうするのかって、何かに使うのではないのか?って返事がきたよ。

そんな事、お父様も男なら分かるでしょう?と返事を書いたらしばらく返事が来なくなったんだ。お父様は同じ男として時々分からない。ね?アイラどう思う?

愛しいアイラ。肖像画に頼らなくてもいい日が早く来る事を毎日祈っているよ。
あと一年経ったら一度そちらに帰れる。それまで良い子にして待っていて欲しい。僕は今から毎日そちらに帰る日をカウントダウンしているんだ。
それ程楽しみにしているんだよ?
アイラも楽しみにしてくれているよね?

あの約束は覚えていてくれているだろうか?僕はその約束を胸に今、聖騎士達の中でトップを維持している。
アイラに色々できる日を心待ちにして。

それではまたね。
お返事待っているよ。
良い夢を。

アイラの大好きなルネより」

......。相変わらずの変態だな。何が「アイラの大好きな」だよ。キモいから。聖騎士学園に行っても何も変わっていない。そりゃ変わるわけねーよな。離れたからといってアイラを忘れたり諦めたり出来るわけがない。
あれは上玉だ。一度虜になってしまったら抜け出すのは無理だ。
それに詰めが甘いとこもどこか抜けてる阿保なとこもな。

いや~。変態兄貴、残念だったな。
アイラにしか見えない、開けられないって事は俺にも見えるし開けられるんだよ。アイラと俺は契約で繋がってるからな。て、事はよく考えたら俺も変態兄貴の愛しい人になっちゃってるわけ?うぇーーー!勘弁してくれよ!

てなわけでこんな気持ち悪い手紙は即破棄だ破棄。俺が先に見つけてよかったぜ。アイラの部屋直通で届くとはな。

アイツ、変な魔力ばっかり習得してねーだろうな⁉︎変態のくせに魔力の量や力が半端ないから変な技を習得してきたら面倒くせーんだよな。

「アクア?何を読んでいるのです?」

「あ~この前、買い物しただろう?あれの請求書だ。気にすんな」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

ヒューストン家の惨劇とその後の顛末

よもぎ
恋愛
照れ隠しで婚約者を罵倒しまくるクソ野郎が実際結婚までいった、その後のお話。

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。 そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。 「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」 ※ご都合主義、ふんわり設定です ※小説家になろう様にも掲載しています

前世を思い出したのでクッキーを焼きました。〔ざまぁ〕

ラララキヲ
恋愛
 侯爵令嬢ルイーゼ・ロッチは第一王子ジャスティン・パルキアディオの婚約者だった。  しかしそれは義妹カミラがジャスティンと親しくなるまでの事。  カミラとジャスティンの仲が深まった事によりルイーゼの婚約は無くなった。  ショックからルイーゼは高熱を出して寝込んだ。  高熱に浮かされたルイーゼは夢を見る。  前世の夢を……  そして前世を思い出したルイーゼは暇になった時間でお菓子作りを始めた。前世で大好きだった味を楽しむ為に。  しかしそのクッキーすら義妹カミラは盗っていく。 「これはわたくしが作った物よ!」  そう言ってカミラはルイーゼの作ったクッキーを自分が作った物としてジャスティンに出した…………──  そして、ルイーゼは幸せになる。 〈※死人が出るのでR15に〉 〈※深く考えずに上辺だけサラッと読んでいただきたい話です(;^∀^)w〉 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げました。 ※女性向けHOTランキング14位入り、ありがとうございます!!

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...