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第一章

お兄様からのお手紙ですわ

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「愛しい、愛しいアイラ。毎日アイラに会いたくて喉が渇くんだ。
この孤独感、喪失感、そして夜のモヤモヤと毎日戦っているよ。

毎週書いて送っている手紙は読んでくれているだろうか?いや、訊くまでもないね。アイラから来る1ヶ月に一回の手紙の内容を読むと僕が送っている手紙の内容と全然繋がらない。きっと一通も読んでないのだろう?

最初はお父様とお母様に送る手紙に同封していたけれど絶対にお父様に捨てられていると気がついたんだ。お父様には聖騎士学園に入る前の日、立派な紳士になって帰っておいでと言われたよ。

そう、だからアイラに書く手紙は僕の最上級の紳士的な内容なのだけど、お父様にはそうは思ってもらえなかったようだね。

だから僕はお父様とお母様宛てとは別にアイラ宛てに送る事にしたのだよ。でもやはりアイラからの手紙の内容と僕が送っている手紙の内容が食い違う。
うーん。何故だろう?

考えた結果、これもまたお父様なのではないのかと思ったよ。お父様達と別に送っても結局は同じ屋敷に届くのだよね。日にちをずらしたとしても郵便物はお父様のチェックが入るのだもの。
ははは。気が付くのが少し遅かったね。

僕はね、アイラに愛を伝える為に一生懸命手紙を書いているんだ。それなのに届かない。悲しいよね。
それで僕はまた新しい魔術を勉強し習得したんだ。アイラに手紙を、いや、愛を届けたい一心で。

愛する人だけにしか見えない、開けられない手紙魔術を完璧に習得したんだ。 
今回はそれを実行するよ。
これで僕の4年間溜まっていたアイラへの愛を届ける事が出来る。
嬉しいよ。

僕が屋敷を出てからもう4年になる。
その間に僕は心身共に大人になったんだ。もう十分にアイラを愛せる身体にもなった。

僕の部屋には家族全員で絵師に描いてもらった肖像画を飾っているんだ。その絵のアイラは最後にお別れした時のだからまだ6歳だ。
本当は今のアイラの肖像画が欲しいのだけれど、アイラだけが描かれている一枚物が欲しいのだけれどお父様に却下されたんだ。今のアイラの肖像画をどうするのかって、何かに使うのではないのか?って返事がきたよ。

そんな事、お父様も男なら分かるでしょう?と返事を書いたらしばらく返事が来なくなったんだ。お父様は同じ男として時々分からない。ね?アイラどう思う?

愛しいアイラ。肖像画に頼らなくてもいい日が早く来る事を毎日祈っているよ。
あと一年経ったら一度そちらに帰れる。それまで良い子にして待っていて欲しい。僕は今から毎日そちらに帰る日をカウントダウンしているんだ。
それ程楽しみにしているんだよ?
アイラも楽しみにしてくれているよね?

あの約束は覚えていてくれているだろうか?僕はその約束を胸に今、聖騎士達の中でトップを維持している。
アイラに色々できる日を心待ちにして。

それではまたね。
お返事待っているよ。
良い夢を。

アイラの大好きなルネより」

......。相変わらずの変態だな。何が「アイラの大好きな」だよ。キモいから。聖騎士学園に行っても何も変わっていない。そりゃ変わるわけねーよな。離れたからといってアイラを忘れたり諦めたり出来るわけがない。
あれは上玉だ。一度虜になってしまったら抜け出すのは無理だ。
それに詰めが甘いとこもどこか抜けてる阿保なとこもな。

いや~。変態兄貴、残念だったな。
アイラにしか見えない、開けられないって事は俺にも見えるし開けられるんだよ。アイラと俺は契約で繋がってるからな。て、事はよく考えたら俺も変態兄貴の愛しい人になっちゃってるわけ?うぇーーー!勘弁してくれよ!

てなわけでこんな気持ち悪い手紙は即破棄だ破棄。俺が先に見つけてよかったぜ。アイラの部屋直通で届くとはな。

アイツ、変な魔力ばっかり習得してねーだろうな⁉︎変態のくせに魔力の量や力が半端ないから変な技を習得してきたら面倒くせーんだよな。

「アクア?何を読んでいるのです?」

「あ~この前、買い物しただろう?あれの請求書だ。気にすんな」

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