上 下
22 / 89
第一章

ユリアン様にお呼ばれですわ

しおりを挟む
あの夜にお兄様が落としていった爆弾発言ですが......。
本当ですの?信じたくないのですが。

アクアと2人になったので訊いてみましたわ。

「アクアはあの夜、お兄様と私のお話を聞いていましたわよね?お兄様のあの話、どう思います?真実でしょうか?」

アクアはチラッと私を見ました。

「本当の親子でもそうでなかったとしてもアイツらの愛情は変わらないんじゃねーの?それなら気にする方が無駄な体力使うぞ?」

むむむ。どうやら真実を知っているようですわね。でも言う気も無さそうなので追求はしませんわ。悪魔ってちょっとだけ厄介な生き物ですわ。

「そうですね。いつか分かる日が来るでしょうからその時まではこのままにしておきます」

「そうだな」

アクアが微笑みました。
あら?アクアってば案外色男なのでは?
今更ですがそれなりにカッコ良いのですね?

それから数日経ち王城から帰ろうと馬車に向かって歩いているとユリアン様が追いかけてきましたわ。

「アイラ様、今度我が家で一緒にお茶しませんか?ほら、あの例の幽霊を見た私の従姉妹が遊びに来ていまして。アイラ様、少しご興味がおありな感じでしたので直接お話を聞いてみたらいかがでしょう?」

「まぁ!嬉しいですわ!是非!」

「エレーネ様に伝わると面倒な事になりそうなので後ほどご招待状をお送り致しますわね!アイラ様しかご招待しませんのでご安心下さい」

楽しそうなお茶会ですわ!
これでユリアン様とも、もっと仲良くなれそうですわ。ふふふ。初めてのお友達ですもの。もっと仲良くしたいです。

それから間も無くしてユリアン様から招待状が届きました。
しかもお泊まりでどうですか?ってなっていましたわ!
お泊まりですって!エレーネ様からのお誘いの時はあまり乗り気では無かったのですがユリアン様からのお誘いはとても心躍ります!

「宰相様のお屋敷だから安全だろうし。初めてのお泊まりとしては良いね。行っておいで」

お父様からOKが出ましたわ!

「良い子にして、絶対に聖力は使っては駄目ですよ?」

お母様からもOKが出ましたわ!

数日後、初めてのお泊まりの日ですの。
前の人生でもお友達のお屋敷にお泊まりした事など無かったのでドキドキですわ。そもそも私にはお友達がいなかったのですわ。あ、シャーロットが嘘ん子のお友達でしたけれど。

もちろんアクアとマリルも一緒です。
マリルはお兄様の件以来自分は役立たずだと落ち込んでいましたが私が「必殺アイラ天使の微笑み」で復活させましたわ。
マリルは基本的には強いのです。武芸に秀でてますのよ。

アクアも悪魔なので強いはずなのですがお兄様にしてやられるとは本当にどこかヌケてますわよね。ま、そこが憎めないところでもありますけれど。

あ、ユリアン邸に到着致しましたわ。

「アイラ様、いらっしゃいませ!お待ちしていましたわ!」

ユリアン様がお屋敷の前までお迎えに来て下さっています。
あら?お隣に立っていらっしゃる男の子はどちら様で?

「アイラ様、ご紹介させて頂きます。私のお兄様でダリルといいます。私より2歳上なのでアイラ様より3歳上ですわね」

そう紹介された男の子は肩まで伸びているユリアン様と同じ茶色い髪の毛を後ろで縛っています。ユリアン様はくせ毛ですがダリル様はサラサラのストレートですわ。瞳の色も少し違っていてユリアン様は薄い赤ですがダリル様は綺麗なピンク色の瞳をしています。
これは大人になったらご婦人方が放って置きませんわね。

ユリアン様も可愛らしいお顔ですがダリル様もとても可愛いお顔です。殿方なのに可愛いって言われるのはお嫌かしら?

「初めまして。アイラ嬢。ダリル・コスナーと申します。よろしくね」

微笑んだお顔が素敵過ぎて私、よろけてしまいましたわ。

「おい。チビ。色気づいてんじゃねーよ」

後ろから支えてくれたアクアに小さな声で怒られました。久しぶりにチビって言われましたわ!むむむ。

ダリル様が私をエスコートしてくれています。まぁ!舞踏会でも無いのにとても自然に私の手をとりお部屋まで案内してくれました。

「またお茶の時間にお会いしましょう」

そう言って下さいましたわ。
私、ちょっとポ~となってしまいました。

「だからよ!チビ!ポ~ってなってんじゃねーよ!」

またアクアに怒られましたわ。
何故アクアに怒られなければならないのでしょう?私達、別に婚約者とかではないのですよ?

最初に入ったお部屋にユリアン様のお父様、ジョージ・コスナー様と奥様のアン様がいらっしゃいました。

流石、この国の宰相様です。
お優しい雰囲気を醸し出しながらも厳しさと頭の良い感じがバンバン出ていますわ!

「初めましてアイラ・エバンズと申します。本日はお招き頂きありがとうございます」

私はお2人にカーテシーをしました。

「おや、おや、まだ6歳なのにしっかりしたお嬢さんだね。初めまして、ユリアンの父親のジョージだ。今日は楽しんでいきなさい」

笑ったお顔がダリル様とそっくりです。

「まぁ!なんて可愛らしいお嬢様なのかしら!ユリアンと仲良くしてくれてありがとう。今日はアイラちゃんの好きなマカロンを用意してあるので楽しみにしていてね?」

優しそうなお母様ですね。

午後のお茶の時間までユリアン様のお部屋でゆっくりする事になりました。
ユリアン様のお部屋はとても可愛らしく白とピンクを基調に全体的にふわふわした感じです。

「わぁ!可愛いお部屋ですね!」

「アイラ様に褒めてもらえて嬉しいです!」

2人でニマニマ笑いながら椅子に座ります。アクアとマリルはお部屋の隅に立っていてもらっています。

冷たいクランベリージュースが出てきました。それを2人で飲みながら王城での出来事を語り合います。

「私達はエレーネ様にとってどんな立ち位置なのでしょうね?お友達でもなく?侍女でもなく?うーん」

「え?アイラ様は婚約者候補ですよね?」

はっ?ユリアン様も知っていらっしゃる?

「だって、嫁に欲しいって言われたのでしょう?」

「そこまで知ってますのね......」

そうですわよね。宰相様のお嬢様ですもの。

「今のところはアイラ様にベタ惚れって感じですわよね?私なんて毎回居ないもの扱いですし」

「あ、いえ、そんな事は......」

「全然気にして無いから大丈夫ですよ!私、毎回お茶の時間に出てくるお菓子目当てですから!」

あはは......。やはり子供はこうでないといけませんよね。ユリアン様、大好きですわ!

「でも、エレーネ様はライバルが多いのでこれから先が大変そう」

「ライバルですか?」

「はい。アイラ様は凄くおモテになるので。ほら、エレーネ様のお兄様もアイラ様に一目惚れしてましたでしょう?」

ぶはっ!クランベリージュースを思わず吐き出してしまいましたわ!

マリルがさっと来て私の口元をハンカチで拭きまた隅に戻って行きましたわ。ありがとうございます。

「絶対に違うと思います」

「え?でもアイラ様のお名前しかご記憶していなかたし」

あれはクソ野郎の頭がおかしいのです。

「アイラ様に触ろうとしてましたし」

確かに手は出してきていましたね。きっと手が勝手に上がってくる奇病なのですわ!

「次に会うお約束してませんでしたか?」

それはもうユリアン様の記憶違いですわ。

「あぁぁ......どちらにしても兄弟対決がとても楽しみです!多分違う殿方達も争いに入って来る事でしょうね!私はアイラ様のお側でゆっくり見させてもらいます!あ、恋愛のご相談も是非どうぞ!」

ゴシップ好きの世話焼きおばちゃんになる予定ですのね。ユリアン様は。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました

ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。 大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。 ー--- 全5章、最終話まで執筆済み。 第1章 6歳の聖女 第2章 8歳の大聖女 第3章 12歳の公爵令嬢 第4章 15歳の辺境聖女 第5章 17歳の愛し子 権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。 おまけの後日談投稿します(6/26)。 番外編投稿します(12/30-1/1)。 作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

前世で医学生だった私が、転生したら殺される直前でした。絶対に生きてみんなで幸せになります

mica
ファンタジー
ローヌ王国で、シャーロットは、幼馴染のアーサーと婚約間近で幸せな日々を送っていた。婚約式を行うために王都に向かう途中で、土砂崩れにあって、頭を強くぶつけてしまう。その時に、なんと、自分が転生しており、前世では、日本で医学生をしていたことを思い出す。そして、土砂崩れは、実は、事故ではなく、一家を皆殺しにしようとした叔父が仕組んだことであった。 殺されそうになるシャーロットは弟と河に飛び込む… 前世では、私は島の出身で泳ぎだって得意だった。絶対に生きて弟を守る! 弟ともに平民に身をやつし過ごすシャーロットは、前世の知識を使って周囲 から信頼を得ていく。一方、アーサーは、亡くなったシャーロットが忘れられないまま騎士として過ごして行く。 そんな二人が、ある日出会い…. 小説家になろう様にも投稿しております。アルファポリス様先行です。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

誰にも愛されずに死んだ侯爵令嬢は一度だけ時間を遡る

ファンタジー
癒しの能力を持つコンフォート侯爵家の娘であるシアは、何年経っても能力の発現がなかった。 能力が発現しないせいで辛い思いをして過ごしていたが、ある日突然、フレイアという女性とその娘であるソフィアが侯爵家へとやって来た。 しかも、ソフィアは侯爵家の直系にしか使えないはずの能力を突然発現させた。 ——それも、多くの使用人が見ている中で。 シアは侯爵家での肩身がますます狭くなっていった。 そして十八歳のある日、身に覚えのない罪で監獄に幽閉されてしまう。 父も、兄も、誰も会いに来てくれない。 生きる希望をなくしてしまったシアはフレイアから渡された毒を飲んで死んでしまう。 意識がなくなる前、会いたいと願った父と兄の姿が。 そして死んだはずなのに、十年前に時間が遡っていた。 一度目の人生も、二度目の人生も懸命に生きたシア。 自分の力を取り戻すため、家族に愛してもらうため、同じ過ちを繰り返さないようにまた"シアとして"生きていくと決意する。

処理中です...