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第一章

王城の怖いお話を聞きましたわ

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エレーネ様、ユリアン様、私でお茶会ですわ。ユリアン様が私に小さな声でおっしゃりました。

「あの時はありがとうございました。王城に来てソワソワしてしまって......。あの噂が怖くて......」

流石は6歳ですわ。もうきちんとお話が出来ますのね。
ん?あの噂とは何でございましょう?

「いえ。おやくにたててよかったです。あのうわさとは......?」

私も小さな声で話しましたがエレーネ様が隣にベッタリ張り付いていますので筒抜けですわ。

「あの噂とは。アレか?」

エレーネ様がニヤリとしながらユリアン様に言いましたわ。

「あっ、大変失礼を......。貴族の子供達の戯言でございますのでお気になさらずに......」

ユリアン様は下を向いてしまいました。

「なんのことですか?」

私も知りたいですわ。お2人は知っているのに仲間外れは嫌です。

「王城に幽霊が出ると噂されているのだ」

「ゆうれい」

「そうだ。怖いか?私が居るから大丈夫だ。アイラは守り抜くぞ」

あ、ユリアン様も守り抜いて下さいませね?

「こ、子供の幽霊が王城内を歩き回るとか、子供の叫び声が聞こえるとか......です」

ユリアン様が説明して下さいました。

「いつからなのですか?」

「うーん。いつからなのか。私が3歳になった頃にはもうその噂があったぞ?」

「えれーねさまはゆうれいをみたことがあるのですか?」

「ない。エレーネ様ではなくエレと呼んでくれ?よいな?エレだぞ?」

お姫様、いや、王子様を愛称でしかも呼び捨てなど出来ませんわ。

「みたことあるひとはじっさいにいるのでしょうか?」

とりあえず呼び名の事は無視で。

「私の従姉妹が王城で侍女をしていた事があってその時に見たと言ってました」

ふぉ!そんな近場にいらっしゃる!
会ってお話し聞いてみたいですわ。何だか興味が出てきちゃいました。

「ふん。幽霊などいるわけがない。私は王城に住んでるが見たことはないと言ったではないか。ほらチーズケーキだ。食べろ」

エレーネ様がチーズケーキをフォークに刺して私のお口にグイグイ押し付けてきましたわ。これまたお口を開けるタイミングを逃してしまいました。

「エレーネ様がいらっしゃる棟とは違う場所なのではないですか?王城はお広いので」

ユリアン様が首を傾げて言いました。
なるほどですわ!
そうですわ!きっと。

「そうで......ふぐっ......すね。モグモグ。きっと、ふがっ......モグモグ」

そうですね、きっとそうですわ。と、言いたかったのですがエレーネ様が次々にチーズケーキを私のお口に押し込んでくるものですから喋れなくなりましたわ。食べながらのお喋りはマナー違反ですもの。

「そうだ!良い事を思いついた。今度王城に泊まらぬか?その幽霊とやらを探してみようではないか!」

エレーネ様はそう言いながら次は私のお口にチョコレートケーキを押し付けてきましたわ。グイグイ。

「ひっ!そのような事をして呪われたらどうするのですか?」

ユリアン様が怯えています。
私もチョコレートケーキをグイグイしてくるエレーネ様に怯えています。

「ならばお前は来なくてよい。その方が好都合だ。私とアイラ2人でお泊まりする」

私がまたお口を開けるタイミングがつかめずにいるとエレーネ様はそのチョコレートケーキを愛おしそうに見つめ、ゆっくりとご自分のお口に入れ食べ始めました。で・す・か・ら!間接キスになってしまうのですよ?

食べたかったのなら私のお口にグイグイなさらないで直接お食べになればいいのに、不思議な事をするお方ですわ。

「エレーネ様、そのお泊まりの件は一度持ち帰らせて頂きます。ご相談の上後日ご連絡をさせて頂きます」

アクアがいつの間にか私の後ろに立ちエレーネ様に言ってくれましたわ。
使える悪魔ですわね。
エレーネ様の侍女も大きく頷いていますわ。

アクアはついでに私のお口についたチョコレートをハンカチで拭いてから後ろに下がりました。
使える悪魔ですわね。

「もし、おとまりするのならゆりあんさまもごいっしょがいいです」

もちろんお部屋はエレーネ様と違うでしょうけれど夜寝るまで2人きりはちょっと......。お兄様とは違うと信じたいですけれどエレーネ様も男の子ですし私に求婚されてますし。
アクアやマリルも一緒だと思うのでそれ程身の危険は感じませんが一応ですわ。

私は必殺アイラ天使の微笑み攻撃をユリアン様に仕掛けましたわ。
するとお顔を真っ赤にしたユリアン様が言いました。

「わ、わ、わ、分かりました。私もアイラ様がお泊まりするのであればご参加します」

やったー。

「邪魔をするつもりだな?」

隣から低く怖い声と舌打ちが聞こえてきましたわ。そしてまたチョコレートケーキを私のお口にグイグイしてきました。
何なのですか?
グイグイ。グイグイ。

私はお屋敷に帰り早速お父様とお母様に王城の噂について訊きましたわ。

「あらあら、一体何のお勉強をしてきたのかしらね?」

お母様が笑いながら私の頭を撫でてくれます。

「アイラは怖くないのかい?幽霊の話だろう?」

お父様が私を膝に乗せてくれます。

「あっ!僕知ってるよ?その噂!子供の幽霊!」

お兄様が私のワンピースのスカートに手を入れて太ももを触ろうとします。
アクアがその手を叩き落としましたわ。
その後お父様が目配せしましたの。するとアクアがお兄様を抱え少し離れた椅子に移動させています。

お父様も流石に気がついたのですね?
お兄様のコレが子供の無邪気な戯れでない事を。

「あの噂がたってからもう3年ぐらいになるかしら?最初は子供の叫び声が聞こえたとか聞こえないとかだったと思うわ」

マリルと数名のメイドがお茶を淹れてくれましたわ。
私はホットミルクです。まだお子様なのでコーヒー、紅茶は駄目ですの。
お兄様は紅茶デビューしましたわ。
羨ましいです。

「そうだったね。そのうち子供が走り回る姿を見たとか血だらけだったとかになったんだよ」

お父様が私を見て話を続けます。

「それを王城の侍女達が怖がり始めて噂が広まり貴族の中では王城には幽霊が出るとお茶会などで話されるようになってね」

「おとうさま?そのゆうれいがもくげきされたのはおうじょうのどのあたりですか?」

「ん?アイラは探偵みたいだな!真実を見つけてみるかい?」

お父様が楽しそうに微笑みます。
なんてハンサム!お母様はこんな美丈夫と結婚出来て幸せ者ですわね。ふふふ。

「あら、あなた?止めてくださいね。アイラにそんな危険な事をさせないで」

「ただの噂だよ?大丈夫だ」

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